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理学部 数理科学科
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コーヒーカップとドーナツは同じ形? 「トポロジー」で考える世界
最も素朴で本質的な側面を考える研究
「トポロジー」は日本語で「位相幾何学」と呼ばれ、幾何学の中でも、最も素朴で本質的な側面を研究する学問と言われています。トポロジーの歴史は比較的新しく、18世紀の数学者レオンハルト・オイラーの頃にさかのぼります。オイラーは、川の中の2つの島と両岸との間にかかる7つの橋を1回ずつ渡って回ることはできるかどうかを考察した「ケーニヒスベルクの橋」という問題や、穴の開いていない多面体において「頂点の数-辺の数+面の数=2」という「オイラーの多面体定理」が成り立つことなどを発見したことで知られています。
ぐにゃぐにゃ変形しても変わらない性質とは?
トポロジーとは、簡単に言うと、「図形をぐにゃぐにゃ変形しても変わらない性質」を追究するものだと言えるでしょう。正四面体も、正六面体も、球も、本質的に同じものだとトポロジーでは考えます。一方、例えばビーチボールと浮き輪は、穴の有無によって本質的に異なるものだととらえます。ビーチボールをどんなにぐにゃぐにゃ変形しても、穴の開いた浮き輪のような形にはできないからです。
トポロジーの考え方の例としてよく挙げられるのが、取っ手のついたコーヒーカップとドーナツです。一見、似て非なるものに思えますが、取っ手の部分に穴のあるコーヒーカップの形は、連続的に変形していけばドーナツの形にすることができます。トポロジーの考え方では、コーヒーカップとドーナツは「同じもの」なのです。
今後もユニークな発見が期待される分野
トポロジーの世界では、ひもの結び目を数学的にとらえて研究する「結び目理論」など、さまざまな分野の研究が世界各国で続けられています。物理学・生命科学など多様な分野との関わりの中で、新しい研究テーマが次々と生まれているこれらの分野では、これからもユニークな発見が数多くなされていくことでしょう。
折り紙を通じて、数学の世界に触れてみよう
日本で独特の発展を遂げた折り紙文化
子どもの頃に、一枚の紙を折って飛行機や鶴などを作って遊んだ経験のある人は、きっと多いことでしょう。折り紙は、その正確な起源は定かではありませんが、特に日本において独特の発展を遂げた伝統的な文化です。海外でも、「origami」という単語でその意味が通じるほど、日本の折り紙の文化は世界中に認知されています。
折り紙を通じて数学の世界に触れてみる
一枚の紙を折ることでさまざまな形を生み出す折り紙は、その幾何学的な性質から、数学の研究対象になっています。例えば、一枚の紙の中で好きな場所に点を打ち、一つの辺がその点に重なるようにいろいろな角度から何度も折っていくと、その折り目は放物線を描きます。また、円形に切った紙に任意の場所に点を打ち、その点に紙の端が重なるようにいろいろな角度から折っていくと、その折り目はだ円を描きます。それはいったいなぜなのかを考えていくことで、数学の世界へと自然につながっていきます。
自分自身で紙を折りながら考えていくことで数学を実体験し、その一端を理解することができるのです。
さまざまな楽しみ方と可能性を秘めた折り紙
折り紙の研究で博士号を取った阿南工業高等専門学校の川崎敏和教授は、「川崎ローズ」と呼ばれる美しい折り紙のバラの考案者として知られています。また、藤本修三氏は「フジモト・キューブ」と呼ばれる洗練された立方体の折り紙の考案者です。こうした折り紙の研究者によって名付けられた作品は、日本だけでなく、世界各国でも注目されています。
身近にある一枚の紙でさまざまな楽しみ方をすることができて、数学の研究に通じる部分も持ち合わせている折り紙には、私たちのまだ知らない可能性が秘められているのかもしれません。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
トポロジーとは、夏の海辺で見かけるビーチボールと浮き輪を間違える子供が世の中にいない事実の背景にある、図形をぐにゃぐにゃ変形させても変わらない本質的な性質を研究する幾何学です。数学の世界では比較的若い研究分野ですが、非常に活気のある分野で、新しい研究テーマも次々に生まれており、日本人の研究者も多数活躍しています。あなたもぜひ、トポロジーの世界を体験してみてください。
夢ナビ編集部監修