理工学系化学コースの稲垣昭子准教授が研究代表を務める共同研究グループが発表した、新しい光触媒についての研究成果が、2月16日付の日経産業新聞で紹介されました。
この新触媒は、太陽光の主成分である可視光に鋭敏に応答し、高分子共重合体の物性を自在に設計できるようになるものです。スチレンとビニルエーテル類という高分子のモノマー(単量体)を、新触媒の入った反応液に入れて光をあてると、スチレンの重合反応が著しく促進され、光のONとOFFを切り替えることによって、主鎖中のスチレン含有量を精密に制御できることが分かりました。
従来の技術では、反応を促進させるために複雑な操作が必要でしたが、この新技術では、可視光の照射時間や、光のオンオフ切り替え回数を変えることによって、多様な共重合体を簡単に合成することができるようになります。この光反応は蛍光灯や、太陽の光を直接用いることもでき、光エネルギーを触媒の活性化に効果的に利用しています。
この研究成果は、例えばやわらかい部分と固い部分を交互に導入できるようになるなど、既存の方法では合成できないような、新しい機能を持つ高分子共重合体の設計への応用が期待されます。
※本研究は、物質デバイス領域共同研究拠点(5研究所参画するネットワーク型の共同研究拠点)における東京工業大学穐田教授との共同研究であり、稲垣准教授が研究代表として首都大学で展開した研究です。研究成果は、Organometallics, 2018, 37, 359-366に掲載されました。
■掲載紙
『日経産業新聞』 2018年2月16日付朝刊
■論文全文
https://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/acs.organomet.7b00783