朝日新聞のウェブメディアである「朝日新聞Thinkキャンパス」に本学の健康福祉学部看護学科について特集した広告記事が掲載されました。
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東京都立医療技術短期大学時代から幾たびかの変遷を経て今に至る東京都立大学健康福祉学部看護学科。「看護とは『人』を看ること」という理念を貫きながら、「大都市東京の地域特性に対応した高度で専門的な看護実践能力と、国際的な視野を持つ看護職」の育成を目指している。学科長の習田明裕教授と二人の学生に話を伺った(写真は、心臓の鼓動に耳を澄まし、命を守る力を育む実習の様子。提供:東京都立大学)
◆最新の教育手法を通じて、広く探究できる教育体制を実現
東京都立大学は、2005年に都立の四つの大学(東京都立大学、東京都立科学技術大学、東京都立保健科学大学、東京都立短期大学)を再編・統合して生まれた「首都大学東京」が、2020年に名称変更して設立された。7学部、7研究科を擁する総合大学で、健康福祉学部看護学科のルーツは、1986年開学の都立医療技術短期大学にさかのぼる。健康福祉学部の学生は、1年次は他学部の学生と一緒に南大沢キャンパス(東京都八王子市)で学び、2~4年次は荒川キャンパス(東京都荒川区)で研鑽を積む。
東京都立大学に附属の大学病院はない。その代わり、東京都との密接な連携により、様々な医療・福祉機関、特に都立病院との間で臨地・臨床実習を行う機会が豊富に用意されている。
「それが都立大ならではの強みですね。急性期医療や三次救急、がん治療を担う成人看護学をはじめ、小児看護学、母性看護学、高齢者看護学、精神看護学、在宅看護学、公衆衛生看護学など、多彩な専門分野に特化した医療機関での学修を重ねることで、学生は多様で柔軟な実践力を身に付けることができます」と、看護学科学科長の習田明裕教授は言う(以下、同)。
習田明裕(しゅうだ・あきひろ)/健康福祉学部看護学科 学科長(人間健康科学研究科 看護科学域長)。博士(看護学)。専門分野は看護倫理・管理領域であり、研究テーマは、フィジカルアセスメント教育、身体拘束の倫理性、移植看護、特に院内コーディネーターの役割・機能、移植後のレシピエンのQOL、移植における看護職の倫理的対応モデルの構築など。大学での教育研究活動のかたわら、都立病院等における研究指導や、公開講座等の講師も務める
多職種連携医療の重要性が増している今日、健康福祉学部では看護学科、理学療法学科、作業療法学科、放射線学科の横断的な学びも、継続して取り組んできた特色の一つである。異なる専門分野の学生が患者のトータルケアを多角的に考える学びは、臨床現場で求められる協働力の育成に直結している。大学院・人間健康科学研究科も2020年に再編。健康科学・医学の諸課題に対して先端基礎科学的研究戦略でアプローチするフロンティアヘルスサイエンス学域と、運動と栄養の枠組みを超えた融合広領域的分野を扱うヘルスプロモーションサイエンス学域を加え、六つの学域を整備している。
フィジカルアセスメント(患者さんから発せられる様々な情報を基にして身体状況を査定する)教育や、実習に先立つOSCE(客観的臨床能力試験)、XR(現実と仮想世界を融合させた体験技術)を用いた先進的授業の導入、シミュレーション基盤型教育の充実など、最新の教育手法を通じて、広く探究できる教育体制を実現しているのも、健康福祉学部の特色と言える。
◆基本重視のカリキュラムを土台に、より高度な知識と技術を修得
カリキュラムには、看護基礎教育における四つの基本がしっかり反映されている。
一つ目は、人を看るという看護の本質を、自分の中に育むこと。そのために1年次から取り入れているのがリベラルアーツ教育である。
「1年次から履修する全学共通科目には基礎ゼミナールなどの必修科目も設けられていますが、教養科目等においては、理系・文系の科目をバランスよく履修するという要件を除けば、何を選択しても自由です。興味がある分野をさらに深めてもいいし、苦手な分野、未知の分野に挑戦してみるのもいい。そうした幅広い学びが自身の人間性を深め、病気や困難を抱えている人をより良く理解する、ということにつながると考えています」
二つ目は、国際社会と多文化を理解する素地を育むこと。日本に居住する外国人は年々増えているが、外国人の患者を看るには語学だけでなく、その人の文化背景、民族性、思想信条や宗教などを理解することが必要となる。そこで1年次と4年次に「国際看護学/医療人類学Ⅰ・Ⅱ」を設置。どちらも選択科目だが、多くの学生が授業を受けているという。また、世界でも有数の医療教育研究機関であるスウェーデンのカロリンスカ研究所への海外研修や、協定校への海外留学、相互交流も盛んで、看護学科からも毎年一定数が海外での学びを体験している。
