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システムデザイン学部 インダストリアルアート学科
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誰もが「編集」をする時代の編集デザインとは
誰もが「編集」をする時代の到来
「編集」とは、ある企画や目的のため、情報を集め、整理し、構成することです。テキストや画像、音や映像などあらゆる情報が編集され、書物や音楽、映画などのコンテンツが生まれます。それはプロの編集者だけではなく、日常生活の中で誰もが行っていることです。例えば、授業の内容を自分なりにわかりやすく工夫しながらノートに書くことや、洗濯したシャツをたたんでタンスに収めることも一種の「編集」です。特に情報のデジタル化とネットワーク化が進んだ現在、自分で撮った写真を選んでプリントしたりSNSに公開したり、誰もが当たり前のように情報の編集と発信をしています。
情報をまとめるだけでは意味がない
編集はものづくりでありながら、ゼロから何かをつくりだすのではなく、既存のものを集めて選んで構成していくやり方であり、考え方です。昔から数多くの書物がこの方法と思想で生み出され、メディアの発達した現在ではリミックスやキュレーションと呼ばれる新しい手法に引き継がれています。情報を編集しコンテンツを生成するにはエディトリアル・デザインと呼ばれる作業も重要です。書物であれば人間の読書行為や認識のメカニズムまでを考えて、読みやすい書体や文字組みを設計することによって、コンテンツの価値は高められるのです。
プロの編集者がいなくなる?
昔は文字の読み書きは、ごく一部の人たちの特権であり職能でした。しかし、近代になって識字率が向上し、20世紀の印刷技術の発展とともに大量の新聞や雑誌、書物が出版されました。これらの役割は21世紀の現在はインターネットへと受け継がれ、個人でも情報発信ができるようになりましたが、だからといってプロの編集者がいらなくなることはありません。例えば、かつては選ばれたアスリートのものだったスポーツも、一般市民に広まることによって、余暇の楽しみや健康維持といった勝敗とは別の新しい目的や価値観を生んだように、編集もまたプロからアマチュアに普及し多様化する時代を迎えているのです。
紙の本や雑誌はなくなってしまうのか?
転機を迎えた紙媒体
電子書籍の普及により、本や雑誌など紙媒体が減っています。しかし完全になくなることはないでしょう。テレビが出現したとき、ラジオはいずれいらなくなるとも言われましたが、地域FMや緊急災害放送のように人と人を声でつなぎ命を守るネットワークとして、ラジオにはほかのメディアにない存在感があります。またパソコンの普及によって「手で書く」という仕事が減り、オフィスでの需要が減った文房具は、新開発の消せるボールペンや多機能ノートなどプライベートなシーンで新たな消費を生み出しています。ラジオや文房具に起きたのと同様のことが、今後紙媒体にも起こるのかもしれません。
「コミケ」は出版の未来を予言していた?
出版ビジネスの主軸が紙からデジタルへと移行する一方、パソコンやプリンタを使えば誰でも自在に出版物が作れるようになったことで、若者たちの間では「リトル・プレス」と呼ばれる小規模出版や「zine(ジン)」と呼ばれるインディーズ・マガジンの輪が世界的に広がっています。日本ではコミックマーケットなどのマンガ同人誌の展示即売会が有名ですが、ほかにも文芸同人誌を集めた「文学フリマ」やアートブックフェア「ZINE’S MATE」など多彩なジャンルのイベントが開催されています。また、現代美術では本を主題や素材にしたブック・アートという表現も見られます。
電子にはなく、紙媒体にあるものとは?
最近は図書館や書店だけでなくブック・カフェでも読書会や講演会が開かれ、本好きの人たちが集まります。京都大学で始まった「ビブリオバトル」は各自が好きな本についてのスピーチを競うコンテストで、いまでは全国大学大会が開かれています。いずれも、インターネットで情報が共有できる時代だからこそ、本を媒介としたリアルなコミュニケーションが求められているわけです。その意味では、これからの本や編集について考えることは、これからの人間関係やコミュニティのありかたといった新しい公共性をデザインすることにも通じているのです。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
情報のデジタル化とネットワーク化により、いまや誰もが日常生活の中でさまざまなかたちの「編集」をしています。だからこそ、明確な目的意識を持って、コンテンツ編集の方法論を理論的に学ぶ人が社会的にも望まれています。
もちろん、職業的な編集者でなくても、編集の技術や知見はさまざまな分野で、そして日常生活の中でも有効に活用できます。書物や番組を編集するように、自分の人生を自在に設計する、「編集」とは、小さな人間が大きな世界と向かい合い、自己実現を達成するための方法論であり思想でもあるのです。
夢ナビ編集部監修