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健康福祉学部 看護学科
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がんの患者さんを支える「心のケア」をめざして
がんと告知されたときの、心理的な問題
「がんである」と告知された人は、さまざまな精神的ショックを受けることがあります。がんには、いまだに死のイメージがついて回るため、自分が死ぬのではないかという不安や恐怖に襲われます。ほかにも、「人生設計の修正を考えなければならないという悩み」「長くつらい治療」「治癒してからも再発の不安との闘い」など、多くの心理的な問題を抱えることになります。
「サポートグループ」の効果とは
特にがんの患者さんは、「自分の気持ちなど誰にもわかってもらえない」という孤独感、疎外感にさいなまれる場合があります。そうした際には、同じような境遇の患者さんが集まって話し合う「サポートグループ」が心のケアに役立つことがあります。「こんな思いをしているのは自分だけではない」という安心感や所属感を得ることができるのです。また、一方的に話を聞いてもらうだけでなく、自分も話を聞いてあげることで、人の役に立っているという充足感や自信を得ることもできます。
「ピアサポート」の重要性
2007年に施行された「がん対策基本法」は、がんという病気の克服だけではなく、患者さんとその家族の苦痛の軽減とQOL(生活の質)の向上を目的とし、居住地域にかかわらず、すべての国民がケアを受けられることをめざしています。そのため、施行以来、サポートグループなどによる心理社会的支援が充実し、以前は首都圏でしか開催されなかったような会も地方で開かれるようになり、患者さんにとって、参加しやすく、選択肢が広がるようになりました。
サポートグループのような、患者さん同士が助け合う形を「ピアサポート」と呼びます。ピアとは仲間のことです。同じ境遇の仲間同士で支え合うピアサポートという考え方は、こうした施策においても重要な意味を持っています。医療関係者によるサポートと連携してピアサポートを行っていくことが、より効果的な心のケア、そしてQOLの向上につながると考えられているのです。
慢性疾患の患者さんの「心」を救うための支援のあり方とは
慢性疾患の患者さんの心理的な問題
慢性疾患と呼ばれる、長期的な治療が必要な病気の患者さんには、特有の心の問題が生じることがあります。患者さんの健康や人生に対する不安を緩和したり取り除いたりするためには、看護師など専門家による心のケアも重要ですが、入院期間だけでなく長期にわたる治療の中では、家族をはじめ周りの人による支援が必要になるのです。その中でも、患者さん同士で話し合って、悩みを打ち明け合うことが重視されるようになってきています。
「サポートグループ」で助け合う
以前からある形としては、患者さん同士が自主的な活動としてグループを作り、コミュニケーションを図る「患者会」があります。こうしたグループの利点としては、病院や医師に関する情報交換の場ともなりますが、医療の専門家がいないため、誤った知識が伝わってしまうというリスクもあります。
2007年に「がん対策基本法」が施行されて以来、病院では、がんをはじめとする慢性疾患の患者さんの心のケアを目的とする「サポートグループ」を積極的に支援してきました。サポートグループとは、患者さん同士の語らいの場に、医療関係者がファシリテータ(進行役)として参加することで、よりスムーズで効果的な心のケアを行おうとするものです。ファシリテータは、看護師や臨床心理士、ソーシャルワーカーなどが務めることが多く、参加者の不安を和らげ、前向きになってもらうためには、さまざまな技術が必要とされます。
患者さん一人ひとりの心に寄り添って
ただし、サポートグループがすべての慢性疾患の患者さんに有効とは限りません。多くの情報を得たり、感情を吐き出したりすることで安心する人もいれば、情報を遮断し、一人でいることで心の平静を保つ人もいます。患者さん一人ひとりの性格を理解した上で参加をすすめることが大切です。「すべての人に必要というわけではないが、必要な人が求めればサポートが得られる」、そんな環境づくりが求められているのです。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
私は中高生の頃、バスケットボール部に所属し、部活動の中で心も体も限界を感じるというつらい体験をしました。そうした経験が、看護師になってから、患者さんを理解したり支えたりするために役に立っています。
ですから、あなたも今、何事にも全力で取り組んでください。そして期待通りの結果が得られなくても、挑戦すること、不本意な結果を受け止めることも人を理解するためによい経験になります。看護師をめざす人は、ぜひ、心と体の両方のつながりを理解し、患者さんと一緒に考えていくことのできる看護師になってほしいと思います。
夢ナビ編集部監修