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2022年度「東京都立大学ベスト・ティーチング・アワード」3件を表彰

 本学では、教育の質の改善に貢献が認められる優れた取組に対して、「ベスト・ ティーチング・アワード」を授与し、当該取組を実施した教員を優秀教員として表彰する制度があります。
 この度、第4回目となる2022年度東京都立大学ベスト・ティーチング・アワードとして3件が選出され、表彰式を2023年10月17日に開催しました。表彰式では大橋学長から当該取組を実施した代表者に対して賞状と盾が授与されました。

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2022年度東京都立大学ベスト・ティーチング・アワード受賞取組(所属順)

  • 受賞取組: 異文化理解のための動画教材の製作・活用・保存
  • 代 表 者:西山 雄二 教授(人文社会学部 人文学科)
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-取組みの内容-

 教養科目「フランス語圏の文化」、専門科目「フランス語学演習」「フランス語圏文化論」において、それぞれの科目に適した独自の動画資料(計20本)を製作し、受講生の予習・復習のために活用することで、効率的で能動的な学びを促進した。 

 製作した動画は、東京都立大学に留学中のフランス人留学生へのインタビュー、受講生によるフランス語での歌唱(「紅蓮華」「千本桜」「夜に駆ける」※)、フランス語の哲学・文学・時事テクストの読解などで、授業の補助教材として中期的に活用を続ける予定である。また、これらの動画作品はすべて一般公開されており、国内外を問わず広く視聴されている。

※これらの動画は「都立大チャンネル」にて公開中。

https://www.youtube.com/watch?v=Zr6y6J9aP3g

https://www.youtube.com/watch?v=WAGTm5KyKqU

https://www.youtube.com/watch?v=V4qILo6y3NU

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  • 受賞取組: 分野横断型教育に向けたTA の育成と展開
  • 代 表 者:佐原 宏典 教授(システムデザイン学部航空宇宙システム工学科)
  • 共同実施者:田中 聡一郎 准教授(システムデザイン学部インダストリアルアート学科) 
          大島 草太 助教(システムデザイン学部航空宇宙システム工学科)
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-取組みの内容-

 システムデザイン学部では、学科間の「分野横断教育」を推進しているものの、他学科の学生への効果測定、演習科目で必要なTAのコミュニケーション力向上を含めた育成が課題となっていた。これらの解決のため、異学科混成学生を対象としたグループワークを行う特別講義「エンジニアのためのデザイン思考」を開講し、グループワークの取りまとめを行う過程でのTAスキルの向上、TA及び受講生に向けた教育効果を測定するルーブリックの策定等を実施した。

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-取組みの内容-

 本取組では、臨床実習前の学生が習得すべき医療技術スキルを評価するOSCE(臨床実習能力試験)によって得られる実技評価データから、①明確な問題点の可視化②学生が自ら学ぶアクティブ・ラーニングコンテンツの開発③STA、TAを活用した学びのサイクル環境の構築に取り組んだ。①では、オンラインOSCE環境及びOSCE講評時の内容をテキストデータとしてフィードバックするシステムの構築、②ではkibacoを活用した危険予知トレーニングCBTの開設、③では有資格者TAが画像教材作成に参加し、危険予知への「気づき」の違いを学ぶ機会の創出などを行った。

※CBT… (Computer Based Testing:臨床実習に必要な知識の客観的試験)

 

代表者コメント(人文社会学部 人文学科 西山教授)
-受賞した感想-

 今回の取組は動画教材を製作し活用することで魅力ある授業を創出する試みで、従来の人文学的手法とは異なるこのような授業実践を評価していただいたことを大変嬉しく思います。積極的に授業に参加してくれた学生のみなさん、日本人学生の学習を後押ししてくれたフランス人留学生、運営を担ってくれたTAの方々に感謝申し上げます。

-取組みを始めたきっかけ-

 英語教育が推奨される今日、フランスの言語や文化に関する教育はメジャーなものではありません。ただ、フランスに関心をもち、学習意欲をもっている学生は一定数います。そうした方々がフランスの言語や文化を気軽に学べるようにするために動画教材を製作・活用することにしました。

-取組みを実施するにあたり、特に苦労した点、心掛けた点-

 「フランス語学演習」ではフランス語での歌唱動画を3本製作しましたが、限られた時間での準備・撮影・編集には大変苦労しました。フランス語未経験者が多数参加していたのですが、みなさん見事にフランス語で歌い切りました。心掛けた点は、若い学生が見やすいように、動画の長さやリズム、説明文などに工夫して編集したことです。

-他の授業でも取り入れられそうな点、今後の展開についてやってみたいこと-

 今回制作した17本の動画は、授業が終了した後もアーカイブとして活用することができます。公開されているアーカイブは一般の人々にも有益ですので、学内外に広く学習教材を発信していきます。このアーカイブを基盤として、フランスの言語と文化の学習に関する動画教材を今後も積極的に製作します。

