Profile

経歴:お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科人間発達科学専攻心理学領域にて博士号を取得、2025年5月に都立大に着任。
専門:自閉スペクトラム症の特性の一つである「感覚・知覚」のメカニズム、特に「雑音下での言葉の聞き取りづらさ」の研究。
──先生の研究内容を教えてください。
私の研究テーマは、発達障害の一つである自閉スペクトラム症の方の感覚・知覚特性です。自閉スペクトラム症の方には、感覚刺激に対して敏感だったり、逆に鈍感だったりする特性が見られます。同じ感覚情報を受け取っても、脳での処理の仕方が異なるためです。
特に私が専門としているのは聴覚、中でも「ノイズ環境下での言葉の聞き取り」です。例えば、カフェのようなざわざわした場所で会話を聞き取ることが難しいという方が、自閉スペクトラム症の方には多くいます。なぜ聞き取りが難しいのか、その難しさが日常生活にどう影響するのか。こうした問いに、実験的手法を用いてアプローチしています。
──「知のみやこプロジェクト」に応募した理由を教えてください。
最初に目にしたのはSNSでした。気になっていたところ、当時の指導教員からも勧められ、応募を決めました。
以前から、博士課程を終えた後は研究に専念できるポストに就きたいと考えていました。しかし、博士取得直後に応募できるポストの多くは、授業や会議、入試業務などに時間を取られ、研究時間の確保は難しいと聞きます。本プロジェクトはそうした業務は原則なく、自分のテーマを自分の裁量で進められます。研究に専念したい私にとっては、まさに理想的な環境でした。
──実際に着任してみて、都立大の研究環境をどのように感じていますか?
都立大には基礎心理学・臨床心理学の両方で複数の先生がいらっしゃるので、学内だけでも共同研究が可能です。もちろん、学外の先生との共同研究も自由にできるので、研究の幅はどんどん広がっているのを感じています。
加えて、研究費の面も充実しています。イベントや学会への参加を資金面で諦める必要がなくなり、国内外の研究者との出会いの場にも、積極的に参加できています。学会での交流は新しい共同研究につながることも多いので、こうした機会を逃さずに済むのはうれしいですね。大学からの支援に加え、外部資金も獲得しやすい環境なので、着任したばかりでも資金面を心配することなく研究に集中できています。
──先生が着任してから、約半年が経ちました。現在はどのような働き方をしていますか。
ありがたいことに、日々研究に専念できています。加えて、週一回は児童精神科で心理士として臨床活動もしています。
臨床の現場で当事者の方と接することは、研究の問いを立てる上で欠かせません。「この困りごとはなぜ起きるのか」という現場での気付きが、研究に活きることもあります。研究専念のポストでありながら、こうした臨床との両立ができるのは、自分のやりたいことを自由に追求できる環境だからこそだと実感しています。
──今後、どのような研究課題に取り組みたいと考えていますか。
任期の5年間で明らかにしたいのは、「ノイズ環境下での聞き取りの難しさが生じるメカニズム」です。脳のどの処理段階でつまずいているのか、それが日常生活のほかの困難とどうつながっているのかを解明したいと考えています。
将来的には、研究結果を実際の支援につなげられるようにしていきたいです。背景のメカニズムがわかれば、どこに介入すれば困難を軽減できるか、道筋が見えてくるはず。さらに長期的には、聴覚だけでなく視覚や触覚など、様々な感覚特性の研究にも広げていきたいと考えています。
──知のみやこプロジェクトでは、1年間の海外研究を支援しています。海外で取り組んでみたいことはありますか?
行き先はまだ検討中ですが、感覚・知覚研究が盛んな国々で研究したいと考えています。言葉の聞き取りには言語ごとの特性があり、日本語だけを対象にしていては見えないこともあります。海外だからこそできる、日本語とほかの言語を比較した研究にも取り組んでみたいですね。
──最後に、「知のみやこプロジェクト」への応募を検討している方へメッセージをお願いします。
博士を取得したばかりの方にとって、これほど研究に専念できるポストはなかなかありません。経済的支援、研究の自由度、海外研究の機会と、手厚いサポートがそろっているからこそ、大きく成長できる5年間になると思います。気になっている方は、ぜひ応募してみてください。





