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都市環境学部 宍戸哲也教授の研究開発課題がJST「戦略的創造研究推進事業 ALCA-Nextにおける2023年度新規研究開発課題(「資源循環」領域)」に採択されました!

 この度、都市環境学部 宍戸哲也教授の研究開発課題が国立研究開発法人科学技術振興機構(以下、JST)「戦略的創造研究ALCA-Nextにおける 2023年度新規研究開発課題(「資源循環」領域)」に採択されました。

事業趣旨

 本プログラムは、カーボンニュートラルへの貢献という出口を明確に見据えつつ、幅広い領域でのチャレンジングな提案を募り、科学技術パラダイムを大きく転換するゲームチェンジングテクノロジー創出を目指すものです。
 2023年度の提案募集は、2023年6月1日~7月12日に実施し、産官学各界より198件の応募がありました。
 募集締め切り後、プログラムオフィサー(PO)が領域アドバイザー(AD)らの協力を得ながら書類選考と面接選考を実施し、各技術領域において以下の通り採択を決定しました。

(JST HP「科学技術振興機構報第1651号『戦略的創造研究推進事業 ALCA-Nextにおける2023年度新規研究開発課題の決定について』」より抜粋)

研究の概要 

研究開発課題名:「CO2のみを炭素源とするカルボン酸合成用触媒の開発」

 地球規模の課題である気候変動問題の解決に向け2015年にパリ協定が採択されました。パリ協定では、今世紀後半に二酸化炭素(CO2)を含む温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡(カーボンニュートラル)を達成することを目標に設定し、この目標に向かって120以上の国と地域が取り組んでいます。2050年カーボンニュートラルの実現には、石油・天然ガスなどの化石資源に依存してきたエネルギー・産業構造の変換をはじめとする多面的・持続的な努力が必要です。また、CO2排出量の削減だけでなく、CO2の回収・固定化技術の開発が重要です。さらに、将来的には、CO2を資源として活用し循環させる体系の構築が必要不可欠です。

 我々の身の回りの物質の多くは、「炭素」原子を基本として構成されています。CO2分子は、その構造中に「炭素C」を有することから炭素源として利用することが可能です。例えば、CO2を水素(H2)と反応させると、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、メタノール(CH3OH)、ギ酸(HCCOH)など様々な有用な化合物に変換することができます。例えば、CH4は、私達が使っている都市ガスの主成分ですし、メタノールは、それ自身が燃料として利用できるだけでなく、様々な化合物を合成する原料としても利用できます。このような変換が可能となれば、将来的に化石資源に頼らずに、CO2を資源として活用し循環させる体系が構築でき、将来的にカーボンニュートラルに大きく貢献することが可能です。

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 しかし、CO2分子は極めて安定なため、CO2を炭素源として利用し、様々な物質に変換することは困難な課題です。この課題の解決には安定なCO2分子を効率的に活性化することができる高機能な“触媒”が不可欠です。

 本事業では、CO2のみを炭素源とするカルボン酸の合成技術の開発を目的とします。開発する技術は、(I) 低圧条件(1 MPa以下)におけるCO2水素化(還元)によるメタノール合成と(II) CO2のオレフィン・芳香族類への直接導入によるカルボン酸合成です。メタノールを原料とするオレフィン・芳香族合成は、既存のMTO (Methanol to Olefins),MTA(Methanol to Aromatics)プロセスを適用することができます。(I)、(II)のいずれについても新規高機能触媒の開発が不可欠なため、この開発に取り組みます。

採択にあたってのコメント

 本研究開発では、生産活動によって生じたCO2の資源化のために、CO2からのメタノール製造の低コスト化・省エネルギー化・CO2の直接導入によるアクリル酸を始めとする各種カルボン酸製造の高効率化を進めます。開発した技術をCO2の分離回収・水素の低コスト化技術と組み合わせることによって炭素源をCO2のみとするカルボン酸製造を実現し、CO2循環型のバルク製品製造プロセスの実現につなげることによってカーボンニュートラルへ貢献することを目指します。本研究課題を遂行し、極めて安定なCO2の活性化に新たなアプローチで迫るとともに、持続可能な低炭素社会の実現に繋げられるよう、成果を出していきたいと思います。

 
■関連リンク

JST「科学技術振興機構報第1651号『戦略的創造研究推進事業 ALCA-Nextにおける2023年度新規研究開発課題の決定について』」
JST「ALCA-Next」