 

代表者コメント(システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科 佐原教授)
-受賞した感想-

 本取組では当学部の構成を活かした分野横断型教育に資する実用的な教育実験を十分に行うことができました。私たち3名が代表してこの場におりますが、これはシステムデザイン学部/研究科の教員全員によるものですので、高い評価を賜りましたことを当学部全体で拝受致しまして、今後の教育に有効活用して参りたい所存です。

-取組みを始めたきっかけ-

 当学部ではシステムデザイン能力向上のための「分野横断型教育」を推進していますが、その効果測定と、TA/STA(以下、TAs)のコミュニケーション力向上を含めた育成及び全ての学生の動機付け強化が強く求められていました。そこで前期に特別講義にてTAsの鍛錬を行い、後期科目でその実践を行いました。

-取組みを実施するにあたり、特に苦労した点、心掛けた点-

 特別講義では、TAsが教員とともに教育支援を行う「分散型リーダーシップ」と、教員・TAs・受講生のそれぞれの間のコミュニケーション増大を担う「心理的安全性の確保」の二つを培える場と雰囲気の醸成に心掛けました。一方で、特別講義に参加していない通常科目のTAと成果を共有することについて課題を残しました。

-他の授業でも取り入れられそうな点、今後の展開についてやってみたいこと-

 特別講義ではTAsと受講生の全員が非常に高い効果と満足を得られたと事後アンケートで回答しました。TAsを雑用係に留めない「分散型リーダーシップ」と、教員からTAsへの、また教員・TAsから受講生へのトップダウンに留めない相互の「心理的安全性の確保」を意識することを通常科目へも広げたいと思います。

 

代表者コメント(健康福祉学部 放射線学科 関根准教授)
-受賞した感想-

 健康福祉学部4学科それぞれで行っていたOSCE(Objective Structured Clinical Examination:臨床実習能力試験)について学部共用の電子評価システムを立ち上げた 2017年度からの3年間、さらに学生へのフィードバックを検討した2000年度から3年間の取り組みに参加協力して頂いた先生方・学生の皆さんに感謝申し上げます。

-取組みを始めたきっかけ-

 2017年度から3年間で構築した評価システムによって、OSCEにおける医療技術スキルを数値化はできたものの、「フィードバックにおいて、どう指導すれば、より効果的に臨床実習へ向かわせることができるか」との課題が各学科の共同実施者から寄せられたことがきっかけとなりました。

-取組みを実施するにあたり、特に苦労した点、心掛けた点-

 模擬患者や学外評価者などが必要なOSCEにおいて、コロナ禍は感染拡大予防対策に苦労しました。一度に多くの医療従事者TA(Teaching Assistant)の参加協力が厳しく、限られた人数での有効なTA活用やオンラインOSCE実施・CBT(Computer Based Testing:臨床実習に必要な知識の客観的試験)コンテンツ開発では、効率的かつ即時的なフィードバックを心掛けました。

-他の授業でも取り入れられそうな点、今後の展開についてやってみたいこと-

 「kibaco」を活用した会話内容のテキストデータフィードバックシステムやTAと学部生が相互に学び合える危険予知トレーニングCBTコンテンツ作成は、他の実技実習でも取り入れることが可能と考えます。今後はXR(Extended Reality)を利用した教材作成へ展開したいと考えています。

 

表彰式での大橋学長のコメント

 東京都立大学ベスト・ティーチング・アワードは今回で4回目となる。とにかく皆様おめでとうございます。
 色々な点で、大学の授業というものは、学生がしっかり取組むと楽しくて充実する、ということを皆さんが教えてくれている。1年生を見ていると、高校までの経験で、受験もあるため、物理や数学でさえ暗記で取組もうとする学生もいる。
 今回受賞された西山先生の授業では、日本人とフランスの学生が一緒に触れあって動画を作ったり、歌とダンスを一緒に体験してその違う文化を理解したりする、といった取組であり、この授業は学生にとって忘れられない体験となっただろうと思う。
 また、佐原先生のグループでは、分野横断の特別講義で、様々な課題に対して、異なる学科の学生が一緒になって議論し、さらにTAも育成するということで、学生が非常に積極的に参加し、結果的に充実感を得る、まさに模範的な取組である。
 関根先生のグループでは、臨床実習前の実技評価で、学生側が受けた評価を可視化し、アクティブラーニングのコンテンツを開発し、さらにTA、STAも活用するということで実習生に一番効果のある取組の開発を進めていただいた。
 いずれの取組も、受身や暗記ではなく、自分から進んで取組むことが本質的だということを教えてくれている。学生の心に火をつける、あるいは学生を自然にやる気にさせるような授業であった。知識伝授も必要だが、将来研究につながるような、主体的な取組が本当の学問であることを示してくれた。
 全て素晴らしい取組であり、このような教えを他の教員の皆様にもぜひ可能な範囲で広めていってほしい。