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経済経営学部 経済経営学科
経済学コース・経営学コース
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あなたは知らぬ間に、足跡を残している

個別対応は理想だけど
「旬のタケノコが入荷したよ!」と教えてくれる八百屋のおじさんや、家を訪ねてじっくり話を聞き、最適な商品を勧めてくれる保険のおばさんなど、彼らのような売り方・伝え方は、価値観が多様化した現在、とても有効な方法ですが、対応できる人数や地域に限度があります。それを打開したのがITの発達とマーケティングです。
例えばTSUTAYAのTカードなら、あなたが利用したコンビニやファミリーレストラン、カラオケ店がTSUTAYAと提携していれば、ポイントがたまります。このカードを提示するという行動の裏では、どのようなことが起きているのでしょう。
情報が商売繁盛のカギ
カードを提示した時お店には、あなたの性別や年齢、住所、いつどこで何をいくつ買ったのか、といったあなたの行動記録が瞬時に送られています。これらの情報をもとに、提携企業は涙ぐましい努力をして、厳しい市場で生き残りをかけた闘いを繰り広げているのです。
ITの恩恵を受けたマーケティング手法は、Amazonなどのネットショップにも見ることができます。「この商品を買った人はこんな商品も買っています」といった表示を見たことがありませんか? あれは、買う商品の特徴や購買履歴が似ている人は同じようなものを好むという考え方に基づき行われているのです。
購買行為だけでなく、検索行為にも反映されています。Googleには、あなたが過去に検索したワードに基づいて、検索結果を並べ替える機能があります。検索するという行動にも、実は一人ひとりに合ったスタイルが提案・提供されているのです。
耳をすましてみれば
あなたの行動は、コンビニの品ぞろえや新商品に影響を与えているかもしれません。ファミリーレストランのチラシがポストに投函されていた場合、配る場所や枚数の決め手となった情報には、あなたのものも含まれているかもしれません。
知らず知らずの間に私たちは自分の行動を公開し、無数の「いかがですか?」という提案に囲まれて暮らしているのです。
行動を科学すると、ストーリーが見えてくる

「誰が」が重要
人の行動を数値化し、分析すると、対象となる人々の求めていることが見えてきます。それを知る手掛かりはPOSデータです。これは「ポイント・オブ・セールス(販売時点)」の略で、レジを通して、いつ・どこで・何が・いくらで・どれだけ売れたか、といったデータが集計されていきます。これに「どんな人が」という要素が加わると、より効果的なマーケティングが行えるのですが、ひと昔前まで個人を特定する技術は確立されていませんでした。ID付きPOSシステムが誕生し、その膨大なデータを瞬時に処理できるようになったITの進化が、マーケティングの可能性を広げたのです。
特典の見返りに情報を
ID付きPOSデータとは顧客会員カードから得られる情報です。クレジットカードやデパートのメンバーズカード、会員証やポイントカードも個人データの発信源となります。こうしたカードは、割引やポイントサービスが受けられるため消費者にとって魅力的ですが、小売店側にとっても顧客の詳細な購買行動を把握できるところがメリットになるのです。複雑な数式や三次元座標などを用いてデータを分析すると、ストーリーが浮かび上がってきます。
科学の力で鷲づかみ
ファッションにこだわりを持つ男性が、百貨店のフロアを自由に行き来しながら、さまざまなブランドのアイテムを手にコーディネートを楽しむ、これは、解析の結果見えてきたニーズ=ストーリーの一例です。これを形にした例を、百貨店の伊勢丹に見ることができます。2003年、新宿にリニューアルオープンした紳士服の専門館は、ブランドごとの間仕切りをなくしたことで、開放的な空間が好評です。
一人暮らしの女性が、会社帰りにレンタルビデオ店とコンビニに寄り、買ってきたアイスを食べながら、借りてきた海外ドラマを見てくつろぐ、という行動=ストーリーから、レンタルするとアイスの割引券がもらえるキャンペーンが生まれることもあります。マーケティング・サイエンスとは、科学で顧客の行動をつかむ手法なのです。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
私はマーケティング・サイエンスを研究しています。これは文字通り、「マーケティングを科学する」学問です。具体的には、消費者がどういった購買行動をとっているのか、目に見えるよう数値化し、分析しています。例えば、あなたの身近にあるコンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、どのような経営戦略がとられているのでしょうか。こうしたことを計量的な切り口で見てみると、これまで気がつかなかったことが見えてきます。興味があれば、ぜひ学んでみてください。
夢ナビ編集部監修