三つ目は、臨床の判断力や実践力を体系的に育てること。医師の指示を待たずに、特定の高度な医療行為を行うことができる「特定看護師」、特定分野の実践に優れた「認定看護師」、倫理・教育・研究なども担う「専門看護師」、今後の台頭が期待される「診療看護師」など、看護の職域は専門性の多様化、高度化が進んでおり、それに対応するための基礎的能力を看護基礎教育の段階から着実に養うことが重要であるという。
「学生のみなさんには、そういった分野も視野に入れてキャリアを考えてもらいたいと考えています。そのために、『放射線看護学』『遺伝ゲノム看護学』『救急医学』『エンドオブライフケア論』など、より高度な専門科目も多数用意しています」
四つ目は、多職種と協働し、調整力を発揮できる能力を育むこと。多職種連携の重要性が高まる中、その要となる看護には調整能力が求められている。学際教育として、臨床における多職種間の高度な連携能力の育成を目的とした専門職学際教育科目が、本学部では1~4年次にわたり5科目配置されている。さらに「看護管理学」や「医療経済学」などの科目を通じて、多様な専門職と連携する際に必要となるマネジメント能力を育成していく。
「4年次の後期には『医療経済学』を学びます。医療経済学というのは、医療資源(人材、施設、医薬品など)の最適な使い方や、医療制度の設計、医療費の抑制など、医療の経済的な側面を対象とするもので、これを必修科目にしている大学は珍しいと思います。また、『看護管理学』については座学に加えて実習も必修科目として位置付けており、管理者の視点から病院や病棟の経営を俯瞰する学びも重視しています。私たちは看護という仕事の40年後、50年後を見つめてカリキュラムをつくっています。今日では看護部長が副院長を務める病院も出てきていますから、学生のみなさんには経済や経営の知識もぜひ身に付けてもらいたいと思っています」
写真上:循環を知る血圧測定、看護に生かす力 左下:コロナ禍でも欠かせない看護技術 (足浴)の学び 右下:子どもの健康を聴診から捉え、看護に生かす(写真提供:東京都立大学)
◆看護の仕事はアートとサイエンス。二つの力をバランスよく身に付ける
卒業後は、大多数が都内の医療機関に看護師として勤務している。都立病院や東京都保健医療公社の病院、国立専門病院、大学病院などだが、都内に限らず地域の中核的な病院に勤める者も多いという。また、都道府県や市区の保健師として勤務するケースや、大学院や助産学専攻科に進む者もいる。
看護学科が求める学生像について、習田学科長は「人間性と倫理性を重視する人、科学的探究心をもつ人、コミュニケーションと協働を大切にできる人、地域社会と国際社会への関心をもつ人」と言う。これらは全て、これからの看護師に期待される資質でもある。都立大の出身者は伝統的に「ポジティブで優しい」と、医療関係者の間で評価を得ており、そうした学生気質は入学希望者にとっても魅力的に感じることだろう。
また、荒川区にある唯一の大学として、学生たちは地域に根差した健康支援活動に熱心に取り組んでいる。区民が気軽に立ち寄って健康相談ができる「暮らしの保健室」や、産後すぐの乳児がいる家庭をサポートする「35(産後)サポネット in 荒川」などへのボランティア参加だ。学生にとっては区民と直接触れ合うことが、生活者の視点から健康管理や看護を考える貴重な機会となっている。
「看護の仕事はアート&サイエンスと言えます。アートとは想像力のこと。看護師は、患者さんの思いや価値観などを常に想像しながら、仕事と向き合わなくてはなりません。サイエンスは、患者さんが抱える病についての科学的な知見やアプローチの手法のこと。人を理解し、人を支え、社会に貢献する看護職を育てる学び舎として、私たちはこれからの看護を担うみなさんを心から歓迎します」
看護学科で学ぶ学生に聞きました――
◆「経済学の観点から看護学を深めてみたい」~看護学科4年次・藤井彩巴さん
実は、私ははじめから看護師になりたかったわけではありません。都立大に入る前、別の大学で2年間、経済学を学んでいました。でも途中で何か違うと思うようになり、高校時代の担任に相談に行ったのです。高校生のとき、私に「看護が向いているんじゃない?」と言ってくれた先生でした。当時は男子運動部のマネージャーで、人と関わり、元気づけることに喜びを感じている様子を見て、そう声をかけてくれたのです。「今の大学をやめて、看護の勉強をしようと思う」と話すと、先生は「ほらね」と言って笑いました。
富山県出身の私が都立大を志望したのは、総合大学で看護を学ぶことができる、ということが大きな理由でした。総合大学にはたくさんの学部があり、1年次に全学共通科目を勉強するのですが、多様な分野から自分が興味を持った科目を自由に選べる。これは大きな魅力でした。
