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ミニ講義 ― 首都大学東京の「学び」を体験!
川東 正幸 准教授

川東 正幸 准教授
H30再編後の所属
都市環境学部 地理環境学科
川東 正幸 准教授 【教員紹介】
キーワード:
環境, 土壌学, 食料生産

文明の発展あるところに土壌学あり! 土が人類に果たす役割とは?

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食料生産に適する土壌とは

土壌学はこれまで農学の中で扱われてきました。それは、土が岩石の崩れたものや堆積物から自然にできるものであるにもかかわらず、人類にとっては食料生産に利用するという側面が大きいためです。
作物を育てるのに向いている黒くてふかふかした土は、栄養がたくさん含まれているだけでなく、それをほどよく保持します。粘土や砂の粒が適度な空間をつくるために、水と空気を含み、あまたの生物が暮らせるのです。地球上で、固体と液体と気体の割合がほぼ1:1:1になる場所は土しかありません。土は重要な生命の源であり、非常に貴重な環境でもあります。

良い土があるところから、土はなくなっていく

作物生産に有効な土地があると、人はその近くに住むようになるため、文明は肥沃で、なおかつ水をコントロールしやすい土地で興ります。したがって大河川の流域で都市化が始まり、文明の発展にともなって田畑を耕すことをやめ、地盤を堅硬にしたり、起伏を削ったりしてしまいます。都市化で増大する人口を養うためには食料生産力を上げる必要があるのに、一番肥沃な土地から都市になっていくのです。日本は河川が多い国なので、河川が上流から運んできてくれた肥沃な土が平野部に広がっているのですが、一番都市化の進んだ土地だと、すでに地面の約75%が舗装で覆われてしまっています。

土から川、そして海へ、すべては巡る

こうして肥沃な土地がなくなると、都市の外側の、肥沃ではない土地で食料の生産を行うようになり、生産量を増やすために大量の肥料を使い始めます。しかし作物は作物にとってタイミングの良い時にしか栄養を吸収しないため、余った肥料が川に流れて海に運ばれます。1970年代に日本の海で赤潮が頻繁に発生したのは、この肥料の影響もあります。
肥料を作るには非常に大きなエネルギーが必要ですから、私たちはエネルギーを使って、かつ環境を汚染してきたのです。近年はこのような問題があることから、環境化学の分野でも土壌学が扱われるようになっています。

人が自然を「つくる」とはどういうことなのか?

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人工林が貴重なフィールド実験場に

実は、街をつくる際に削られた土砂が日本国内だけで毎年約3億トンも出ています。その内の半分は地面をならすのに使われ、残りの半分は埋め立てに使われます。例えば東京では東京湾に持っていき、その際にゴミも混ぜてゴミ処理も一緒に行ってきました。地盤がゆるいため、かつて埋立地には倉庫としての利用がほとんどでしたが、30年ほど前から人工林が設けられるようになりました。土は千年単位の長い時間をかけてできてきますが、ここでは埋め立てた時をスタートとして土における変化を森林化に合わせて観察できる格好の実験場になっており、調査が進められています。

土を調べて初めてわかる自然との大きな違い

調査により、意外な事実が判明しました。降水量が多い日本では、浸透する水によって塩基類が洗い流されるため土は酸性を示します。しかし、東京湾内の人工林ではコンクリートやアスファルトなど、石灰を含むがれきが土壌に混じっているためにアルカリ性を示し、カルシウムが土の保持容量以上に存在する場所もありました。この特異な土壌環境において、日本で一般的に見られる木を植えて人工林にしているため、植生が土壌環境に合わないのかもしれません。また埋め立てる際に重機で地面を押し固めているので、植物の根は下に伸びず、曲がって横に広がってしまっています。植物にとっては、化学的にも物理的にも極めて異常な環境になっていました。

人が生態系を育める日は来るのか

作物の生産や管理に関しては、有史以前から知識が伝承され続けていますが、作物以外の植物と生育環境に関してはまだまだ研究途上であり、ましてや人工的に作った環境と生物の関係に関する研究は始まったばかりです。人間のライフサイクルである数十年単位で観察して森になれば「良い結果」ととらえられるかもしれませんが、人工林の実態は地球の育む自然とは全く異なる環境です。自然はどのような答えを返してくるのか、土壌学を含む自然科学の見地から今後も観察と研究を続けることが大切です。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

歴史の勉強と同じで、世代を経れば経るほど人は覚えなくてはいけないこと、できなくてはいけないことがどんどん増えていきます。高校生のあなたは人口の逆ピラミッドを支える世代になるので、試練も多いかもしれません。
しかし、英語が話せるとかコンピュータが扱えるとか、そういう社会からのいろいろな要求に疲れることなく、「自らがやりたいからやる」という楽しみのようなものを常に持つと良いと思います。多様な環境、多様な生態系、多様な人類の一員として、あなただからこそできることをこれから見つけていってください。


夢ナビ編集部監修

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