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システムデザイン学部 電気電子工学科
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私たちの生活に欠かせない「周波数」

周波数のできること
音波、電磁波、光など、波の特性を持つものには、すべて特有の周波数というものがあります。周波数とは、一定時間に波の振動が起こる数のことで、この周波数というのは、「世界でもっとも精度よく作り出せる物理量」であると言われています。つまり、さまざまな周波数を基準として、時間や温度や距離など、いろいろなものの正確な測定ができるということです。大きな例で言うと、宇宙が膨張しているということも、「遠ざかるものから発する電磁波は周波数が低くなる」(ドップラー効果)という周波数の特徴を利用した観測で明らかになったことなのです。
私たちのまわりの周波数源
私たちの身近なところでは、多くの電子機器で、複数の回路を同期(作動を時間的に一致)させるなどするために、安定した周波数が必要になります。それには、水晶に電気を流すと振動するという特性を利用して開発された、「水晶振動子」と呼ばれる部品が使用されています。安定した周波数源となっている水晶振動子は、デジタルカメラやパソコン、携帯電話、自動車の電子制御、クォーツ時計や多くの家電製品などにも使われており、今や私たちの生活には欠かせないものとなっています。
周波数で時間を計る
また、日本の時間の基準となる日本標準時は、「原子発振器」という装置で計られる時間をもとにしています。原子発振器というのは、ある原子のまわりを回る電子にマイクロ波やレーザー光を当てたときに、電子に変化が生じるときの周波数を取り出す装置のことで、水晶振動子よりも高い精度の周波数を得ることができます。現在では、16桁の精度で周波数を作り出すことのできる原子発振器もあり、これを使った時計では、誤差が数億年に1秒となります。日本標準時は、世界の標準時間と同期していますが、例えば証券取引では、1秒以下のタイミングで取引の優先順位が決まることもあるので、国際間においても正確な時間測定は不可欠なのです。
「原子発振器」で広がる電子社会の未来

携帯電話に必要な周波数
携帯電話やインターネットを利用するには、正確な周波数を発生させる装置が必要です。電波によって通信する電子機器は、割り当てられた特定の周波数を利用して情報をやりとりしているため、周波数が正確でないと、電波を送受信することができなくなってしまいます。テレビやラジオが、チャンネルごとに電波の周波数が違うのと同じで、携帯電話も、それぞれの機器が異なる電波を使い分けることで、混線することなく通話ができるのです。そのために携帯電話の部品として欠かせないのが、「水晶振動子」というものです。
水晶振動子とは何か
水晶振動子とは、電圧を加えたときに水晶が振動する原理を応用して、精密で安定した周波数を発生させる装置です。電波を利用するものだけでなく、多くの電子機器では、回路間の同期(作動を時間的に一致させること)などのために安定した周波数が必要とされます。ですから、今では、この水晶振動子が、さまざまな家電製品やパソコン、時計や自動車など、あらゆるところに部品として使用されています。一般家庭の家の中にも、数十個はあると思っていいでしょう。
原子発振器で携帯電話が進化する
水晶振動子が作ることができる周波数の安定度は、5~6桁です。しかし、さらに精度を高めることができれば、携帯電話はより使いやすくできます。そのために開発されているのが、10~11桁の精度で周波数を得ることができる超小型「原子発振器」です。原子発振器は、現在は正確な時を計る原子時計などに応用されていますが、まだ携帯電話に内蔵できるほどには小型化されていません。超小型化が実現し、原子発振器が内蔵されれば、携帯電話が電源を入れるとすぐに立ち上がるほか、高速通信と、より安定した通話が可能になると言われています。携帯電話に限らず、情報通信や医療の分野への応用も大いに期待されています。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
どの分野に進むか、判断がつきかねているなら、いろいろなことに興味を持ち、自然現象でも電化製品でもいいので、それがどういう原理で動いているかを、一歩踏みこんで調べてみてください。例えば、電化製品は、電気電子の知識だけではなく、幅広い分野から得られた知識と技術が融合してできています。踏みこんで見ていくと、家電ひとつからもいろいろな分野が見えてきて、自分の興味の持てる分野が見つかると思います。それは洞察力を養うことにもつながり、きっとあなたの夢を実現する足がかりになるでしょう。
夢ナビ編集部監修