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都市環境学部 都市基盤環境学科
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見えない努力に支えられている、日本のきれいな水道水
水道管は都市の血管のようなもの
日本全国の地下に埋まっている水道管をつなげた全長はどれくらいか知っていますか? 答えは60万キロメートル、地球を15周回るほどの距離になります。水道管は人間の血管とよく似ています。水道管も血管も水や血液を循環させて都市や体を機能させているからです。血管にコレステロールがたまらないようにするため日々の健康管理が大切です。水道管もこれと同じことが言え、地道なメンテナンスが必要となってきます。
見えないけれど重要なメンテナンス
日本の水道管は優秀で、諸外国に比べて漏水が少ないことで知られています。今後はそれをどう改善し維持していくかが問題です。古くなった管を新しいものに替える工事は順次行われています。
新しい水道管に求められる要素として、特に最近では耐震化ということが注目されています。水道管は5mほどの管を継手(つぎて)という接続部に順次つなぎ合わせてできているのですが、阪神淡路大震災の際、「耐震継手」という大きな伸縮・屈曲性と離脱防止機能のある継手を使っていた地域では漏水事故が見られなかったという事実から効果があるとみなされ、耐震継手に替えていくように進んでいます。また現在は40年程度と言われている寿命が100年耐久できる素材の水道管も開発されています。工事は断水をともなうので主に夜間に行われますが、商業施設が集中している場所だと時間帯に関係なく断水になると困る場合があります。そこで仮配管のバイパスを作って不断水での工事も行われるようになりました。日本の上水道はこのような技術に支えられているのです。
水道から飲み水が出てくるのは当たり前?
日本では水道の蛇口をひねると飲める水が出てくるのが当たり前ですが、世界的に見ると当たり前ではなく、珍しいことなのです。日本の水道技術は優秀ですが、人口減少により料金収入が減っていく中で、将来も水道を維持・管理していくために、技術者が膨大な管路のメンテナンスをいかに効率よく行っていくかが課題となるでしょう。
暮らしやすい都市づくりを考える「環境システム工学」
「環境システム工学」とは?
日本の大都市のインフラ整備は世界的に見ても優れていると言えます。電気、ガス、水道のライフラインをはじめ、道路や通信といったインフラがしっかりした上に都市機能が成り立ちうまく回っているのです。インフラの語源は「infrastructure(下部構造)」で、文字通り都市機能の足腰になるものです。
インフラが整備されていても、それをうまく利用していかなければ意味がありません。いかに効率よくインフラを使い、メンテナンスを行い、都市全体を機能させていくか、それは省エネルギーや快適な環境づくりにつながっていきます。それを考えるのが「環境システム工学」という学問なのです。
リサイクル廃棄物の回収拠点を効率化
東京のように人口が集中している都市では廃棄物が大量に出ます。回収し、運搬して、焼却したりリサイクルしたりするためにも効率のよいシステムを考える必要があります。回収場所は多ければ多いほど住民には便利ですが、多すぎると回収にかかる時間や人件費がかさんでしまいます。廃棄物回収のような公共事業も事業である限り、コストや効率を考えなくてはなりません。特にリサイクルの場合は、分別して回収したり、回収したものをどう保管しどのタイミングで業者に回してリサイクルするかなど、複雑な問題が絡みます。小型家電のようにレアメタルと呼ぶ希少な金属を多く含むものは街中に回収ボックスを設置する方法も検討されています。回収ボックスをどこにおけばいいか、どのように告知していくかなど、データを見ながら「最適化」していく作業が必要です。
大震災に対応するために
もし東京に東日本大震災を上回る地震が起きた場合、コンクリートのビルが倒壊したり、古い木造住宅密集地域で火災が起きたり、大量の瓦礫が発生する可能性もあります。その場合もいかに効率よく瓦礫を撤去・移動し、衛生的な環境を確保できるかを事前にシミュレーションしておく必要もあります。こうしたことも環境システム工学のテーマなのです。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
日本では水道の蛇口をひねると当たり前のように飲める水が出てきますが、これは世界的に見ると素晴らしいことなのです。海外市場で日本の電化製品や自動車産業の技術はトップレベルであると一世を風靡(ふうび)しましたが、水道技術も世界に誇れるものだと言えます。
私の研究室でもアジア圏からの留学生が日本の技術を学び祖国で水道の普及に努めています。日本からアジアへ、そして世界へ水道の輪が広がっていってほしいのです。水道技術は日本が世界に貢献できるひとつの道だと思っています。
夢ナビ編集部監修