2019年度東京都立大学ベスト・ティーチング・アワード表彰式を、2020年9月30日に開催しました。本学では、学生が本物の“考える力”を身に付けられる教育環境を確立するために、アクティブ・ラーニングや学修成果の可視化などの教育改革に全学を挙げて取り組んでいます。
2019年に、本学の教育改善をさらに推進するため、教育の質の改善に貢献が認められる優れた取組に対して、「ベスト・ ティーチング・アワード」を授与し、当該取組を実施した教員を優秀教員として表彰する制度を新設しました。この度、本学初となるベスト・ティーチング・アワード3件及び特別賞1件が選出され、当該取組を実施した教員に対し、上野学長から賞状と盾が授与されました。
2019年度東京都立大学ベスト・ティーチング・アワード 受賞取組(所属順)
- 受賞取組:学生自身の視点を生かし、人類学的な実践を作品化する―インタビュー・定点観察・映像撮影-
- 代 表 者:田沼幸子 准教授 (人文社会学部人間社会学科)
- 共同実施者:深山直子 准教授 (人文社会学部人間社会学科)
- 受賞理由:フィールドワークを通じた動画の作品化を、学生に対し学術的知識を与えたうえで、学生の能動性を引き出す形で効果的に実践している点。更に、人文学報に掲載する等し、事例の成果を広く展開している点も評価できる。
- 受賞者(代表者)からのコメント
-受賞・評価を受けた感想
2016年から始めてきた取り組みが、履修生以外の方々にも評価されたということで、とても嬉しいです。派手さはないですが、学生たちの自主性を生かした点が評価していただけたのは、本学ならではと嬉しく思いました。
-この取組みを実施するにあたり、特に苦労した点
機材の準備、課題の教授方法など、履修生が増えるにつれ試行錯誤しましたが、教室の先生方、事務、TAのみなさんの協力があり、円滑な運営につながりました。シャイな学生達が忌憚なく発言できるよう、ブレインストーミングの時などは、教員二人がDJのように話し、リラックスさせ盛り上げていきました。
-この取組みに対する想い
学生は、読む、聞く、書く、撮る、編集する、という様々な実践的課題を一年間かけて、毎週のようにこなすことを予め知って履修するため、モチベーションが高く、指導の甲斐がありました。これまでの授業の感想で挙がったのは、朝早くても楽しみだったこと、自分がやりたいことや表現したいことができて嬉しかったこと、他の人が何を見たり考えたりしているのかを知ることができて面白かった、ということです。学生同士の交流と気づきの場ともなることを心がけていました。
*****
- 受賞取組:kibacoを利用した能動的学修支援システムの構築
- 代 表 者:山登正文 准教授 (都市環境学部環境応用化学科)
- 共同実施者:柳下崇 准教授/久保由治 教授/梶原浩一 教授(都市環境学部環境応用化学科)、他環境応用化学科教員
- 受賞理由:kibacoを用いたWEB予習テストやWEB理解度確認テストの導入により授業外学修時間の増加が認められるとともに、本取組みが環境応用化学科の大半の必修講義科目で実施されている点。今後も、システムの更新等を通じ、「単位の実質化」に向けた取組の継続が期待される。
- 受賞者(代表者)からのコメント
-受賞・評価を受けた感想
栄えある賞をありがとうございます。学科全体として取り組んでいたことが評価されたのだと思っています。実施にあたりご協力いただいた多くの先生方に感謝しております。
-この取組みを実施するにあたり、特に苦労した点
多くの授業でWEBテストを実施できるよう、環境を整備することです。数式や化学式を含む問題や数値の問題など、化学系で必要とされるいくつかの形式での問題を作成し、その作成マニュアルを公開することで、WEBテスト導入のハードルを下げるよう工夫しました。また、画像データの保存先も兼ねた年度更新されない学科共通コースをkibaco上に新たに作成することで、更新作業の手間を大幅に改善できました。これらの結果、WEBテストは学科の教育資産として更新され続けています。
-この取組みに対する想い
授業を理解できたという実感が学修のモチベーションを高め、能動的学修習慣の獲得につながると思っています。予習、講義・演習、復習の学修サイクルを如何にまわすかを考えたとき、すべての過程で、学修に対してタイムリーにフィードバックを行うことで、様々な気づきを促すことができるのだと思います。今回用いたkibacoのようなICTツールの利用は授業外学修への素早いフィードバックに効果的です。本取組みにより学生からは授業が分かりやすくなったとの反応を頂きました。
