超薄膜, 軽量, しなやかな高分子全固体電池: フリーリチウムイオンにより高伝導化

報道発表

 首都大学東京大学院 都市環境科学研究科 環境応用化学域の川上浩良(かわかみ ひろよし)教授らの研究グループは、分極あるいは極性を持つ高分子(PVDF, PANなど) にリチウム塩を添加して合成したナノファイバーマット上に、高分子マトリックスで充填したナノファイバー含有複合電解質膜を作製することで、塩添加ナノファイバーの効果により膜内にフリーリチウムイオンが生成され、リチウムイオン伝導性とその輸率が著しく向上することを見出しました。この電解質膜を用いれば、現在、有機全固体電池では開発が困難とされている、室温で十分に作動する全固体二次電池を開発することができます。
 高分子電解質は、10mm以下に超薄膜化でき、軽量で小型化も可能な上、高分子材料からなるためしなやかで強靭な膜として作製できました。また、長期の充放電サイクル試験などの電池特性も安定しており、リチウムデンドライトの形成は殆ど認められませんでした。電池の積層化も容易で、積層型電池の作製にも成功しています。さらに、正極には鉄系材料を用いることができるため、レアメタルの使用も必要ありません。そのため、電池製造プロセスも無機全固体電池に比べれば格段に容易であり、さらに電極と電解質膜を一体化した電池も製造できます。
 フレキシブル電池、ウェアラブル材料への搭載が可能なため、まずは小型医療機器や衣服での利用を目指し、最終的には車載用電池、インフラ関連での使用を目指します。
 本研究成果の一部は、2019年5月29日~31日に大阪府立国際会議場で行われる第68回高分子学会年次大会で発表します。

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