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人間が本来持っていた感覚を呼び起こす。東京都立大学のシンボル「光の塔」に込められた3つの想い3つの想い

人生の貴重な青年期を過ごす学生の人格形成にとって、自然に対する感性を育むことは重要なこと。東京都立大学 南大沢キャンパスは、多摩丘陵の上に連なる建築群を丘の緑と調和させ、文化の香り高い統一的景観をつくることを目指して設計されました。
その中で、「人間も自然の一部であることを自覚するための空間」として建てられたのが、南門に接する高さ40mの「光の塔」です。大理石の床には、悠久の歴史を伝えるアンモナイトが埋まっています。光の塔を訪れれば、誰もが宇宙、自然、時間といった絶対的な概念に想いを馳せることとなるでしょう。

『時の標準が地球の運動から、原子時計になり、地球の動きの誤差を検出できるまでに技術は進歩した。その時代にあえて、ここに日時計と振子時計を設けた。日時計の影に季節の巡ることを感じ、人の住む大地の動き、宇宙の神秘を思い起こし、時を刻む振子の音に大地の力と恵みに思いを至らせてほしい。』
~「光の塔 時計群について」銘板より抜粋~

ここでは、「光の塔」に込められた「光」をテーマとする3つの想い(要素)を紹介します。

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光の図形

塔の南角に穿たれた丸窓。これはただの飾りではありません。ここから差し込む日の光は、塔内部の床に落ちます。その位置は時と共に徐々に変化し、季節の移ろいを示します。
塔内の床面には、真鍮の円盤がところどころに埋め込まれています。示しているのは、月毎の日本標準時間正午に日が差し込む位置。それらを結ぶと、「アナレンマ」が浮かび上がるのです。
アナレンマとは、均時差によって1年のうちに太陽の位置が8の字型を描いて運動すること。「光の塔」では、天体の動きと時間の流れを実感できるのです。

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陽刻

「光の塔」は、“南大沢の”自然や時間が体感できる場所です。
塔外壁の東南と南西面には、「陽刻」と名付けられた日時計が掲げられています。太陽の絵に設置された指時針の影により、東南側が午前、南西側が午後の時刻を示します。ここにもアナレンマが表されており、影の長さによって夏至や冬至、春分や秋分の季節がわかるようになっているのです。
時刻は日本標準時間と比べると15〜20分ほど進んだ時間を示しています。これは、この日時計が「南大沢で太陽が真南に来た時」を正午としているから。「標準時間が当たり前」という既成概念を崩し、南大沢の自然のリズム感を感じさせてくれるのが、この「陽刻」なのです。

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屋根の反射ガラス

南大沢キャンパスはもちろん、街全体の象徴ともいえる「光の塔」。その独特の存在感の理由は何なのでしょうか。
それは、遠方から見た際に際立つ「屋根の存在感」です。大きさや形状はもちろんのこと、昼夜で違う表情を見せる屋根が、行き交う人々の目を惹きつけるのです。
塔の屋根には反射ガラスが使用され、昼間は太陽光を眩しく反射します。そして夜は、内部照明によって淡く荘厳な光を放ちます。そのことが、「都立大の位置」を示すランドマークとして機能しているのです。
なお、現在は節電のため消灯していますが、2024年2月10日~2025年3月10日まで「光の塔の日」キャンペーンを開催。毎月10日に光の塔をライトアップします。
10日の夜は南大沢で、光の塔を見上げてみてください。
~東京都公立大学法人における省エネルギーの推進等について~

振り子スケルトン大時計

一般的に、塔のような建造物に据え付けられる時計は「文字盤を大きく見せ、広範囲に時刻を知らせること」がその存在意義であるといえます。しかし、「光の塔」において時間は「知るもの」ではなく「感じるもの」。塔の内壁に据えられた振り子時計がそのことを象徴しています。
この時計の動力となるのは「引力」です。地球に引かれる重りで駆動し、振り子が一定の時を刻みます。あえて内部の構造が見えるスケルトンデザインに仕上げることで工芸品としての美しさを見せると共に、メカニズムを可視化。現代では忘れられた「時」を思い起こさせる時計です。
現在、大時計はその時を止め、学舎に集う学生たちを見守っています。

#わたしが見た光の塔

季節や時刻によって異なる表情を見せる「光の塔」。見る人の心にも、それぞれ違った写り方をするはずです。多様な学生や教員、職員が集う都立大で、学内関係者から「光の塔」の写真を募集。都立大関係者による「#わたしが見た光の塔」ギャラリーをお楽しみください。