*****
- 受賞取組:動画作成課題による Active Learning教育の推進―高次脳機能障害に対する支援役割の理解を目指した新たな取り組み-
- 代 表 者:宮本礼子 准教授 (健康福祉学部作業療法学科)
- 共同実施者:大嶋伸雄 教授 (健康福祉学部作業療法学科)
- 受賞理由:高次脳機能障害の症状や支援の実践例を一般の人に紹介する動画を、学生にシナリオ作成から撮影・編集等までを行わせ、発表させることにより、学生の能動性を引き出すとともに、知識・技術の定着を進め、授業外学修時間の増加に繋げている点。
- 受賞者(代表者)からのコメント
-受賞・評価を受けた感想
この度はこのような栄誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。臨床でもその支援に悩む高次脳機能障害について、学生が楽しみながら主体的に学べる方法を長年模索してきた中でたどり着いたひとつの形ですので、このように評価していただけたことを本当にうれしく思います。
-この取組みを実施するにあたり、特に苦労した点
初年度は、学生がシナリオ作成・動画撮影・編集という課題にどのくらい時間を要するかを把握することに、苦労しました。課題の難易度に関しても、クライエントの設定を教員が考えすぎれば自由度が低下しますし、設定がなさ過ぎても難しくなります。2年目以降は前年度のFDアンケートの内容や学生からの意見を参考に、これらの調整を重ねました。
-この取組みに対する想い
近年は医療機関のみならず一般企業へ就職する学生も増加していますので、専門知識の修得だけではなく、それぞれの見据える将来に役立つ(と学生が思える)体験をしてほしい、という想いがありました。そのため、動画作成だけでなくコンセプトシートの作成も学生に依頼しました。またコンペという形で作品を評価しあうという方法を採用しました。課題自体は臨床に直結するテーマでありながら、「だれに何を伝えるか」「コンセプトが人に伝わっているか」「そのアイデアを人はどう評価するか」という視点を、学生自身が意識するきっかけになっていたらうれしいです。
2019年度東京都立大学ベスト・ティーチング・アワード 特別賞 受賞取組
- 受賞取組:生命科学科英語課程-卒業に必要な全ての単位が英語で取得できるプログラムの確立-
- 代 表 者:安藤香奈絵 准教授 (理学部生命科学科)
- 受賞理由:授業を英語と日本語で開講し、英語による学習機会を与えることは学生の英語力及び国際競争力を伸ばす効果が認められる。本学の代表的な教育の取組であることから、これまでの学科全体の取組に対し、特別に表彰する。
- 受賞者(代表者)からのコメント
-受賞・評価を受けた感想
生命科学科の長年にわたる努力が認められ、とても嬉しく思います。上野学長を始め、多くの先生方にご理解とご指導をいただきました。連携してくださった他学部の先生方や教務課・国際課などの方々、海外協定校の先生方、英語課程事務局のスタッフの方々、そしてこの挑戦的な取り組みの取りまとめという大役を私に任せてくださった生命科学科の皆様に感謝いたします。
-この取組みに対する想い
グローバル化した現代では、英語でのコミュニケーションがビジネスにも研究にも必須です。高度専門教育を英語で受けることで、国内外を問わず専門知識を生かして学び、働くための力をつけることができます。
その需要に応え、英語での学部教育プログラムは、近年スーパーグローバル大学など複数の大学で見られるようになってきました。
一方、本学の生命科学科英語課程は他大学と大きく異なる以下の特色を持っています。
1.既存の生命科学科の教育課程の授業を英語化する。日本語でも従来通り開講する。
2.英語だけでも、英語と日本語の授業を混ぜて履修することも可能。
3.英語課程のための入試は行わず、入学後に学生の希望をもとに履修者を決定し、中途での変更も可能。
1によって、歴史ある東京都立大学理学部生命科学科がこれまでに蓄積してきたカリキュラムの特色や専門性をそのまま生かしています。2と3によって、学生が自身の英語スキルに合わせて柔軟に英語授業を履修科目に取り入れることができます。
この柔軟性により、生命科学科英語課程の授業は、英語の得意でない日本人学生から日本語の話せない留学生まで、様々なバックグラウンドの学生さんが一緒に生命科学を学ぶ、多様で刺激に満ちたクラスになっています。その良さを引き出すために、学生さんたちと先生方にどのようなサポートが必要か、また、このプログラムの特色を維持しつつ国際的に競争できる質の高いものにするにはどうしたらよいかについて、いつも考えています。