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法学部 法学科
法律学コース
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労働者を守り、社会のあり方を考える「労働法」の研究
「労働法」とは何か?
社会で働くときは、労働者が労務を提供し、それに対して使用者が報酬を支払うという「労働契約」を結びます。民法の原則では、社会生活上の契約は当事者間の合意で自由に設定できるので、労働時間も賃金も両者で決めてよいことになります。しかし労働者と使用者には格差があり必ずしも対等な関係ではありません。労働者は、使用者の指揮命令に従うことが求められますし、経済的にも使用者に従属せざるをえません。また、労働者は個人ですが、使用者は会社という組織であることが多いため、交渉力などの点で格差があります。このため、労働契約が労働者にとって不利にならないように、法律で契約の内容を規制するのが「労働法」です。
労働者を保護するのが目的
日本の労働法では、労働時間・報酬などについて規制が設けられています。労働時間は、原則として1日に8時間、1週間に40時間まで、それを超える場合は割増賃金が支払われます。また、報酬は国が定めた最低賃金を下回ってはいけません。こうした規制は、正社員だけでなく、派遣社員、パート、アルバイトなどの非正規社員にも適用されます。労働法は多くの人にとって最も身近な法律といえるでしょう。
労働法を研究することの意味とは
労働の内容は時代によって変化します。近年、生活や価値観の多様化で労働者毎に、希望する働き方も異なってきました。いわゆるワークライフバランスの問題です。特に少子高齢化社会を迎えて育児・介護をしながら働きたいという人にとってふさわしい労働時間規制が必要です。一方で、時差のある海外との取引や、長時間の実験が必要な研究・実験現場などでは、労働時間の規制によって「仕事が進まない」「いい仕事がしたいのに、時間がなくてできない」といった事態が生まれ、働く意欲と生産性の低下につながりかねないのです。
このような場合に、労働法をどう解釈し、どのように運用するのか、さらにどのように見直すのが労働者や会社、ひいては社会全体にとってよいのかを研究するのが、労働法という学問なのです。
ブラック企業をなくすためにすべきこと~労働法の視点から~
企業コンプライアンスとは?
コンプライアンスとは「法令遵守(じゅんしゅ)」、すなわち社会のルールを守ることで、企業コンプライアンスとは、企業が法律・法令を守って企業活動を行うことです。しかし残念なことに、法律を守らない企業もあるのが現実です。例えば、「ブラック企業」と呼ばれる企業があります。働く人の健康や命を脅かすような働き方を強いる企業のことです。労働者が長時間労働の末に自殺したり、過労死したりする事件も起こっています。企業コンプライアンスを徹底し、労働法が遵守されていれば、こうした事態は避けられたはずです。
企業に「安全配慮義務」を徹底させるために
企業には「労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をすべき」という「安全配慮義務」が課せられています。長時間労働の強制はもちろん、放置しているケースでも安全配慮義務違反が問われ、裁判でも企業に多額の賠償金の支払いが命じられています。しかし、それでも過労死や過労自殺がなくならない現実があります。そこで近年、会社だけでなく、業務執行を行う取締役などの経営陣にも損害賠償責任を認めるケースが増加しています。自分たちも賠償責任を負うとなると、経営者はきちんとした安全配慮義務履行体制の構築に真剣に取り組むはずです。つまり取締役に労働法の遵守を促すことで、企業コンプライアンスの徹底が図られることが期待されるのです。
労働者・企業・社会の利益を守る
しかし、安全配慮義務の内容が適正に示されないと、会社や経営者が萎縮し、企業活動への意欲が損なわれる恐れもあります。それは経済活動にとってもマイナスです。労働法とは、労働者を保護することはもちろんですが、同時に企業の利益も尊重し、社会全体の活力の向上に寄与するものでなければなりません。
そのためには、企業側がどのような体制を構築すれば、安全配慮義務違反に問われないのかを示す必要があります。安全配慮義務の中身を適正に示すことは、労働法研究の重要な課題のひとつなのです。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
私は「労働法」を専門に研究しています。労働法は働く上での「ルール」です。会社、労働者、そして社会全体の利益を考慮して設定されるものです。
皆さんの多くは、大学を卒業した後、民間企業で働くことでしょう。また、自ら起業する人もいるでしょう。労働法を理解することは、実際に働く労働者にとって重要なのはもちろんのこと、労働者を働かせる会社にとっても重要です。労働法の理解を深めておくことは、雇用社会のメンバーとして必須です。興味を持った人は、ぜひ勉強してほしいと思います。
夢ナビ編集部監修