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2023年度「東京都立大学ベスト・ティーチング・アワード」3件を表彰

本学では、教育の質の改善に貢献が認められる優れた取組に対して、「ベスト・ ティーチング・アワード」を授与し、当該取組を実施した教員を優秀教員として表彰する制度があります。
この度、第5回目となる2023年度東京都立大学ベスト・ティーチング・アワードとして3件が選出され、表彰式を2024年10月9日に開催しました。表彰式では大橋学長から当該取組を実施した代表者に対して賞状と盾が授与されました。
なお、表彰取組についての成果発表の様子を、都立大所属教員・学生を対象として、kibacoの「その他」のお知らせに掲示いたします(2024年度終了時まで)。取組の詳細に関心がある方はぜひご視聴ください。

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2023年度東京都立大学ベスト・ティーチング・アワード受賞取組

  • 受 賞 取 組 : L5G環境を利用した車いすARハッカソン研究プロジェクト演習連携授業
  • 代 表 者:串山 久美子 教授(システムデザイン学部 インダストリアルアート学科)
  • 共同実施者: 阪口 紗季 助教(システムデザイン学部 インダストリアルアート学科)
                          柴﨑 美奈 助教(システムデザイン学部 インダストリアルアート学科)
                          馬場 哲晃 教授(システムデザイン学部 インダストリアルアート学科)
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-取組みの内容-

現在の大学教育では、社会とのつながりを視野に入れた社会実装やイノベーション創発が一層求められていることから、本学のローカル5G環境を活用して行われている「ARゲームで楽しく単独移動を支援するAI車椅子システムの社会実装」研究と、システムデザイン研究科の「研究プロジェクト演習5」を連携させた講座を企画し、ARハッカソンのワークショップとして3年間にわたり開催した。学内外から毎年約50名が参加し、3-5名のチームで分け、テーマに沿って制作物の作成を行った。学生の成果はWebで公開し、東京都の広報誌シントセイでも紹介された。

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  • 受 賞 取 組 : STEM TAセンターを核としたアクティブラーニング環境の構築
  • 代 表 者:小口 俊樹 教授(システムデザイン学部 機械システム工学科)
  • 共同実施者:小原 弘道 准教授(システムデザイン学部 機械システム工学科)
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-取組みの内容-

学生が気軽に講義内容をはじめ、STEM (Science, Technology, Engineering, Mathematics)に関して質問や相談ができる場として、そして大学院生を含めた学生個人の STEM に関する能力を引き上げる異分野協働の場としてSTEM TAセンターを設置し、アクティブラーニング環境の構築と教育サポート体制の強化を図った取組である。主に、①STEM 相談室の運営、②大学院生のリカレント教育の強化、③アクティブラーニング推進、を行った。特に、コロナ禍において, アバターシステムを用いた学科コモンルームを設置し、その中で相談室を開設する等、オンラインでの運営体制の充実を図った。

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-取組みの内容-

情報リテラシー実践Ⅰは、2022年度より、データサイエンスを志向するカリキュラムに改編された。情報倫理を含む情報活用能力に加えて、表計算ソフトを用いた統計的なデータ分析とプログラミングに関する、基本的な知識・スキルの習得を目的に掲げた。学生中心の授業実践を目指し、講義とハンズオン(学生自身でコンピュータを操作する実習)の組合せ、オンライン教材(コースウェア)の作成およびkibaco上への設置、教員と学生チューターの協調による学生の個別サポートを中心に、学習環境(空間・活動・人工物・共同体)の整備を行った。

 

代表者コメント(システムデザイン学部 インダストリアルアート学科 串山教授)
-受賞した感想-

本大学の先端のIT環境を活かしたARと車椅子プロジェクト研究と連携した実践的な教育を楽しくチャレンジすることができました。これは特に健康福祉学部、システムデザイン学部、外部企業の分野融合の協力なしには実現できませんでした。3年間の取り組みに参加協力して頂いた先生・学生の皆さんに感謝申し上げます。

-取組みを始めたきっかけ-

大学教育・研究は、社会とのつながりを視野に入れた社会実装、イノベーション創発へ多様性を求められています。そこで、本学のローカル5G環境を使用した社会実装研究と連携し多様性な視点を通じ、アイティアと技術、社会へつながる大学院講座としてプロジェクト型授業を充実させ、実践的な人材育成を図ることを目的にしました。

-取組みを実施するにあたり、特に苦労した点、心掛けた点-

異なる分野やスキルを持った背景の学生のグループを作るにあたり、事前にアンケートをし、特性が偏らない工夫をしました。期間中は情報交換や質問など急変にも対応できるようオンライン情報環境を充実し、最終発表会ではデモ動画の作成や当事者や外部専門家も交えた体験会で実践的な成果が目に見えるよう心掛けました。

-他の授業でも取り入れられそうな点、今後の展開についてやってみたいこと-

本学の先端のIT環境や施設や人材を十分に活かした研究と連携した教育や、学部を超えたグループワークの協働作業の体験は学生も教員も新鮮ではないかと思います。今後は、専門分野、年齢、当事者の垣根を超えた多様な交流から生まれる教育や研究、社会実装への展開ができればと思います。多様な社会課題へ向けて意識を促進させる本校の大学教育に期待が膨らみました。

