キービジュアル

東京都立大学の「学び」を体験! ― 武市 昇

Profile
武市 昇 教授
  【教員紹介】

システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科

キーワード
航空・宇宙, 航空交通管理, 宇宙エレベーター

宇宙エレベータに乗って宇宙から地球を眺めよう

イメージ1
宇宙まで昇れるエレベータ

地上から宇宙まで昇れる「宇宙エレベータ」の理論は、100年以上前に提唱され、SFでたびたび扱われてきました。地球の自転と同じ周期で地球のまわりを回っている静止衛星は、地上からは常に同じ位置にあるように見えます。そこで、静止軌道上に打ち上げた物体から地上にケーブルを伸ばして、地上と宇宙をつなげば容易に宇宙エレベータを建設することができるものと考えられていました。しかし、厳密に検証してみると、それだけでは実現不可能であることがわかりました。

縦に長いと重力は大きくなる

通常の静止衛星は、作用する重力と遠心力がつり合うため地上にも落ちず宇宙にも飛び出しません。したがって宇宙エレベータも、遠心力と重力がつり合うよう地球側と宇宙側に同時にケーブルを伸ばせば、質量中心を静止軌道に保ちながら容易に建設できるものと考えられてきました。しかし、重力は地球の中心から距離の二乗に反比例して作用します。これを厳密に考慮すると、地球側のケーブルにより大きな重力が作用し遠心力とつり合わなくなり、地上まで伸ばす前に墜落してしまうことがわかりました。これに対し、常に推進力を与えて少しずつ上昇させることにより、つり合いを保って静止軌道を維持しながら地上までケーブルを伸展できることを明らかにしました。

宇宙から地球を見る

宇宙エレベータが完成すれば、特殊な訓練も高額な宇宙旅行代金も必要なく、今よりずっと手軽に宇宙空間まで行けるようになります。ロケットを使わずに宇宙空間にさまざまな資材を運ぶこともできるようになりますし、太陽系のほかの惑星にまで容易に宇宙船を飛ばすこともできます。何より、地表から高度約36,000kmの静止軌道から、暗闇の中に青く輝く小さな地球を自分の目で鑑賞することができます。
宇宙エレベータの建設では、ケーブルの素材が最大の課題でしたが、近年のカーボンナノチューブの発見により、その実現の可能性が高まってきました。誰もが宇宙から地球を眺めることのできる時代が近づいているのです。

飛行機のための「環境づくり」

イメージ1
飛行機の性能が上がっても

飛行機が開発されて約100年の間に、その技術は飛躍的に発達しました。軽くて丈夫な材料や燃費のよいエンジン、自動操縦装置など、現在もどんどん進歩しています。しかし、飛行機の安全で円滑な運航のための航空管制は、何十年もの間ほとんど変わっていません。現在の航空管制は、飛行機の優れた性能を生かし切れていないのです。

変わらない交通ルール

衝突の危険を避けるために、飛行機は航空管制官の指示に従って飛んでいます。航空管制官は飛行機同士が常に一定以上の距離を保つよう、高度や速度、方向を判断して飛行機に指示します。おかげで私たちは安心して飛行機に乗ることができます。ところが、たくさんの飛行機が飛ぶようになった今日になっても同じやり方が受け継がれています。そのため現在では多くの飛行機が遠回りをさせられ、慢性的な遅延が生じ、二酸化炭素排出や騒音など環境負荷の増加の一因となっています。これからさらに多くの飛行機が飛ぶようになります。そして今、多くの飛行機がその本来の性能を発揮しながら安全に飛行できるようにする「環境づくり」が求められています。

四次元航法と空の高速道路

新しい航法として、緯度・経度・高度の三次元に時間を加えた四次元のパラメータで飛行を管理する「四次元航法」が検討されています。現在は飛行機間の「距離の間隔」を保つことで安全を確保していますが、四次元航法により「時間の間隔」を空けることによっても安全を確保できます。これにより、たくさんの飛行機を安全を損なうことなく効率よく飛ばすことができるようになります。 また、飛行機同士が互いの位置を確認して、航空管制官の指示を必要とせずに安全な間隔を保つ技術の開発も進んでいます。これを活用すると「フローコリドー」という、空中の高速道路とも呼べるような経路の運航も可能になります。飛行機の膨大な運航データを分析すると、どこにフローコリドーを設ければよいか明らかにできます。 これから、飛行機の運航のあり方が大きく変わっていくことでしょう。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

何かのきっかけで、将来の目標が見つかる人が多いと思います。そのきっかけは、身近な人のアドバイスだったり、歴史上の人物や出来事だったり、ドラマや映画、小説、マンガだったりするかもしれません。ですがそれに興味を持って目標にしようと決心したとき、そこには何かしらの純粋な気持ちがあるはずです。その初心を忘れずにずっと大切にしてください。大学に入ってからは、勉強を頑張るのは当然のことですが、勉強以外の経験もたくさん積みましょう。部活やサークル、アルバイトなど勉強以外に打ち込めることをぜひ見つけてください。


夢ナビ編集部監修