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都市環境学部 観光科学科
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外国人へ向けて、日本の観光をアピールするには

外国人の日本観光は大都市中心
日本政府は、10年ほど前から「VISIT JAPAN」と題し、海外へ向けての日本観光キャンペーンを展開しています。2010年は、約860万人の外国人が日本を訪れました。ただ、現状では、日本の観光というと、東京・大阪・京都・札幌・福岡などの大都市に著しく偏っており、地方へ足を運んでもらうための工夫が必要とされます。訪日外国人観光(インバウンド・ツーリズム)は、ツーリズム研究の大きなテーマのひとつとなっています。
国によって違う、日本のとらえ方
ひと口に外国人と言っても、日本に対する意識も違えば、日本での観光スタイルも大きく異なります。例えば、台湾や韓国の人は、ある程度日本のことを知っているため、都市部だけでなく、地方の自然の多い場所などにも訪れてくれる傾向にあります。欧米人や中国人の場合は、東京と京都だけなど、ピンポイントの観光が多いようです。なるべく日本のあちこちを回ってもらえるような魅力的なツアーを提供するには、観光に訪れる外国人の期待や行動を深く研究しなければなりません。
観光地アピールの戦略が必要
現在、日本の観光行政を担っているのは、都道府県という単位です。海外のメディアや旅行会社などに向けて、都道府県がトップセールスを行うことが一般的に行われています。しかし、海外から日本を見るときは、都道府県よりも大きい地域単位で見ていると考えることが自然なので、いくつかの県などが協働してアピールしたほうがより効果的と言えます。そうした際に、どういう県の組み合わせがもっとも魅力的に見えるかを、考える必要があります。例えば、四国の4県が四国地方としてまとまるよりも、中国地方と四国地方の瀬戸内海側でまとまったほうが効果的かもしれません。この組み合わせは外国人の国籍によっても異なるかもしれません。今までの枠にとらわれず、新しい地域がひとつのチームとなって、広域の観光に取り組んでいく必要があるのです。
観光情報が、渋滞を緩和させ、カーナビを進化させる!?

「渋滞解消」もツーリズムのテーマ
日本の高速道路においては、大都市近郊で休日に発生する渋滞が大きな問題となっています。一説によると、渋滞は約10%の需要超過で起こると言われています。つまり、超過した約10%分の自動車さえほかの場所へ移動することができれば、理論的に渋滞は解消できることになります。10%程度であれば、観光情報をうまく利用することでなんとかなるかもしれません。こうした検討も、ツーリズム(観光)研究の大きなテーマであると言えます。
観光情報をどう知らせるか
渋滞が起こるのは、多くの自動車が同じ時間帯に同じ道路区間を利用するからです。例えば、東京に向かう高速道路で日曜の夕方に渋滞が起きやすいのは、旅先から帰る自動車が同じような時間に帰ろうとするからで、その一部がもう一箇所でもいいから観光地に立ち寄ってくれれば、渋滞は緩和できるはずです。カーナビやスマートフォンなど、ドライバーへ観光情報を提供する手段はたくさんありますが、どんな情報をどのタイミングで提供すれば立ち寄りを促せるかがポイントです。
カーナビを進化させる
現在、農村部の観光による活性化をめざして、「グリーンツーリズム」と呼ばれる新たな観光コンセプトが提案されています。農村部へは自動車で行くことが多いですが、カーナビを使用した場合、都市部とは違った思わぬ問題にぶつかることがあります。例えば、めざす果樹園の住所を入力して行っても、果樹園を所有する農家の自宅に案内されてしまい、肝心の果樹園はかなり離れたところにあるというケースです。また、カーナビは通常、地図を2次元でとらえているので、高低差の大きい地形の場合、カーナビの示す最短ルートだと逆に目的地に行きにくくなってしまうケースもあります。これらは、カーナビがもともと都市部での利用を前提として開発されてきたことの弊害です。こうした課題を解決する方法を提案することがグリーンツーリズムの参加者の満足度を高め、今後の一層の普及につながるはずです。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
われわれ東京都立大学都市環境学部の自然・文化ツーリズムコースは、全国でもユニークな、理系の視点でツーリズムを研究するコースです。しかし、今日の複雑な社会を運営していく上では、理系・文系を問わず、さまざまな基礎知識が必要になってきます。ツーリズムは、まさにその代表例になっていると言えるでしょう。あなたが今後、どんな分野に進学をしようと考えているとしても、どんな分野、どんな種類のものでもいいので、ぜひ、たくさん本を読んでほしいと思います。
夢ナビ編集部監修