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システムデザイン学部 電子情報システム工学科
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メールがちゃんと届くのには見えないカラクリがあった!

メールが届くのは当たり前なのか
送ったメールがすぐに相手に届くのを当たり前だと思っていませんか? 実はメールとして送られたいわゆる「パケット」が通信における分岐点で壊れたりなくなってしまったりすることはよくあるのです。そうすると「プロトコル」と呼ばれる通信規約やソフトウェアの働きによって、完全なものをもう一度送るように指示が出て送り直されるという過程を経て、相手には何事もなく届いたように見えるのです。メールが届くまでの一瞬に思える間に、通信経路の中でこのような作業が行われています。
ロールバックリカバリというカラクリ
コンピュータの中でも故障と修正は頻繁に起こります。故障には配線の不備などハードウェアの問題もありますが、人間が組んだソフトウェアに欠陥がある場合も多いのです。事前のテストではわからなくても、長期間使い続けるなど、ある条件下で起こる故障も考えられます。ですから故障が起こったら見つける仕掛けをソフトウェアのプログラムに仕込んでおくわけです。故障が見つかれば誤ったところから正しいところまでいったん戻ってやり直す「ロールバックリカバリ」は、実践的な意味で大変重要な手法です。パソコンで作成中の文書が突然消えてしまっても自動的に以前に保存された正しい状態まで戻れるバックアップ機能などはロールバックリカバリの代表でしょう。正しい状態からやり直し、次は不具合を防ぐように働いていきます。
コストとの兼ね合いも考えて
最近では、コンピュータはただ動けばいいのではなく、安心・安全に使えて初めて価値がある「ディペンダブル・コンピューティング(頼りになる計算・処理)」を提供すべき、という考え方が重視されています。ただ、事前に万全のチェックができればいいのですが、完璧にやろうとすると膨大なコストがかかります。そこでロールバックリカバリのような方法が必要不可欠となるのです。そしてメールのような使用頻度や重要性の高い応用分野を支えるネットワークやコンピュータで実用化が進んでいます。
コンピュータは見えないところで耐えている?

「フォールト・トレランス」という考え方
最近のコンピュータは、その普及にともない、誰もが安心して安全に使えることを重視した「ディペンダブル・コンピューティング(頼りになる計算・処理)」がキーワードになっています。コンピュータの不具合でメールが届かない、大事なデータが失われるということはあってはなりません。コンピュータの信頼性を高める一つの要素として「フォールト・トレランス(故障に対する耐性)」が挙げられます。これは故障が起こってしまったときに外から見えないように回復させて立て直す機能です。
地震にも対応できる!?
故障に耐えるための手法は二つの原理に基づいています。一つは「冗長化」、つまり無駄を許すことです。例えば、二つのコンピュータに同じ計算をさせて答えあわせをすれば、もしどちらか一つのコンピュータが計算を誤ってもそれを発見することができます。しかし、停電などで二つのコンピュータが同時に停止するような状況があるとすればどうでしょう? そんなときには、故障に耐えるためのもう一つの原理、「分散」が有効になるかもしれません。コンピュータの機能を分散させて配置することで一カ所が故障してもほかの場所の機能でカバーします。例えば同じデータの入ったサーバをA・B地点の2カ所に分散させれば、A地点で地震が起きてサーバがダウンしてもB地点の方のデータは保全されているわけです。
すべては安心・安全のために
現在、コンピュータはどんどん高速化、高集積化が進んでいるので、冗長化や分散というのは一見流れに反しているように見えるかもしれません。しかし、このような技術は安全で安心なコンピュータ環境を作るためには必要不可欠なのです。これまでに蓄積された、より速い、より高機能なコンピュータのための技術や知識を、これからは安心・安全のために振り向けてゆくべき時代になったと言えるかもしれません。そして、ディペンダブル・コンピューティングの技術によってユーザーにまったく故障を意識させないのが一番理想的な形なのです。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
大学進学で専攻を決めるときには一生に関わる選択をすることになります。その中で本来望む道と違う方向に行くこともあるでしょう。私もそうでしたが、やりたいこととやれることが違うことはよくあることです。しかし、やりたい道に進めないことが必ずしも悪いことではありませんから、それを失敗だとは思わないでください。大学に進んでからたくさんの人や考え方に触れ、進む道を考えていくスタンスもありだと思っています。決して環境や人のせいにせず、自分の決めた道を進んでいきましょう。
夢ナビ編集部監修