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人文社会学部 澤井充生助教が第41回「発展途上国研究奨励賞」を受賞しました

人文社会学部 人間社会学科社会人類学教室 澤井充生助教の著書『現代中国における「イスラーム復興」の民族誌――変貌するジャマーアの伝統秩序と民族自治』がジェトロ・アジア経済学研究所第41回「発展途上国研究奨励賞」を受賞しました。

澤井助教近影
人文社会学部人間社会学科 澤井充生助教

本書は、文化大革命終了後の改革開放期に中国各地で発生した「イスラーム復興」の実態を、中国西北におけるフィールドワークにもとづき、中国少数民族の一つである回族のジャマーア(モスクを中心としたコミュニティ)から検討した民族誌です。
著者は、中国共産党が社会主義建設や政治運動を展開したことにより一度は消滅したジャマーアを、回族が土着の結合原理によってどのように再構築してきたのかを共同体理論と関連付けながら仔細に分析し、また、「イスラーム復興」の背景には中国共産党が宗教管理機構を確立し、宗教統制を強化した事実にも留意しつつ、ジャマーアが中国共産党・行政機関・宗教団体との間に共棲関係を形成せざるえない状況とその意味を自治の側面から考察しました。

今次受賞では、本書がムスリム共同体秩序の変遷を活写する豊かな民族誌であるとともに、中国の少数民族政策・イスラーム政策論としても読むことができる点、さらに、検討されている先行研究は、共同体論争、中国社会の結合原理、「民族区域自治」、及び中国ムスリム民族誌に関わるものであり、本書の意義が多岐に及んでいる点、また、著者が困難な調査によって中国ムスリムの貴重な情報を集め、考察したことが高く評価されました。

発展途上国研究奨励賞 表彰状
発展途上国研究奨励賞 表彰状

澤井助教著書書影
『現代中国における「イスラーム復興」の民族誌――変貌するジャマーアの伝統秩序と民族自治』(明石書店、2018年)

発展途上国研究奨励賞(アジア経済研究所HPから抜粋)

「発展途上国研究奨励賞」は、途上国・新興国に関する社会科学およびその周辺分野の調査研究水準の向上と研究奨励に資することを目的として、ジェトロ・アジア経済研究所が昭和55(1980)年度に創設したもので、今回で41回目となります。
ジェトロ・アジア経済研究所は、2018年10月~2019年9月の1年間に公刊された図書、論文など発展途上国・新興国の経済、社会などの諸問題を調査、分析した著作37点の中から、2点を選定しました。37点は大学や出版社等から推薦されたもので、田中明彦政策研究大学院大学学長を委員長とする選考委員会が選考しました。

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