星やブラックホール等、宇宙の極限的な高エネルギー現象を探るX線分光撮像衛星 (XRISM) は、ミッション機器等の機能確認を実施し、初期機能確認運用から定常運用へと移行しました。
すでに2月27日付の記事で取り上げたとおり、本衛星にはこれまでにない精細なX線スペクトルを取得することができる軟X線分光装置 (Resolve)等が搭載されています。
この開発には、本学の理学部 物理学科 宇宙物理実験研究室 石崎欣尚 准教授 (Resolve Instrument PI)、江副祐一郎教授、石川 久美 助教の研究室が、初期の段階から開発と科学検討に、理学部物理学科 宇宙理論グループ 藤田 裕 教授が科学検討に深く携わっています。
都立大のグループは、XRISM の科学検討だけでなく、地上試験や運用に加えて、冷却系の一部となるSi デバイスを微細加工技術を用いてインハウスで製作する等、ハードウェアやソフトウェアの開発に大きく貢献してきました。
XRISM は、当初の目標を上回る分光性能など、優れた機器性能を軌道上で達成しており、今後、宇宙に関する様々な新発見がもたらされることが期待できます。
▲左から順に、藤田 裕 教授、江副祐一郎 教授、石崎欣尚 准教授
▲石川 久美 助教
▲Resolve の冷却系に用いる超流動ヘリウム流出阻止装置のエンジニアリングモデル※。
原子レベルにシャープなエッジを持つ微細加工された Si チップを流路に設置することで、冷却に用いる液体ヘリウムの寿命を延ばす役割を果たす。
住友重機械工業株式会社および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 (JAXA) (以下、JAXAという)と連携して開発を行い、Si チップは都立大が製作した。
▲Resolve の電源系に用いる Power Supply Unit (PSU) のエンジニアリングモデル※(下)とその地上試験に用いる電源切り替え装置(上左)および負荷装置(上右)。
PSU は衛星バスから供給された電源を安定で低雑音にして Resolve の信号処理装置および断熱消磁冷凍機の制御装置に供給する。
これにより優れた分光性能に貢献する役割を持つ。日本電気株式会社 (英文: NEC Corporation)および JAXA と連携して開発し、日本電気株式会社が設計・製作を、都立大と JAXA が検証を行った。
※基本設計に基づき製作し、機能・性能・環境試験に供することで設計の妥当性を確認し、次の詳細設計段階に移行するための設計を固めるためのデータを取得するためのモデル。部品などの品質と信頼性を除いて打上げ実機とほぼ同一仕様を持つ。 試験の内容によっていくつものモデルを製作することもある。
(JAXA 有人宇宙技術部門ホームページ「宇宙機の開発段階で製作される一般的なモデルの種類を教えてください」より抜粋)
詳細は JAXA のホームページをご覧ください。
参考
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) プレスリリース・記者会見等 「X線分光撮像衛星(XRISM)の定常運用移行および初期科学観測データ公開について」