Profile
都市環境学部 都市政策科学科
キーワード
巨大企業並みの公務員を抱える東京都を動かす行政の仕組み
東京都には大企業並みの職員がいる
「東京都」に勤める公務員は何人いるか知っていますか? 2013年時点で16万7000人です。これは、警察官や教員を含めた職員の数です。自治体の中で最多であることは間違いありませんが、さて、どれほどの規模かはなかなか実感が持てません。そこで、民間企業と比較するとわかりやすいでしょう。日本で最も従業員数の多い企業はトヨタ自動車の33万8000人です。次いで日立製作所(33万1000人)、パナソニック(28万9000人)……と続き、東京都はなんと10位にランクします。同等数の従業員を抱えるのはソニーや日産自動車などの大企業です。
優秀な職員を選抜するためのシステム
自治体の仕事は、学校教育を受ける人、生活保護を申請する人、税金を滞納する人など、さまざまな人と接します。そのため、コミュニケーション能力が重要です。時には震災や事故といった予期しない事態に迅速に、そして柔軟に対応することも求められます。そのような課題に対応できる能力をもった職員を、数多くの職員のなかから客観的な基準のもとで選び出すことは一苦労です。
そこで、管理職となる人材を選抜するために試験制度を採用しています。試験制度は人の能力を計るには有効な手法です。とはいえ、試験が得意な人が公務員として有能とは必ずしも言えません。そのため、客観的に能力を選考する手続きにも、難しさがともないます。
適材適所で人材を動かして効率化
このように適材適所の人事を行う選抜方式は、職にあった能力をもつ人材を選びだすことで行政が効率よく動くためにあります。しかし、これは東京都という行政組織内部の効率性だけが目的ではありません。行政組織内で職員が効率的に働くことができれば、東京都民の一人ひとりにとっても良質なサービスを受ける機会になるはずです。
東日本大震災被災地への応援派遣からみる公務員の役割
被災地へ公務員を派遣するってどういうこと?
2011年3月の東日本大震災では甚大な被害を受けました。自治体の行政機能も例外ではありませんでした。陸前高田市(りくぜんたかたし)や大槌町(おおつちちょう)のように庁舎を津波で失う自治体もありました。現在、多くの被災地では復興に向けた事業を進めています。復興過程での問題の一つに、行政職員の不足があります。では、職員不足に悩む被災地ではどうしているのでしょう。
公務員の被災地応援派遣における問題点
現在、行政サービスが滞りなく行えるように、日本各地の自治体から公務員の応援派遣が行われています。被災地応援派遣の状況は、例えば、中長期的な職員派遣制度での要望と充足状況を見てみると(2014年2月1日現在)、岩手、宮城、福島の各県内の48市町村が1448人名の応援要請をしています。一方で、充足数は1288人です。つまり、159人の不足が出ています。特に復興に直結する土木職や、被災者の心を癒す心理職などでの不足が目立ちます。しかし、これらの職種は日本各地の自治体でも人材不足で、被災地に派遣する余裕がないのが現状です。
公務員の果たす大切な機能
地方公務員は一度採用された自治体だけで終身勤務し続けるイメージがあります。そのため、被災地の公務員派遣は、本来の自治体での仕事とは異なる役割に見えます。しかし、そうでしょうか。地方公務員法には「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、かつ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」とあります。
震災のような非常事態では、「全体のための奉仕」として自らの個別自治体での全体のためだけでなく、自治体全体のために、自治体間で職員を派遣し応援するという実践が生まれてきました。被災地への公務員派遣からは、一つの自治体だけではない、自治体全体への奉仕が求められる仕事である、という問いかけがあります。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
「行政」というと自分には関係のないものだと思いがちです。しかし、水道から出る水も、歩く道も、公立高校の高校生ならば学校教育と、多くの行政活動は気がつけばあなたのそばに必ずあります。とはいえ、身の周りにありますが、見えにくい存在なのかもしれません。でも、見えにくいからといってすべてを行政に委ねてよいのでしょうか。もしも気になったところがあれば、パブリックコメントで意見を出したり、住民集会に参加したりと自分から働きかけてみてはどうでしょうか。もしかするとあなたのひと言で行政が変わるかもしれません。
夢ナビ編集部監修