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法学政治学研究科-倒産法と民法、その調整とは。非典型担保権を例に解説

倒産法の事情により、実体法を修正・変化させる余地とは

ニュースを見ていると「◯◯会社が倒産」「◯◯が倒産手続き」などという文字を見かけたり、耳にしたりすることがあると思います。「倒産」というのは、会社の経営が破綻してしまい、会社をたたむか再建するかの選択を迫られる状況のことです。そして、その後行われる倒産手続は、債務者が経済的に苦しい状況で、債務者に対して支払いができなくなった際、開始する手続です。その目的は、債務者のわずかな財産を債権者間で平等、公平に分配することにあります。もっとも、債権者間で平等、公平に分配するといっても、各債権者に同じ額の金銭を分配するわけではありません。債権者の有する債権の実体法上の性質や、債権額などが考慮されます。

このように、倒産法秩序は、原則、権利・義務の内容や発生・変更・消滅の条件などを定める法律である実体法(≒民法)を基準としています。一方、倒産手続が開始しているということは、先に述べた通り、債務者の残りわずかな財産を債権者全員で公平、平等に分配するという切羽詰まった状況に陥っているということを意味します。そうすると、実体法の秩序、論理を必ずしも尊重せず、倒産法特有の事情によって、実体法秩序を修正、変容させても良いのではないか、と考える余地があります。いわゆる倒産法的再構成と呼ばれる理論は、かかる修正、変容を肯定するものです。

法改正により起こり得る実体法・倒産法両秩序の課題

以上のような実体法の修正、変容が問題になる局面として、「非典型担保権の倒産手続における処遇」が挙げられます。

非典型担保権とは、我が国の民法に記載がある抵当権や質権などの典型な担保権として記載されていないものの、当事者の契約によってあたかも担保権を設定したのと同様の機能を果たすものをいいます。譲渡担保権や所有権留保がその一例です(ただし、これらは現在、法律の制定によって明文化されています)。これらは、少なくとも法形式上は、いずれも債権者側に物の所有権を帰属させるという形をとります。例えば、所有権留保は、売主が売買目的物(例えば、自動車)の代金を買主が完済するまで、当該物の所有権を売主側に残しておく(つまり、買主側に所有権を移転させない)というものです。そのため、かつては、買主について倒産手続が開始した場合、かかる法形式を重視して、売主を取戻権者として処遇すべきとの見解も主張されていました。なお、現在は担保として処遇すべきとの見解(別除権説)が通説です。

民法改正などの法改正では、詐害行為取消権と否認権など、実体法秩序と倒産法秩序とを可能な限り、一致させようという試みがなされました。しかしながら、かかる法改正によっても、実体法秩序と倒産法秩序との間にずれが生じ得る局面(相殺やファイナンスリース契約など)は存在しており、これらを解釈によってどのように解決すべきか、また、両秩序を一致させない場合、その正当化根拠は何なのかなど、難しい問題が存在しています。

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Profile

法学政治学研究科 法学政治学専攻
加藤 甲斐斗准教授
早稲田大学法学学術院博士課程満期退学