東京都立大学に入学を果たされた全ての皆さんに、心よりの‘おめでとう’を申し上げます。言うまでもなく、皆さんお一人おひとりが、この大学の発展のための重要なパートナーです。全ての皆さんを、本学の大切な構成員として心より歓迎します。
学長としての私が考える東京都立大学の特徴を要約すると、以下のようになります。
その一つは本学が、東京都が設置する唯一の公立、中規模・総合大学であるということです。中規模ということは、大学規模において大きすぎず、小さすぎず、親密な人間関係のなかで教育研究が行われていることを意味します。この大学は、学生と教員、学生同士、教員同士の距離が近く、丁寧で温かい雰囲気の中で教育研究がなされている大学です。
又、本学は基本的な学問分野を包含する総合大学であることから、本学の基礎・教養教育課程は全学部の協力による幅広い科目群によって成り立っています。この大学は、専門を越えた豊富なメニューの中で深く広く学ぶことができる大学です。
そして本学の最も好ましい特徴は、各教員の国際的にみても高いレベルの研究力が、質の高い大学教育へと有効に循環していることにあると考えます。この大学は、高い水準の学術研究と質の高い大学教育が両輪となり、ここで育った学生が優れた資質と高い倫理観を持ったリーダーとして、社会の発展に貢献する大学です。
すなわち、東京都立大学は学ぶ機会と成長する機会に満ちた大学です。
こうしたことを踏まえた上で、入学を果たされた皆さんへ学長として贈るメッセージは、‘能動的に学ぼう!’ということです。
いうまでもなく大学は知の拠点です。しかし、漫然とそこに存在しているだけでは、皆さんの将来にとって有効な何ものも授けることはできません。能動的、積極的に未知の世界に挑戦していく姿勢こそが皆さんを成長させます。急速に進化していく先端科学研究は、既存の知識や技術を急速に陳腐化させます。そうしたこれからの社会の中で真に必要とされるのは、「本物の考える力」「未知の領域を探究的に解き明かしていく力」です。与えられた設問に正解を導く受験勉強とは違い、大学では「問いを発する力」が貴重です。こうした学力は、能動的な学びの姿勢によって獲得できるものです。本学はそうした学生諸君の真の意味での学びの活動を全力で支えます。
残念ながら、新型コロナウイルス感染症の拡大による現下の厳しい状況に鑑み、全員が集まっての入学式挙行を中止し、そして新学期の開始を5月とすることにしましたが、現在全ての教職員が一丸となって、皆さんが安心して学んでいただける環境を整えるべく、全力を尽くして準備をしています。明るい陽光と若葉に溢れたキャンパスで、皆さんとお会いできる日をとても楽しみにしています。それまでの間、健康に留意して過ごしていただくことを心よりお願いします。
2020年4月1日 東京都立大学学長 上野淳