人文社会学部人間社会学科 河野正治准教授の著書『権威と礼節―現代ミクロネシアにおける位階称号と身分階層秩序の民族誌』が第19回日本オセアニア学会賞を受賞しました。
本書の舞台であるミクロネシア連邦ポーンペイ島は、20世紀を通した諸外国からの統治により近代国家の体裁が整えられつつも、最高首長という伝統的権威者を頂点とする身分階層秩序が今も保たれる社会として知られています。
本書は、延べ25か月間のフィールドワークの成果をもとに、首長が村人や親族のみならず、政治家やキリスト教聖職者も含めた多様な行為者と共在する場についての詳細な描写を重ね、現代ミクロネシアにおいて伝統的権威体制がいかに存立しているのかを明らかにする民族誌です。
この研究の特徴は、権威と階層が表現される場にはつねに異質な人物評価が潜在しているという気づきから、さまざまな現場において秩序と規範が再構成される可変的なプロセスを描き、コミュニケーション理論を援用した独自の分析をしている点にあります。
人文社会学部人間社会学科 河野正治准教授(写真右)
9月4日に、日本オセアニア学会・会長の柄木田康之教授(宇都宮大学、写真左)が来学し、賞状の授与が行われました。
『権威と礼節:現代ミクロネシアにおける位階称号と身分階層秩序の民族誌』(風響社)
受賞理由(日本オセアニア学会HPから抜粋)
河野正治著『権威と礼節:現代ミクロネシアにおける位階称号と身分階層秩序の民族誌』(単著、単行本、風響社)は、ミクロネシア地域のポーンペイ島社会における首長制の現在に関して、人類学的な調査にもとづいた記述と分析を展開する力作である。ポスト植民地時代を生きる島民たちが、伝統的権威体制と近代国家体制の関係をいかに作りだすのか、首長国と近代国家の諸水準において身分階層秩序を生きる実践知をいかに形成しつつあるのかに関して、説得力のある議論を提示することに成功している。このことは相互行為を中心にして厚みのある記述と考察が重ねられた成果であり、著者の入念な観察と思考の産物である。現代オセアニアの民族誌として、人類学のみならず関連諸分野に広く紹介されるべき著作である。
日本オセアニア学会賞
日本オセアニア学会賞は、オセアニア地域における人間、文化、社会、環境などの研究の振興を目的として、オセアニア地域研究に関し、前年度及び前々年度において最も優秀な著書又は論文を公にした満40歳未満の個人を表彰するものです。
関連リンク
教員情報:人文社会学部人間社会学科 河野正治准教授
日本オセアニア学会HP:http://www.jsos.net/index.html