 

代表者コメント(システムデザイン学部 機械システム工学科 小口教授)
-受賞した感想-

実施初年度からコロナ感染拡大による開講延期など、想定外の事態が起こりましたが、実施に参加いただいた教員の皆さんやTAの学生の皆さんのアイデアや協力で、教育支援の様々な試行の場ともなりました。3年間にわたり実施された本取組に参加、協力いただいた皆さんに感謝いたします。

-取組みを始めたきっかけ-

機械システム工学科・学域では、分離キャンパスによる協働の困難や、大学院での前提基礎知識の差異、学修支援環境の不備のほか、博士後期課程の学生の教育補助経験や能動的学習の導入支援体制の不足といった課題があり、それらを解決するための仕組みとして、本事業に取り組みました。

-取組みを実施するにあたり、特に苦労した点、心掛けた点-

取組開始時から、コロナ感染拡大による開講延期やオンライン講義への変更などがあり、相談室の運営方法自体の検討や、TAの確保にも苦労しましたが、教員やTA・STAの学生との議論や、数理科学専攻および数学相談室との連携を通じて、状況に応じた柔軟な運営を心がけました。

-他の授業でも取り入れられそうな点、今後の展開についてやってみたいこと-

昨年度に研究室の日野キャンパス集約がなされましたが、その一方で南大沢キャンパスでの学部1、2年の専門基礎教育の学修支援体制の構築が必要です。本取組で得た相談室運営での知見を、キャンパス横断での学修支援や他学部との連携による学修支援へと発展、活用させていきたいと思います。

 

代表者コメント(大学教育センター 永井教授)
-受賞した感想-

この度の受賞に際し、審査に関わられた皆様に厚くお礼申し上げます。多くの教職員と学生チューターが一致協力したことの賜物と、心から感謝しております。文理を問わず全ての学生に、これからの社会を生き抜く素養として、初級レベルのデータサイエンスを習得させようという本取組が評価されたことを、大変うれしく思います。

-取組みを始めたきっかけ-

2019年頃より、数理・データサイエンス・AIにかかわるリテラシーレベルの教育が重要視されるようになりました。本学でも同時期に、全学共通科目としてデータサイエンスの基礎を扱う必要性が議論されました。既存の情報リテラシー実践Ⅰを生かしつつ、履修生の現状に合う形でどのような科目を展開するのか、というのが大きな課題でした。

-取組みを実施するにあたり、特に苦労した点、心掛けた点-

AI利活用を含む情報倫理、表計算ソフトを用いたデータ分析、VBAプログラミングを主軸にする、と決めるまでが苦労しました。年度当初の調査を通じて、情報リテラシーに関するレディネス(大学入学以前の知識・スキルの状態)を把握した上で、オンライン教材(コースウェア)やオンデマンド教材(動画・スライド資料)の内容、学生チューターによるサポートのあり方などを検討しています。

-他の授業でも取り入れられそうな点、今後の展開についてやってみたいこと-

ICT(情報通信技術)が私たちの生活に与える影響は、時々刻々と変わっていきます。その変化を追いかけながら、普遍的に習得すべき情報リテラシーとは何かを熟考し、授業に反映し続けたいと考えています。レポート作成やプレゼンテーションを行う授業と連携し、AI利活用や著作権について考える機会もつくってみたいと思います。

 

表彰式での大橋学長のコメント

学問というのは、高校までだと受け身な暗記といった部分が大きいが、本来自分でやることであり、特に学生としては、しっかり取組むとそれに応じた結果が得られる、だからやっている方も楽しくて達成感が感じられる、そういうところを教えるのがやはり大学の学問教育ではないかと思う。今回受賞された取組もそのような面で非常に優れた取組だと評価された。
串山先生が代表の「L5G環境を利用した車いすARハッカソン研究プロジェクト演習連携授業」について、私も本取組の発表会を見学した。学外の専門家からアドバイスをもらい、発表会では学生が自分でアプリケーションを開発して実演しており、学生は楽しみながら自分自身で成果がわかるようになっており、非常に良い取組だと評価できる。
小口先生が代表の「STEM TAセンターを核としたアクティブラーニング環境の構築」について、TAセンターを中心にしたオンラインの相談室で、学生主体で学びの空間を作り、TAのサポートによってアクティブラーニングにつなげていくという、教える側と学ぶ側、両方とも効果が出る試みということで評価できる。
永井先生が代表の「データサイエンスを志向する情報リテラシー実践Ⅰの展開」について、カリキュラムの再構築、オンラインやオンデマンドの教材の作成、そしてチューターも入って学生同士で学び合えるような環境作りによって、学生の視点からも満足度の高い体制を整備していただいた点が評価された。
大学の学びというのは、自ら進んで参加するところにその本質があるのだということを教えてくれた取組が今回受賞されたと思っている。学生を無理やりではなく、自然な形でやる気にさせる、そういう授業を実践していただいた。
本学の教員の方々にも、今回の受賞取組がお手本になってほしいと思っている。