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東京都立大学の「学び」を体験! ― 丹野 清人

Profile
丹野 清人 教授
  【教員紹介】

人文社会学部 人間社会学科
社会学教室

キーワード
社会学,グローバル化,外国人労働者

日本で働く外国人について社会学的に考える

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外国人労働者が増えている

コンビニや飲食店など、さまざまな場所で働く外国人をよく目にするようになりました。厚生労働省の統計では、日本で働く外国人労働者は2016年に100万人を突破、2017年には約128万人となっており、大幅に増えていることがわかります。日系人定住者や、日本人の配偶者を持つ人、永住権を持つ人も多く、このような人たちには日本に「住む」ためのビザが発行されており、こうした人々は労働のために入国したのではないと解釈されています。一方で、留学生が「資格外活動の許可」を受けてアルバイトをしているケースや、技能実習生が研修生として働いているケースも多くあります。

日本経済を支える日系人とブローカーの存在

中南米諸国などには、日系人の日本定住を手伝うブローカーが存在します。ブローカーは日本企業の要請に応じて日系人を仲介しており、工場で働く人材をたくさん確保したい場合などに大きな助けとなっています。このようなブローカーの活動を見れば日本企業の動向がわかり、日系人が日本経済を支えている側面が垣間見えます。
ただ、定住・永住で入国する日系人は家族を帯同できますが、その子どもたちが渡航後、教育面などで苦労しているという現状があります。そのため、労働者の確保という点だけではなく、帯同家族が抱える問題にまで目を向けた社会政策が必要です。

世界の情勢や帯同家族の受け入れ方を問う

国内の労働者が不足する中で、外国人を労働者としてどのように受け入れていくのかについては、今後も社会的な課題として考えなければなりません。日本の課題とはいえ、やはり相手国との関係性が絡むことでもあるため、絶えず世界の情勢も意識しなければ、妥当な結論にたどり着くことはできないでしょう。
また、働く人の家族の受け入れ方も考える必要があります。外国人労働者の実態に目を向け、現状と課題を明らかにしながら、どうすればもっと社会を良くできるのか考えていくのが社会学の役割です。

「日本人」と「外国人」の違いとは? 多様な日本人を受け入れる社会へ

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「外国人」の定義はない

「外国人」という言葉は日常的に使われていますが、実は日本には「外国人」の明確な定義はありません。日本国籍を持つ人が「日本人」であるとし、便宜上、それ以外の人をすべて「外国人」としているだけです。そのため、外国の国籍を持っている人だけではなく、無国籍者や、台湾・北朝鮮といった日本政府が国家と認めていない地域の人々も外国人となります。一方、日本と外国の両方の国籍を持つ「二重国籍」の人については、日本の国籍法で22歳になるまでに1つの国籍を選択するよう定めています。

多くの先進国は二重国籍を容認の方向へ

スポーツの世界では、外国にもルーツを持つ選手の活躍が目立ってきました。もし、このような選手たちが将来、外国の国籍を選択したら、日本人選手として応援できなくなるのでしょうか。また、ノーベル賞の受賞者で外国に国籍を移した人を日本人受賞者と呼ぶのか、という議論もあります。このような議論が起こるのは、日本が原則、二重国籍を認めていないからです。しかし、ほかの先進国の多くは二重国籍を容認するように変わってきています。これはグローバリゼーションが進み、国境を越えた人の移動が当たり前になっていることの表れでもあります。

国籍や肌の色で区別しない多様な日本人像

一方、島国でほぼ単一民族の国家に近いことから、日本には国籍も1つがよいという考えが根強くあります。しかし国籍や、髪・肌の色の違いにこだわらず、多様な人を日本人だと考える風潮も、だんだんと広がっています。東京オリンピックなどでも、多様な日本人が活躍する場面を目にする機会も増えるでしょう。
これからはますます、多様な日本人が、いろいろな場所で活躍する動きが加速していくはずです。法律や制度、歴史などさまざまな視点を踏まえつつ、人々の考えや社会情勢の変化をとらえ、「日本人とは何か」「国家とは何か」について思考していくことが社会学に求められます。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

社会問題に「正解」はありません。さまざまな人がそれぞれの立場で考えた、それぞれの解答があるだけです。だからこそ、自分と違う考えがあることを知り、受け入れることが必要です。そのために、とにかくいろいろな情報を得て比較し、自分なりに考えることを意識してください。
新聞なら図書館などを利用して最低2紙は読んで、比較する習慣をつけましょう。特に社説を読み比べれば、社会にはさまざまな考え方があることに気づけます。


夢ナビ編集部監修