本学では、教育の質の改善に貢献が認められる優れた取組に対して、「ベスト・ ティーチング・アワード」を授与し、当該取組を実施した教員を優秀教員として表彰する制度があります。
この度、第3回目となる2021年度東京都立大学ベスト・ティーチング・アワードとして2件が選出され、表彰式を2022年10月20日に開催しました。表彰式では大橋学長から当該取組を実施した代表者に対して賞状と盾が授与されました。
2021年度東京都立大学ベスト・ティーチング・アワード受賞取組(所属順)
- 受賞取組: 地域企業・団体と連携した課題解決型学習PBLの実施
- 代 表 者:岡村 祐 准教授(都市環境学部 観光科学科)
- 共同実施者:川原 晋 教授(都市環境学部 観光科学科)、
大平 悠季 助教(都市環境学部 観光科学科)
清水 哲夫 教授(都市環境学部 観光科学科)
-取組みの内容-
「観光科学プロジェクト演習Ⅱ」は地域企業や団体と連携しながら行う課題解決型学習※科目である。本取組では、学生が地域企業や自治体が抱える課題を解決するため、フィールドワークを行い、計画を立案し、最終発表時には企業の方から計画案についてコメントをもらうことで、社会的ニーズを深く考えさせ、地域の資源や人、事業者等多方面への関心を喚起した。また、冊子として報告書を作成、学内向けセミナー発表、学会やコンテストへの参加等、学内外への活動も行った。
※課題解決型学習・・学生が自ら問題を発見し、解決する能力を養うことを目的とした学習方法。
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- 受賞取組: システム設計に関する学習機会の提供の試み~ダブルループ学習の考え方に基づく基盤科目での課題発展
- 代 表 者:金崎 雅博 教授(システムデザイン学部航空宇宙システム工学科)
- 共同実施者:佐原 宏典 教授(システムデザイン学部航空宇宙システム工学科)
古本 政博 助教(システムデザイン学部航空宇宙システム工学科)
-取組みの内容-
基盤科目「エアフレームデザイン概論」において、より発展的な課題を望む学生がいたことや、要素技術全体を俯瞰して、大規模システムを具現化するシステムインテグレーターのための教育プログラムが必要であることを踏まえ、当該科目の履修学生の中から希望を募り、大気のある惑星・衛星圏での航空探査をテーマにミッションステートメント※1や要求分析を経てシステム要求※2を文書化する実習や教育用小型ドローンによるロボットプログラミング演習、グループワークとしてのブレインストーミングとオリジナル機の製作など、より高度な教育プログラムの場を提供した。このプログラムにより、システムインテグレーターとして必要な能力を身につけさせることができた。加えて、受講後の学生がさらなる学習のために自主的にサークルを設立するなど、学生の学修意欲を引き出し、主体的学習を後押しした。
※1 ミッションステートメント・・探査の内容やその目的の設定
※2 システム要求・・ミッションステートメント実現のために必要なシステム
代表者コメント(都市環境学部観光科学科 岡村准教授)
-受賞した感想-
当授業は、都市環境学部観光科学科の前身「自然・文化ツーリズムコース」創設以来、学科カリキュラムの重要な柱として他の授業とも連携しながら、多くの教員・学生の叡智を結集してきました。他大学へ異動されましたが、ともに創り上げてきた旧助教の片桐由希子先生、野田満先生、そして歴代のTAの皆さんには、この場をお借りして感謝申し上げます。
-取組みを始めたきっかけ-
観光まちづくり分野の演習として、地域のプランニングやデザインと、観光コンテンツの情報発信やマーケティングの両面を実践的に学ぶことのできる対象地として、南大沢の町を選びました。ニュータウンである南大沢は、駅前に商業が集積し、町全体に公園や緑道等の良好な都市インフラが整備され、これらを魅力資源として活用してみようと考えました。
-取組みを実施するにあたり、特に苦労した点、心掛けた点-
