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システムデザイン学部 機械システム工学科
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高温に強い材料で、新たなものづくりに挑戦

高温に耐えうる超合金の開発
複数の金属元素を組み合わせた合金で、高温に強いものを「超合金」と呼びます。特にニッケルをベースにアルミニウム、チタンなどの元素を添加して作った合金は、800℃ぐらいまでは高温になるほど強度が上がります。この特性を利用し作られているのが、飛行機のジェットエンジンです。エンジンは高温で燃焼させるほど熱効率が向上するため、1000℃に耐えうる超合金、次いで1050℃、1100℃と、より高温域をターゲットに開発されてきました。高温化は、レアメタルの一種であるレニウムという元素の添加が寄与しました。
見つかった意外な落とし穴とは
しかしタービンブレード材料の高温化の結果、タービンブレード内部が熱疲労を起こし、破損しやすくなる可能性があることがわかりました。熱疲労低下の原因は、添加したレニウムでした。レニウムを添加すると確かに高温には強くなるのですが、飛行機の離陸時、タービンブレード内部がさらされやすい700~800℃の中温度域の熱疲労強度が落ちることが判明したのです。現在では稀少で高価なレニウムに代わる添加元素が模索される一方、セラミックスをベースにした複合材料(CMC:セラミックス・マトリックス・コンポジット)でエンジン耐熱部品が作れないかという研究が行われています。
ガスタービンで自然再生エネルギーの補完を
近年、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーが注目を集めていますが、実は安定供給できないという弱点を抱えています。無風のときは風車が回りませんし、夜間や曇天のときは太陽光発電の出力が落ちます。自然再生エネルギーの補完としては、始動時間が短いガスタービンが向いています。瞬間的に出力を上げることは飛行機の離着陸に通じるところもあるので、飛行機のエンジンのノウハウを生かしたガスタービンの開発が進められているのです。
3Dプリンタは、ものづくりの革命児となるか?

3Dプリンタを使うメリットとは
オバマ大統領が「3Dプリンタを使った新しいものづくりをする」と宣言した2013年以来、世界中のさまざまな分野で3Dプリンタによるものづくりが活性化しています。デジタルデータから直接ものづくりができるのが3Dプリンタの長所で、多品種少量生産のものに向いています。レーシングカーの部品や歯科のインプラント治療などでいち早く使われ始めています。特に生体材料はオーダーメイドに近いところがあるので、医療分野ではさらに利用が進むでしょう。
不可能を可能にする
3Dプリンタで、飛行機のジェットエンジンを作る研究も行われています。現在エンジンに使われているタービンディスクは、刀や板金と同じように金属を加熱し打ち伸ばす「鍛造」によって作られています。鍛造で作ると強度は上がりますが、組織を均一化させるのが難しく、中心部分の10%ほどしか使えません。3Dプリンタで作ればほぼ無駄がでないので材料の節約になります。また積層して作りますから、切削刃物が届かず作れなかった複雑な形状、例えば中が空冷空洞になったタービンブレード部品も作れます。従来の加工より軽量で高効率な部品が作れるのです。
理想は「割れない」金属
3Dプリンタで作った部品の特性の一部は、まだ既存の部品に及びません。既存の部品との違いは高温下における「靭性(粘り強さ)」です。そもそも金属は叩くと伸びる性質があり、だからこそ自動車のボディが凹んだときも、加熱して直すことができます。あまり伸びがなく靱性が小さい材料はこうしたことができず、またひび割れや破損の原因になります。例えば、陶器は金属より硬いですが、落とせば割れてしまいます。逆にゴムは軟らかいものの、落としても割れません。極端に言えば、ゴムのような伸びと陶器の硬さを兼ね備えた金属が理想的なのです。靭性を得るために、3Dプリンタでの加工プロセスを工夫しなければならないのか、3Dプリント後の処理で何とかできるかなどが「材料加工・組織制御工学」の研究テーマとなっています。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
私は、高校生のとき、特にやりたいことや就きたい職業もありませんでした。しかし、大学で研究に携わってみて「研究はおもしろい」と思いました。今は、やりたいこと、就きたい仕事が見つからなくとも、どの分野に進んでも自分の道は見つかる可能性があるということです。一目ぼれしてしまうような人との出会いがあるように、思いがけない学問や仕事と出会える可能性は誰にでもあると思います。大切なのはその出会いに気づく「感受性」と、チャンスが来たときにそれを生かすことができる、基礎的な力を身につけておくことだと思います。
夢ナビ編集部監修