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ミニ講義 ― 東京都立大学の「学び」を体験!
石橋 裕 准教授

石橋 裕 准教授
H30再編後の所属
健康福祉学部 作業療法学科
石橋 裕 准教授 【教員紹介】
キーワード:
高齢者, 作業療法, 心理学

化粧の出来栄えは気持ちを左右し、行動にも影響する

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利き手と非利き手で眉を描いてみると

あなたは化粧をしたことがありますか。「可愛く、きれいに見られたい」という気持ちから化粧を始める人もいるでしょう。特に女性は、大人になるにつれ、それが日常的な行為になり、外出する前には必ず化粧をするという人が多くなります。普段から化粧をしている人に対する、こんな実験があります。
まず、普段どおりに利き手で眉を描いてもらいます。そして、アンケートに答えた後にいったん化粧を落としてから、次に非利き手で眉を描いてもらい、同じようにアンケートに答えます。第三者にはどちらの顔もほとんど変わりなく見えますが、本人には心理的な変化が起こります。アンケートを分析すると、非利き手で眉を描いたときは対外的な自信や積極性が落ちているのがわかります。つまり、けがや病気で体が不自由になったり、高齢化にともない不器用になったりすると、化粧をすることに対する自信をなくし、ほかの行動までもが消極的になってしまう可能性があるのです。

「できない」を「できる」に変換する

ここで、化粧の中でも目を華やかにすることを考えてみましょう。アイライン、アイシャドウ、マスカラなどが代表的です。目の際にペンシルで線を引くアイラインは目をはっきり見せるために効果的ですが、難易度が高く、手が震えるとうまく描けません。ですから、病気や高齢になると描けなくなってしまうことがあります。しかし、アイラインから比較的簡単なアイシャドウに変えることで目を華やかに見せる効果が感じられるかもしれません。大切なことは、これまでとやり方は違っても「できない」を「できる」に変換することなのです。

「些細なこと」こそできるように

些細なことができずに嫌な思いをしたことがありませんか。作業療法士は、日常生活の中で安全に楽に行動できるよう治療や支援を行う国家資格の専門職です。作業療法のイメージとして「手工芸」を挙げる人が多いですが、実際は少し違います。作業療法士は、そのような些細なことこそできるように支援する専門職なのです。

少しの工夫が日常生活を変える~「できないこと」を「できる」ように~

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高齢者の「できなくなった」を解明する

高齢になり筋力や認知機能が低下すると、日常生活が今まで通り行えなくなることがあります。若年者や健常者は、環境の変化に対応してやり方を変えることができますが、高齢者はその変化に合わせにくいものです。
例えば、掃除機がかけられなくなるということが高齢者によく見られます。そんな場合の掃除機の状態を調査してみると、使用するたびに本体とホースをばらして収納していたり、ホースを短く折り畳んだまま使っていたりと、手間や負担のかかる使い方だったことがわかりました。

課題の難易度や環境を変えることでできること

毎日の食事の準備ができなくなることもあります。調査してみると、ある人は毎日4品を調理していました。この場合、例えば品数を4品から2品に減らすことで、食事の準備という課題の難易度を下げられます。こういった日常生活で生じる困難を改善するための指導方法を見つける学問として、「日常生活活動学」があります。人が持っている問題そのものは変えずに、道具や環境を変えることで改善できるようにする方法を分析します。
作業療法士は日常生活活動学を用い、高齢者や、身体または精神に障がいのある人に対して、日常生活能力や社会生活能力の回復を支援します。直接、手助けをするのは簡単ですが、少しの工夫により自分でできるようになることが、自立を助け、健康の増進につながります。

一般社会の日常も分析する

日常生活活動学は高齢者などの問題だけではなく、一般社会にも応用できます。例えば、会社の中で人事を検討する場合、その人の特性にあった役割に配置することは、本人にとっても仕事の効率においてもよいことです。日常生活活動学の考え方から、会社の日常で起こっている状況を分析することで、誰がどのような部署になるのがベストなのか、最も効果的な配置を考えることができます。日常生活活動学は当たり前に行っていることにも疑問を持ち、日常の些細(ささい)なことを科学する学問なのです。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

大学の勉強が高校までの勉強と最も違うのは、自分で疑問点に気づき、解決方法を開発していくところです。特に、疑問に気づく能力はあらゆる学問に共通する必須事項であり、作業療法学では、掃除機の形、料理の品数、生活習慣に疑問を感じられるかということです。このような疑問の発見にはセンスが必要で、大学ではそのセンスを磨くことが求められます。疑問点が与えられず、自分で見つけなければならないことは、非常につらいかもしれません。ですから、ぜひ高校時代から、何事にも「なぜだろう」と思う習慣をつけてください。


夢ナビ編集部監修

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