経済学から看護学に方向転換したといっても、自分の中ではそこまで違和感はありませんでした。どちらもマネジメントに関連した学問で、その観点から看護学を深めてみたいと思っていたからです。でも2年次から専門教育科目の勉強が始まり、実習で医療の現場に出るようになると、いかに看護の知識が足りないかを思い知らされることになりました。
実習先で出会う看護師さんたちは、医療の知識を持ちながら、人に関わる仕事を心を込めてこなしていて、本当にすごいのです。自分もあんなふうになりたいと思い、看護職を目指すようになりました。病院での実習は、それほどインパクトがあったのです。
私は保健師の科目も履修していたので、全部で12、13カ所の病院や関連施設、区役所などで実習を行いました。都立大には附属病院はありませんが、その代わりに多様な医療施設での実習を通じて、様々な医療現場を実際に体験することができます。自分に合った就職先を探す上でこれはとても役に立ち、実習先の一つである都立病院に就職が決まりました。がん治療を専門とする病院で、「人に寄り添う看護」というコンセプトに共感し、お世話になることにしました。
将来的には、地域のみなさんが何年も入院生活や寝たきり生活を送らずに済むよう、また、少しでも長く元気で地域コミュニティの中で暮らすことができるよう、健康寿命を長くできるようなお手伝いができればと願っています。
◆「その人のことを考え、自分にできることを見つけて実施する」~看護学科4年次・酒井春樹さん
私は幼いころ、気管支炎で入院したことがあります。すごく辛くて、家族や看護師さんの支えがとても救いになりました。そんなこともあって、中学生になるころには看護師を志すようになっていました。せっかく大学に行くなら、いろいろな学部の人たちと関わって視野を広げたいと思い、都立大を受けることにしました。
入学して良かったことは、南大沢キャンパスで学ぶ1年間、念願の一人暮らしができたことです。自宅は都内にあるのですが、通学には往復で約4時間かかるため、一人暮らしを選びました。一人暮らしはすごく楽しかったです。食事も自炊していたので、受験のストレスで増えた体重が入学半年で15キロ落ち、体力もついてすごく健康になりました。
苦労したのは3年次の後期実習です。うまくいかないことが多くてずいぶん悩みましたが、精神看護学実習の先生が親身に相談に乗ってくださり、乗り切ることができました。それまでの自分は患者さんの病気や、薬、手術といった治療のことに頭がいっぱいで、患者さんの気持ちや人生について、考えが及んでいなかったと気付いたのです。
精神看護学実習で出会ったある患者さんは、将棋が大好きでした。そこで私も将棋を勉強し、その方と毎日将棋を指していました。「それは看護の仕事なの?」と思うかもしれません。しかし、病院という限られた環境の中で、患者さんが一番やりたいことが将棋であり、高齢の患者さんの脳を活性化し、集中力や思考力を高めるのに有効と考え、先生と話し合って一緒に将棋を指すことを決めたのです。その人のことを考え、自分にできることを見つけて実施するのであれば、それは全部ケアである――。悩み続けて見つけた私なりの答えは、これからも自分の看護のベースとして変わらないでしょう。
4年間で一番楽しかったのは、1年次の春休みに参加したカナダの短期語学留学です。初めて路面電車に乗ったときも、初めて買い物をしたときも、言葉が通じないことも含めて、留学中ずっとワクワクしっぱなしでした。未知のことにチャレンジする勇気を得た、貴重な経験でした。
看護学科の男子学生は、実際のところ多くはありません。私の学年では、自分を含めて4人。しかしその分、絆は強いです。男子が1人だけの学年もあるのですが、彼にはつい保護者目線になり、週に1度は一緒にご飯を食べるようにしています。今の看護の世界には、男性ならではの視点や発想が生かされる場面がたくさんあります。看護=女性の仕事という思い込みはせずに、男子にもどんどん看護学科に入ってきてもらいたいです。
卒業後は都内の小児科の専門病院に就職しますが、これからもいろいろなことに興味を持って視野を広げ、チャレンジをしていきたいと思っています。
※登場する人物の在籍年次や所属、カリキュラム内容等は全て取材時(2025年8月)のものです。
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取材・文/田中洋子 撮影/今村拓馬 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ
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