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経済経営学部 経済経営学科
経済学コース・経営学コース
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行きつけのスーパーは、どこですか?
いわゆる身分制度とは違う階級社会
階級社会というと、インドのカーストや江戸時代の士農工商のような身分制度を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、階級社会における階級は身分制度の身分とは違い、法律で定められているわけではなく、もちろん強制力もありません。近代国家でありながら、イギリスは階級社会であると言われます。イギリス国民の中に依然として存在する階級意識について見ていきましょう。
レジ袋を見るだけでわかる!?
イギリスの階級は大まかに上流階級、中流階級、労働者階級に分かれています。中でも中流階級と言われる層は、産業革命を機に誕生した新しい階級です。医師や弁護士などの専門家、投資家、企業家などが属しています。階級の違いはさまざまな面で現れますが、わかりやすく身近なのは、買い物をする場所です。イギリスでは階級によって、普段利用するスーパーマーケットが違います。行きつけの店を知るだけで、その人の属している階級がわかってしまうのです。ほかに、住んでいる場所、話す言葉、通っている学校、読む新聞、着ている服、乗っている車など、こうしたことも、階級を判断する要素となります。
白黒つけるのは難しい
とはいえ、利用する場所やものが法律で定められているわけではありません。中流階級の人が、高級スーパーを利用しても構いませんし、さまざまなハンデを乗り越え、労働者階級の人が首相になった例もあります。しかし多くの人には、自分のポジションを受け入れ、その範囲内で暮らす傾向が見受けられます。階級は不自由なものですが、価値観が似ている人々が集うことで、居心地の良さをもたらしている側面もあるのです。このことからも、階級社会を良し悪しだけで判断することはとても困難です。わかっていることは、多かれ少なかれ、人が集えばそこに階級意識が生まれるということです。それをふまえ、背景を探ることから、人間社会を探究する学問、「社会科学」は始まります。
クラブ活動のルーツは産業革命にあり
新しい時代の幕が開くとき
中世ヨーロッパでは、一握りの人々が土地を支配し、農民の多くはさまざまな束縛を受け、経済的な負担を強いられていました。しかし、18世紀から19世紀にかけてその様相がガラリと変わります。「産業革命」の到来です。農業中心の社会から工業中心の社会へと移り変わり、資本主義経済が発展しました。資本主義の基本は、「自由」です。誰でも、好きな職業に就いたり、新たに商売を始めるチャンスが訪れたのです。このように、それまで当たり前のようにあったものが大きく変化したり、なくなったりすることがあります。変化するとこれまでのやり方では解決できない問題もたくさん出てきます。そのようなとき、人がよりどころにするものが信頼や絆です。
信頼や絆を形に
産業革命の起きたイギリスを中心に、世界的に急増し、変革を後押ししたのが「クラブ」でした。クラブとは、人々が目的をもって集い、規約を作り、その規約に基づいて運営していく組織のことで、言わば信頼や絆を形にしたものです。産業革命期には、政治や経済を語り合うクラブのほか、スポーツや芸術、科学など、共通の趣味・志向を持つ仲間の集まりが数多く誕生し、新しい社会の仕組みや価値観などについて活発に議論する場として機能していました。さらに、ひとりで複数のクラブに所属することが普通だったため、人と人との絆が、さまざまな枠を超えて張り巡らされ、新しい時代に対応するものの考え方や、多数の意見をまとめるノウハウなどを蓄積していったのです。
歴史から見えてくるもの
人が集まると一見いいことばかりのように思えます。困ったときに助け合ったり、個人の力では難しい大きな問題を協力して解決したりなどメリットがある一方、クラブの歴史をひもとくと、人を排除したり純粋な志を見失ったりと、ネガティブな側面も見えてきます。個人や地域の繋がりが薄れつつあると言われる現代社会において、どうすれば人と人とがうまく結び付いていけるのか、信頼や絆の探究は続きます。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
人は、さまざまな理由から集まり共同体や組織を作ります。人が集うことには互いに協力し合えるメリットがある半面、常に「排除」しようとする動きがともないます。また、共同体や組織の拡大は腐敗にもつながり、人間関係のしがらみが問題となることもあります。こうしたネガティブなパワーは、国や時代、目的によっても変化し、社会に大きな影響を及ぼすこともあるのです。
複雑多様な人間社会を探る切り口をたくさん持っているのが大学というフィールドです。あなたもぜひ東京都立大学に来て、多岐にわたる学問の扉を開いてみましょう。
夢ナビ編集部監修