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都市環境学部 都市政策科学科
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企業にも行政にも求められる「環境マネジメント」とは?
環境マネジメントの大切さ
私たちが日常生活を送る上で、環境に対してどれだけ負荷を与えているかを考えることは、「環境問題に対して、私たちは何ができるのか」を考えることにつながります。こうした発想は企業や自治体などにも求められています。組織の活動が、環境にどのような負荷を与え、それをどのように改善していくか、具体的な目標設定をして継続的に取り組んでいくことを「環境マネジメント」と呼びます。
環境マネジメントでは「PDCAサイクル」という手順が必要となります。活動の中で、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)というサイクルを繰り返すことで、環境問題の改善を継続的に行っていきます。
環境マネジメントの規格と認証登録制度
組織における環境マネジメントに関しては、ISO(国際標準化機構)の国際的な規格が存在します。審査を行い、しっかりと環境マネジメントを行っている事業者に対して、「ISO14001」という規格を認証するものです。ISOに取り組むには予算も手間もかかるので、大企業でないと取得しづらいこともあり、日本には中小企業などでも取得しやすい「エコアクション21(EA21)」という認証登録制度もあります。これは、環境省のガイドラインに基づいて、審査人が審査をし、持続性推進機構において認証登録を行うもので、審査人が事業者に対して指導やアドバイスも行うところに特徴があります。
法令整備の必要性
環境問題を解決するためには認証登録制度のみならず、環境負荷の大きい事業活動を制限する法令の整備が重要です。現在、日本では大気汚染防止法や廃棄物処理法など、個別の問題に対応する法律はありますが、トータルで環境全体を見渡して環境負荷を低減させていくような法律はありません。
例えば企業がある活動を行う際、たくさんの法律に基づく許可などをいちいち受けるのではなく、1本の許可申請で企業活動全体を評価できるような法律ができれば、環境全般にわたる改善への取り組みがより進むことが期待されています。
あなたの消費行動が、環境問題を左右する!
環境への影響の「見える化」
私たちは日常生活を送る中で、環境に対してさまざまな負荷を与えています。しかし、環境への影響は、目に見える形ではなかなかわかりません。だからこそ、人間の活動が環境へ与える影響の可視化、いわゆる「見える化」が必要となります。
家庭から出た廃棄物が、どのように回収されてリサイクルされるのか、また、水がどのように浄化されて家庭に届くのかなど、物や物事の流れを「見える化」することで、普段見えないところに思いをはせ、自分に関係のあることとして受け入れやすくなります。また、きちんと分別して回収しないとリサイクルに労力とコストがかかると知ることで、環境への負荷は住民にもはね返ってくると自覚することができます。
求められる「グリーン購入」を意識した消費行動
消費者として、企業の取り組みを見つめる目も重要です。製造過程において環境負荷の少ない製品を買おうという「グリーン購入」の意識が浸透してきています。そのためには、消費者に商品の情報などの判断材料が提供されなければなりません。日本では「エコマーク」などが知られていますが、イギリスのスーパーなどでは、「カーボンフットプリント」といって、製造から販売までの消費者に届く過程で二酸化炭素がどれだけ排出されたかを、商品に表示する取り組みが進められています。
さまざまな「見える化」の工夫
同様の概念として、「バーチャルウォーター」(仮想水)という考え方があります。例えば食品として牛肉を輸入したとき、その牛を育てるまでにどの程度の農作物が必要で、その農作物を収穫するのにどれだけの水を使用したかということなどから、全体の工程で使われた水の量を推定するものです。
これらも、商品や物質の流れを「見える化」する取り組みであり、消費者に環境負荷をわかりやすく伝える工夫のひとつと言えます。こうした取り組みなどを通じて、企業や行政、そして個人のレベルで環境問題に対する意識を啓発していくことが求められているのです。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
あなたの高校生としての時間は、いまこの時しかないものです。法に触れることや危険なこと、健康を害すること以外であれば、部活でも趣味でも、もちろん勉強でも、自分がやりたいと思うことを、悔いがないよう一生懸命に取り組んでください。
環境問題に携わる立場から言うと、今まで特に意識することなく過ごしてきた自分の日々の生活が、環境とどのように関わりどのような影響を与えているのかということに思いをはせて、さらに、自分に何ができるのかを考えてもらえると、うれしく思います。
夢ナビ編集部監修