都市環境学部都市政策科学科の饗庭 伸教授が、著書「津波のあいだ、生きられた村」にて2021年日本建築学会著作賞を受賞しました。
著作賞は、日本建築学会が2013年に設置し、本会会員が執筆した建築にかかわる著書であって、学術・技術・芸術などの進歩発展あるいは建築文化の社会への普及啓発に寄与した優れた業績を受賞対象としています。2021年は42件の応募のうち、5件が受賞しました。
■受賞者のコメント
大変に栄誉ある賞をいただき、光栄に思っております。本書は東日本大震災のあとに支援と研究に取り組んだ岩手県大船渡市三陸町綾里地区での実践活動、研究活動の成果をまとめたもので、一緒に活動に取り組んだ7名の専門家による研究チームの成果です。私が担当したのは主に空間の計画や歴史についてであり、この10年間に私の研究室に所属した学生の多くが何らかの形で関わってくれました。週末に片道5時間かけて現地に行ってワークショップや調査を行い、その成果を東京に持って帰ってきて授業の合間にまとめ、また週末に出かけていく、夏休みや冬休みは現地で合宿をする・・という積み重ねの成果が結晶したのがこの書籍です。現在は新型コロナウイルスで往来がままなりませんが、落ち着いたらこの本を片手に現地を訪れていただければ幸いです。
■講評(日本建築学会著作賞HP抜粋)
本著は、明治時代以降 3 度の津波を経験した大船渡市綾里地区を対象に、その津波と津波のあいだに空間と社会の何が変化し、何を継承したか、その復興の記録とともに、被害を逓減させてきた理由を探ろうとしたものである。
総じて、単に国や行政の政策とその後の復興を記述するのではなく、むしろ地域と住民のなかで醸成されてきた震災前後の空間と社会の記録を整理し、そこから再び「あいだ」をいかに過ごすべきかを示す実に価値のある著書として評価できる。
津波や復興に関する本は多いが、ここまでの深度をもつ成果は少ない。実際の復興事業の計画にあっても、各地域の過去の災害対応の記録は有益であるにもかかわらず、まとまって残されているものは多くない。つまり、本書は現在進行形である東日本大震災での対応について、住民の避難行動、地域社会の対応、行政の復興への取り組みなど、さまざまな視点から「記録」として残すことを試みているのである。未だその評価への期が熟しているとは言えない東日本大震災後の動きについて、著者たちの評価というフィルタにかけることを最小限にし、後世に津波被害に直面した人たちが、その後の復興を考える際の資料として読み、評価する余地を残している点も高く評価できる。
■日本建築学会とは(一般社団法人日本建築学会HPより引用)
一般社団法人日本建築学会は、会員相互の協力によって、建築に関する学術・技術・芸術の進歩発達をはかることを目的とする学術団体です。1886年(明治19年)に創立されて以来今日にいたるまで,わが国建築界においてつねに主導的な役割をはたしてきました。
現在、会員は3万5千名余にのぼり、会員の所属は研究教育機関、総合建設業、設計事務所をはじめ、官公庁、公社公団、建築材料・機器メーカー、コンサルタント、学生など多岐にわたっています。
■関連リンク
・都市環境学部都市政策科学科 饗庭 伸教授
・2021年日本建築学会各賞受賞者
・一般社団法人日本建築学会