大学教育センター伏木田稚子准教授が日本教育工学会2021年度秋季全国大会において、論文賞を受賞しました。
10月16日にオンラインにて、表彰式が行われました。
【論文賞】
■受賞論文(著者)
認識的準備活動を導入した統計の基礎を扱う反転授業の実践と評価(伏木田 稚子,大浦 弘樹, 吉川 遼)
■回
第35回
■受賞年月日
2021年10月16日
■受賞時大会
2021年秋季全国大会(オンライン)
■対象論文
第44巻
■論文の概要
本論文は、統計の基礎とデータ分析を扱う反転授業において、「認識的準備活動 (Epistemic Preparative Activities : EPA) 」という概念を土台に「統計ゲーム」を用い、多角的な評価を行ったところに特徴があります。
反転授業とは、今から20年ほど前にアメリカで誕生し、日本では2010年代以降、広く取り入れられるようになった授業方法です。オンラインでの事前学習では、自宅等で動画の視聴やテストへの解答に取り組み、対面での演習活動時には、個人やグループで知識定着および活用を促す実践的課題に挑みます。本研究では、この反転授業の前に、探索的な問題解決を要する準備活動を導入することで、学習者自らが何をどこまで知っているかを自覚し、動画視聴による知識習得の価値に気が付き、結果として能動的な学習が促されると考えました。
そして、認識的準備活動 (EPA) を実装したのが、第2・第3著者が設計・開発した「統計ゲーム」になります.具体的には、ストーリーを読み、解決すべき問題 (例. 飴の生産工場にて不具合のある製造ラインを発見せよ) を確認後、仮想データを収集・分析した結果に基づいて解決を図ります。統計ゲームを用いた認識的準備活動 (EPA) の要件としては、1) 講義動画や演習活動の内容と関係がある、2) 既有知識が不足している状態でも、問題解決のプロセスを経験できる、3) 真正性の高い文脈での探索を要する、の3点を論文中に明示しました。
実際の授業実践では、より効果的な認識的準備活動 (EPA) を提案するために、個人で統計ゲームに取り組む群 (個人EPA群) と、3~4名のグループで行う群 (協調EPA群) を用意し、学習プロセスや成果を複数の方法で段階的に比較しました。例えば、理解度テストの結果からは、両群で理解度が向上する中、協調EPA群の方が統計ゲーム単体の効果を得られやすいことが示されました。一方で、動画の視聴行動については、個人EPA群の方が途中で動画を止めて見返すなど、選択的に反復視聴している傾向が読み取れました。
つまり個人での認識的準備活動 (EPA) は、学習者自身の価値意識を引き出し、主体的に事前学習に取り組むことをより促す可能性があります。この点については、新しい知見を導出できるよう、引き続き検討を続けていきたいと思っています。
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※画像は、受賞スピーチで用いたプレゼンテーション資料の一部になります。
2020年9月12日には、同学会2020年秋季全国大会(オンライン)において、研究奨励賞を受賞しています。
日本教育工学会とは(日本教育工学会ウェブサイトから抜粋)
日本教育工学会 (Japan Society for Educational Technology) は、昭和59年 (1984年) に設立されました。本会の会員は、大学等の教育機関、小中高校、各種団体、企業等において、教育工学に関する研究、開発、実践を行っている者から構成されています。
日本教育工学会が扱っている「教育工学」は 、人文社会系と理工系、ならびに人間に関する学問分野を融合した学際的な学問です。教育工学の研究対象は、時代と共に変化してきています。
機関誌である日本教育工学会論文誌(年4回)と日本教育工学会誌[ショートレター特集](年1回)を日本教育工学雑誌として、また、英文論文誌(Educational Technology Research)を年1回発行し、会員に配布しています。優れた研究には論文賞が贈られます。