理学部化学科の有機化学研究室が公益社団法人日本化学会を通じて国際化学オリンピックの日本代表高校生の指導を依頼され、同学科の教員・大学院生が学習支援(実験指導)を行いました。今年度の第56回国際化学オリンピック(2024年7月21日から30日、サウジアラビアで開催)で、実験指導にあたった洗足学園中学高等学校の高校3年生が銀メダルを受賞しました。
実験指導では、理学部化学科の下山大輔助教(有機化学研究室)と吉川聡一助教(無機化学研究室)が担当し、有機化学研究室の博士前期課程1年次の学生3名(桒原周子さん、川津美菜穂さん、佐藤俊輔さん)がアシスタントを担当しました。指導内容としては、学部4年次を対象とする化学実験を基に、主に有機化合物の合成・精製や金属イオンの定性分析に焦点を当てた強化訓練を5回にわたり行いました。この実習を通じて、化学実験の基本技術を身につけるだけでなく、実験の計画や結果の分析、実験ノートの作成方法など、実験全体を通じたスキルの習得を目的としました。また、有機化学研究室の独自のプラスチック分解に関する最先端の研究も体験していただきました。
国際化学オリンピックとは
国際化学オリンピックは1968年に東欧3ヵ国(ハンガリー、旧チェコスロバキア、ポーランド)が始めた高校生の学力試験から発展した、1年に1度開催される「化学」の国際大会です。大会は、通常、毎年7月に約10日間開かれ、 それぞれ5時間に及ぶ実験問題と筆記問題が出題され個人戦として競われます。成績優秀者には金メダル、銀メダル、銅メダルがそれぞれ贈られます。また、大会期間中は試験だけでなくExcursionと呼ばれるプログラムが用意されており、その内容はスポーツやゲームから開催国独自の文化を体験するものまで多岐に渡っている。これらのExcursionを通じて他国の参加者との交流を深めることになります。なお、日本は2003年に初参加、以来毎年4名の代表生徒が参加し好成績を収めています。
国際化学オリンピックに派遣される各国の代表生徒(4名以内)は、それぞれの国で開かれる何段階かの選考会の成績優秀者から選ばれています。日本では、「化学グランプリ」に参加し、上位の成績を挙げるか、日本化学会の支部からの推薦や化学グランプリ・オリンピック委員会の認定によって代表候補になることができます。毎年1月の筆記試験と3月に実施される選抜合宿で選考を行い、国際化学オリンピックの代表生徒を決定します。代表候補は、配布される参考書、過去の大会の問題および開催国からの準備問題集を使って、個々にトレーニングに取り組みます。代表に決定した後には、実験問題の訓練合宿を行うなど、大会に備えてさらに実際の試験を想定したレベルアップを目指します。代表候補者決定から国際化学オリンピックまでの期間を通して、代表候補および代表生徒は、居住地付近の大学・研究所の研究者から学習支援を受けることが出来ます。
担当教員のコメント
担当した高校生は化学の才能に秀でており、とても熱心に実験・学習活動に取り組みました。その結果、国際化学オリンピック銀メダルという素晴らしい成果を収めたことを心から嬉しく思います。この経験は同学科の教員や大学院生にとっても非常に有意義で、成長の機会となったものと思います。今後も彼らのさらなる飛躍を期待するとともに、このような貴重な機会を提供下さった日本化学会にも感謝申し上げます。
関連リンク
国際化学オリンピック-International Chemistry Olympiad- (csj.jp)