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東京都立大学が深く関わったX線分光撮像衛星 「XRISM (クリズム)」による銀河団の観測結果が、JAXAから発表されました!

理学部物理学科の宇宙理論グループと宇宙物理実験研究室が深く関わったX線分光撮像衛星 「XRISM (クリズム)」を用いた観測により、宇宙最大の天体、銀河団の中心部に高速で動く高温ガスの流れが存在することが明らかになりました。

私たちが暮らす宇宙は、物質同士の間に働く重力等の影響を受けて絶えず成長し続けています。星の集まりである「銀河」も、銀河の集まりである「銀河団」も暗黒物質(ダークマター)の重力によって形成されます。銀河団内では暗黒物質の強い重力に閉じ込められたガスが摂氏数千万度と非常に高温になりX線を放射しています。銀河団は衝突・合体を繰り返し現在も成長を続けていると考えられていますが、今回初めて、その直接的証拠を、XRISM により銀河団中心部を観測することで明らかにしました。銀河団の中心部はX線で非常に明るいため、そのX線放射によりエネルギーを放出してガスの温度が下がる(放射冷却現象)はずですが、温度が高く維持されていることが謎となっていました。この温度保持機構の解明の手がかりがガスの速度構造と考えられていましたが、観測装置の精度不足のため、これまで解明に至りませんでした。

今回、東京都立大学のメンバーを含むXRISM国際共同研究グループは、この高温ガスの速度構造を測定し、それが銀河団同士の衝突・合体の際に引き起こされる高温ガスの揺れるような動きに対応することを明らかにしました。そしてこの「揺れ」によって高温ガスが攪拌(かくはん)され、銀河団中心部の温度が適切に保たれていることがわかりました。

今回の高精度観測による高温ガスの速度に関する新事実の発見により、銀河団だけでなく宇宙に存在する様々な天体の形成と進化の理解が大きく前進するものと期待されます。

 

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▲図1:ケンタウルス座銀河団中心部の想像図。青みがかった色で高温ガスの流れを示している。白で示したのは銀河、赤茶色は低温のガスを示す。©JAXA

 

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▲図2:XRISMに搭載された軟X線分光装置(Resolve)で取得されたケンタウルス座銀河団中心部のスペクトル。背景はチャンドラX線天文衛星が取得した同じ領域のデータを画像化したもの。©JAXA

 

この研究の成果はイギリスの科学雑誌 Nature 2025年2月13日号に掲載されました。

この研究においては、本学の理学部物理学科 宇宙理論グループ 藤田 裕 教授が観測チームのリーダーとしてプロジェクトを遂行し、理学部物理学科 宇宙物理実験研究室 石崎欣尚 准教授 (Resolve Instrument PI)、江副祐一郎 教授、石川 久美 助教が、衛星の開発に深く携わっています。

詳細は JAXA のホームページをご覧ください。

 

論文情報

雑誌名:Nature
論文タイトル:The Bulk Motion of Gas in the Core of the Centaurus Galaxy Cluster
DOI:10.1038/s41586-024-08561-z

 

参考

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) プレスリリース・記者会見等 「ケンタウルス座銀河団中心部の高温ガスの流れと銀河団の形成過程」