授業をより実践的なものとするため、地域住民、行政、商業者、団地や公園の管理者、そして大学といった様々な企業・団体と連携し、調査から計画提案の各段階で、学生たちが地域と接点を持てるようにしました。これまでに、授業の成果が実際のプロジェクトに展開した事例もあり、学生の励みにもなっています。
-他の授業でも取り入れられそうな点、今後の展開についてやってみたいこと-
ニュータウンであり、かつその周囲には多摩丘陵の昔ながらの環境も残っている南大沢の町は、まちづくりの教科書として、あるいは実験場として素晴らしいフィールドです。演習授業にとどまらず、教育や研究を通じてさらに地域に貢献できる大学を目指していきたいと思います。
代表者コメント(システムデザイン学部航空宇宙システム工学科 金崎教授)
-受賞した感想-
提案の取組と実施の結果を学長はじめ各位にご評価いただき、大変嬉しく思います。 コロナ禍に入ってからの取り組みになり、臨機応変に対応しないといけないことも多くありましたが、受講してくれた学生さん一人一人が熱心に課題の抽出から粘り強く学習してくれたこともあり、私としても色々と学ぶ機会となりました。共同実施者の教員や協力してくれたTAの院生らに加えて、一生懸命学習した履修生のおかげで評価いただける取り組みとなったものと思います。
-取組みを始めたきっかけ-
代表者が担当する「エアフレームデザイン概論」は様々な学部学科の履修生がいますので、取り組みやすい紙飛行機の設計・製作を課題としています。一方で、「RCを作りたい」「プログラミングやCADをやってみたい」と言った発展的な課題の要望も多くあります。そこで、都立大websiteの「基盤科目群」の説明にある「専門分野の学修に備え」とあるとおり、学習が進んだ学生さんに発展的な課題の提供を行いたいと考えたのがきっかけです。
-取組みを実施するにあたり、特に苦労した点、心掛けた点-
本取組みはアクティブラーニングとして提案しました。ブレインストーミング、グループワークなど集まっての実施を考えていたのですが、初年度からコロナ禍に入ってしまい、事前に考えていたことのやり方を再考せざるをえませんでした。その中で、集まることができる時期には予定から少しコンパクトにしたグループワーク、感染状況が悪い時期は個別に小型ドローンのプログラミング、webアプリによるオンラインでのブレインストーミングなどの試行を致しました。心がけた点としては、システム検討までの道のりと、プログラミング実習などとのつながりの理解を促すこと、履修生間やTAをやってくれた院生ともコミュニケーションをとってもらうことなどです。
-他の授業でも取り入れられそうな点、今後の展開についてやってみたいこと-
今回実施してみて、ミッションステートメントの記法、要求分析を経てシステム要求の導出などの理解はシステム検討に大切なものであると実感しました。これらの資料化技法は、少し簡単にして「エアフレームデザイン概論」でも取り入れ始めています。また、飛ぶものを教材にするのは基盤科目では難しいのですが、フリーで公開されている学習用シミュレータも充実しており、今後正課科目の課題として取り入れることができないか検討したいと考えています。
表彰式での大橋学長のコメント
高校までは受験もあるため、学問を暗記だと思っている学生が多い。今回受賞された岡村先生の取組みは、南大沢を舞台に実際に色々な企業と議論しながら、課題解決学習として地域の問題を考えていく取組みであり、社会と関わるような学習を学生が体験している。
また、金崎先生の取組みは、飛翔体を用いて惑星探査を設計したが、学生たちが授業終了後にサークルを作り、機体を作成するというところまで発展した。
いずれの取組みも、受身や暗記ではなく、自分から進んで行うことが本当の学問だということに学生が気付き、学生の心に火をつけるようなものであった。
今回の受賞取組みは観光分野や航空分野だが、どんな分野でもこういった取組を実施できると思っており、今回受賞された方たちは、先駆者として非常に良い見本を示してくださったと思う。これからもこういった取組みで学生を元気にしてほしい。