本研究のポイント
- J-PARCの大強度パルス中性子を用いる事により新たな元素分析法を開発
- 試料を破壊することなく迅速に正確な分析値が得られる事を実証
- 放射性物質、隕石、考古学試料分析などの研究の進展が期待
独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎。以下「原子力機構」)原子力基礎工学研究センターの 藤 暢輔 研究主幹らと公立大学法人首都大学東京(学長 原島文雄。以下「首都大学東京」)大学院理工学研究科の 海老原 充 教授は、大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設(MLF)で得られる世界最高強度のパルス中性子を用いる事により2つの非破壊元素分析法を融合した新しい分析法の開発に成功しました。
中性子ビームを用いた非破壊元素分析法には、試料から放出される電磁波のエネルギーを用いる方法と中性子のエネルギーを用いる手法があります。どちらの手法も試料を壊さずに元素の含有量を求めることが出来ますが、試料の成分と目的とする元素によってはどちらの手法でも分析が困難となる場合がありました。
新しく開発した分析法では、その2つの手法を同時に行うことによってそれらを融合し、融合による相乗効果によって、どちらの手法を用いても分析が困難である元素を正確に分析出来ることを実証しました。
今回開発した分析法は、非破壊法であるということから特に放射性物質試料や「はやぶさ」などの貴重な試料の分析に有効であると考えられ、これまで得られなかった高精度な元素情報をもとにした研究の進展が期待されます。
本研究成果は、「Analytical Chemistry」のオンライン版に掲載されました。
本研究はJSPS科研費25246038の研究成果を含みます。