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東京都立大学の「学び」を体験! ― 山添 誠司

Profile
山添 誠司 教授
  【教員紹介】

理学部 化学科

キーワード
X線・レントゲン,放射光,熱

さまざまな分野で新しい材料を作り出す! クラスターに集まる期待

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クラスターって何?

金属原子が数個から数十個、100個以下で集まったものを「金属クラスター」といい、「バルク(塊)」を小さくしてできる原子が数百個以上集まった「ナノ粒子」と「原子」間がクラスターです。一方、「金属酸化物クラスター」は、金属原子の周りに酸素が6原子ほどくっついて1つの金属酸化物ユニットとなったものが数個~数十個ほど集まったものになります。

研究が盛んになってきた金属クラスター

近年、1原子の違いで構造、光学特性、反応性が著しく変化する金属クラスターの研究が盛んになってきています。その背景には、真空中という極めて理想的な空間でしか生成することができなかった金属クラスターを、フラスコの中で合成できるようになったことがあります。有機分子を保護配位子として用いることで、金や銀を中心にサイズや組成を原子レベルで緻密に制御した金属クラスターの合成が可能になったことで、バルクの金属からは想像できない新しい構造、物性が発見されています。まだまだ基礎研究の段階ですが、金属クラスターの特異な電気物性、光学特性、反応性が明らかになれば、新しいデバイスや触媒の開発が期待できます。

金属酸化物クラスターの新展開

金属酸化物クラスターはポリ酸として知られており、1800年代から研究が進められています。濃硫酸に匹敵する“超強酸性”を示す材料としても知られており、酸触媒をはじめ、光触媒、磁性体、構造体の開発が進められています。近年、欠損構造をもつ金属酸化物クラスターが塩基触媒作用を示すことが報告されました。これは欠損構造により局所的に塩基点が発現したことに起因します。最近では金属酸化物クラスターの電荷そのものを制御することで欠損構造を作ることなく、塩基触媒作用を示す材料が報告されました。このクラスターは二酸化炭素変換反応に活性を示すことがわかっており、塩基触媒作用を利用した新しい環境調和型の触媒反応系の開発が期待できます。

大型放射光施設を利用した先端研究

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大型放射光施設とは?

放射光とは、光とほぼ同じ速度まで加速した電子を磁石によって曲げた際に発生する光(電磁波)のことです。兵庫県の播磨にあるSPring-8や茨城県の筑波にあるPFに代表される放射光を生み出すことができるところを大型放射光施設と呼んでいます。大型放射光施設では、実験室で発生させることができるX線(電磁波の一種)よりも高エネルギーで高密度のX線を利用することができるため、ナノテクノロジーやバイオテクノロジーなど幅広い分野の研究に利用されています。

金属クラスターの特異な熱物性

省スペース化、コスト削減のため、ナノサイズ(1ミリの100万分の1の大きさ)にまで小さくするナノ化がデバイスや機能性材料の分野で進んでいます。ナノ化する際に課題となるのが「熱ゆらぎ」です。私たちが普段、何も感じない室温であっても、原子レベルでは熱による影響を受けています。最近の研究で、大型放射光施設を利用したX線吸収分光法により、金属クラスター(ある金属原子が数個から十数個集まった状態)の熱物性が原子レベルで解明され、熱物性の一つである原子間結合の硬さに階層性があることがわかりました。これまで計算化学からしか予想されてこなかった金属クラスターの熱物性を実験から実証できつつあり、今後の研究が期待できます。

「その場観察」が切り開く新材料

これまでとらえられなかった現象や特性を理解するには、測定・解析技術の進歩も不可欠です。例えば、放射光を使った時間分解測定という方法があります。これは、ミリ秒以下の細かいスケールで、触媒や材料の特性が発現している間の状態や構造の変化を観察し、機能が発現する仕組みを明らかにしようというものです。熱物性や触媒反応を調べるにはX線吸収分光法などを使いますが、加えて、「時分割オペランド分光」という分析法により、機能のより精密な解析も行われています。このような分析により、新しい材料を作るアイデアが得られるはずです。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

私が研究している金属や金属酸化物クラスターの分野では、有機化学、無機化学、物理化学、分析化学など化学全般の知識はもちろんのこと、物理や数学、プログラミングといった幅広い知識が役立ちます。ですので何事にも幅広く興味を持ってください。異分野の知識が新しい研究を生み出すと思っています。
当研究室では化学全般の知識を学ぶことができ、多様な分野で活躍できる人材の育成を心がけています。例えば化学メーカーでの研究者や、触媒・デバイスの開発者への道が考えられます。


夢ナビ編集部監修