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システムデザイン学部 電子情報システム工学科
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「MEMS(メムス)」と「ガリウムナイトライド」が開く未来世界
身の回りで活躍しているMEMSの技術
MEMS(メムス)とは「マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ(微小電気機械システム)」の略です。耳慣れない単語ですが、現代では圧力センサー、加速度センサー、光スイッチなどとして、私たちの身の回りで大活躍しています。
例えば、スマートフォンには、横にすると画面も横になる機能があります。また、端末を振ると反応するゲーム機もあります。自動車のエアーバッグのように、衝撃に反応する機器もあります。これらには、MEMSの技術が微細な動きをとらえるセンサーとして応用されています。
また、ロボット・ハンドが円柱状の物体をつかもうとするときには、物体をつかむ圧力とともに、物体が滑る「剪断力(せんだんりょく)」を同時に検知する「触覚センサー」が必要です。この触覚センサーにもMEMSの技術が応用されているのです。
次世代半導体材料とMEMSの組み合わせ
MEMSの材料の主流はシリコンです。しかし、次世代半導体材料として注目されている「ガリウムナイトライド」を使う研究が進んでいます。ガリウムナイトライドは、「ワイドギャップ半導体」と呼ばれるものの1つで、600度以上の超高温下でも機能し、高い電圧にも耐えるというメリットを持っています。ですから、ガリウムナイトライドとMEMSの技術を組み合わせれば、過酷な環境下でも機能するセンサーを作ることが可能になるはずです。
人間が立ち入れない環境下での技術革新
2011年3月の東日本大震災では、原子力発電所が被災し、放射線が放出されて、人間が立ち入ることができないエリアが生まれました。その一帯がどうなっているのかを調べることができ、さらにその場所で緻密な作業を進めることができるロボットがあったら、被害を減らせる可能性は大きくなります。ガリウムナイトライドとMEMSの組み合わせは、そうした新しい可能性を飛躍的に広げることができる研究分野なのです。
次世代の半導体材料「ガリウムナイトライド」の謎に挑む
「ガリウムナイトライド」って知っていますか?
現代の生活をさまざまな分野で支えているものに半導体があります。半導体の材料として、よく知られているのはシリコンですが、現在、大変注目されている半導体材料に「ガリウムナイトライド(=窒化ガリウム、GaN)」があります。
ガリウムナイトライドは、2014年に日本人研究者3人がノーベル物理学賞を受賞した青色発光ダイオード(青色LED)の材料としても有名です。
過酷な環境下でも使用可能な半導体の魅力
ガリウムナイトライドは、光デバイスとしてだけでなく、無線通信やパワーエレクトロニクス分野の電子デバイスとして広く活用が期待されている物質です。それはガリウムナイトライドが「ワイドギャップ半導体」であることに関係があります。ワイドギャップとは「結合に寄与した電子が動けない場所(価電子帯)と電子が動ける場所(伝導帯)の間隔(バンドギャップ)が大きいこと」を指します。バンドギャップが大きい半導体は、高温下でも機能し、高い電圧にも耐えられる性質があります。ガリウムナイトライドは600度の超高温の環境下でも安定していることがわかっています。ですから、ワイドギャップ半導体は、過酷な高温環境下でも動作する電子機器などの実現に、大いに期待がかかる半導体といえます。
「欠陥」の正体をつきとめ、物性評価の方法を探る
しかし、ガリウムナイトライドについては、まだわかっていないことがたくさんあります。例えば、ガリウムナイトライドの結晶を作製するときや、できた結晶を加工する段階などで、どうしても欠陥ができてしまうのです。どの段階でどんな欠陥が生じるのか、また、どんな欠陥がどう機能に影響するのかといったことについても、あまりわかっていません。これらを明らかにすることが、ガリウムナイトライドを含むⅢ族窒化物半導体に関する基礎研究です。性質が明らかになることで、より機能性や信頼性の高い半導体デバイスの実現につなげることができるのです。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
「必要は発明の母」と言われますが、現代の生活は非常に便利になりすぎて、「こういうものがあったらいいのに」という「必要」が見えにくくなっているかもしれません。でも、それは、あることが当たり前と思い、物事に興味を持って積極的に関わっていないからかもしれません。
ですから、あなたには高校時代に、どんなことでもいいので、よく知ろうとしてほしいのです。そうすることで、「こうだったらいいのに」という「必要」が見つかり、それについて考えたり行動したりして、より興味を深めていってください。
夢ナビ編集部監修