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システムデザイン学部 電子情報システム工学科
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超伝導で電気抵抗0の送電線ができる
電気抵抗が0になる利点
電気抵抗とは、電気の「流れにくさ」のことです。電気を銅線やアルミ線、ニクロム線などの金属の線に流すときは必ず発熱します。これはジュール損失といってエネルギーが熱となって消失する現象です。
では、電気抵抗が0だったらどうでしょう? 電気抵抗が0になれば損失することなく電気が流れます。その電気抵抗が0になる物質を超伝導体と言います。エネルギー損失がなく電気が流れることは大きなメリットで、これは超伝導体にしかない特徴です。
4%の損失がもったいない
そもそも電気は発電所でつくられ、変電所を経由して送電線を通って送られてきます。できれば発電した電力量を消失させることなく送りたいわけですが、電気抵抗がある限りどうしても損失が生じます。実際、送電によるエネルギー損失だけで約4%は失われてしまいます。たった4%でも発電量全体からすると、かなり大きな損失です。電気を損失することなく送るには、送電ケーブルを超伝導化するしかありません。
2030年ぐらいに送電システムが変わる!?
超伝導化には冷却が不可欠です。以前は極低温(-269℃)まで冷やすために高価な液体ヘリウムが必要でした。超伝導化がなかなか実用化できない理由は冷却とコストの問題が大きく、実用化にはもっと高温で超伝導になる物質と、安価な冷却方法を見つける必要がありました。
この困難な問題も技術の進歩によって、現在はクリアされつつあります。1987年に高温超伝導体(酸化物超伝導体)が発見され、液体窒素による冷却方式で実用のめどが立ってきました。さらに窒素は、空気中に無尽蔵にあるものですから液体ヘリウムに比べ低コストでの調達が可能です。
日本では2030年ぐらいに現在の電力ケーブルが老朽化します。その時期に超伝導ケーブルに替えようという具体的な計画があり、すでに実用試験に入っています。超伝導送電システムの実現まで、あと少しのところまで来ているのです。
21世紀のキーテクノロジー 「超伝導」
リニアは超伝導でなければできない
電気抵抗が0になることで熱損失がなく電流を流すことができる利点をもつ超伝導体には、いろいろな応用が考えられます。なかでも輸送の分野とエネルギーの分野は、私たちの生活の利便性を飛躍的に向上させる可能性があります。
輸送分野での応用例として代表的なのは、超伝導リニアです。超伝導リニアは車両に搭載された超伝導磁石と地上コイルの間にできる磁力によって、車両を10 センチほど浮かせ走行します。車輪とレールのような物理的な接触がないため、高速化が可能です。しかし、車体のような大きなものを浮かせるには、強力な磁場を形成する必要があり、それができるのは超伝導磁石だけなのです。
コイルに電気を貯めておく
エネルギー分野では、超伝導技術を用いたSMES(スメス)と呼ばれる電力貯蔵装置の実証試験が行われています。電気の弱点は長い時間、大量に貯めておけないことですが、SMESの仕組みは、大きなコイルを地下に埋めて、電流を流して磁気エネルギーとして貯蔵するというものです。超伝導は電気抵抗が0であるため損失なく貯蔵できるのが最大のメリットです。さらにSMESの先には、世界を超伝導ケーブルでつなぐ「地球超伝導ケーブルネットワーク」という夢のような構想もあります。
超伝導でエネルギー問題は解決する!?
近年、太陽光発電などの再生可能エネルギーが注目されています。太陽光は夜間に発電できないのが弱点ですが、地球規模で考えれば、地球上の半分は太陽光に常に照らされているので発電ができます。
これについては、サハラ砂漠の4%くらいの大きさの太陽光パネルがあれば、世界中の電力がまかなえるという興味深い試算もあります。そして世界の電力網が超伝導ケーブルでネットワーク化されれば、地球の裏側まで電力を届けることができます。何ともスケールの大きな話ですが、決して夢物語ではありません。現在でも光ファイバーが太平洋を横断しているのですから、超伝導ケーブルを張り巡らせる可能性もあるのです。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
理工学系に興味を覚えたら、技術者としての夢を持ちましょう。夢といっても漠然としたものではなく、自分が理想とする社会を見据えて、それに対してどういう技術的アプローチができるのか?乗り物、装置、システムなど、40年後50年後の社会にどんなものがあったらいいかを具体的に考えてみるといいと思います。大学に来て技術や仕組みを学びながら考えてみても結構です。すでにあるモノの延長ではなく、新たな発想でチャレンジできる、既存の概念に捉われないユニークな考え方ができるあなたを歓迎します!
夢ナビ編集部監修