キービジュアル

東京都立大学の「学び」を体験! ― 荒戸 寛樹

Profile
荒戸 寛樹 准教授
  【教員紹介】

経済経営学部 経済経営学科
経済学コース・経営学コース

キーワード
株式投資, 市場, 経済学

経済から情報を受け取り、情報が経済を動かす

イメージ1
リンゴの価値はどうやって決まる?

経済と情報は密接に関わっています。値段はものに対する価値の情報を集約したものだと考えられます。例えば、リンゴの価値は人によって違います。もし100個のリンゴが100円ですべて売れたとしたら、人々の思うリンゴの価値は100円以上だと言えます。半分売れ残ったら、買わなかった人はリンゴの価値を100円以下だと思っているのです。
これは株式の価値でも同じです。ある企業が将来どれくらいの利益を上げるかを予想することで、株式の価値は決まります。市場での価値を見ると、今その企業に対して人々がどのような予想をしているかがわかるのです。

美人投票のようなもの

 逆に情報が経済を動かすこともあります。ニュースなどの情報に合わせて、株価や為替レートは動きます。経済学者のケインズは「株式投資は美人投票のようなものだ」と言いました。単に自分の好みの人に投票するのではなく、最も多く得票した人に投票した者が賞金をもらえるとした場合、投票者の思惑の読み合いが始まります。もし批評家が「この人が美人」と言ったとすると、みんなは批評家の意見通りの人に投票するかもしれないと考えます。株式投資でも、単に企業の利益を予想して株価が決まるだけではなく、どの株が人気なのかという情報により、株価が高くなるという動きが出てくるのです。

情報が企業を倒産に追い込む

業績が順調な企業でも、悪いうわさが流れたことで株価が下がり、資金繰りが滞って倒産に追い込まれることがあります。ですから情報が悪用されないように、株式の取引では法律で「インサイダー取引」と「風説の流布」が規制されています。インサイダー取引は自分だけが特権的に持っている情報を利用する取引、風説の流布は根拠のないうわさを流すことです。
不要な株価の動きがマクロ経済にも影響を与える可能性があります。情報が株価に与える影響について、また、そうなってもマクロ経済が動揺しないようにするにはどうしたらいいかといったことが研究されています。

経済の大きな枠組みを考える「マクロ経済学」

イメージ2
ミクロ経済学とマクロ経済学

経済学は大きく「ミクロ経済学」と「マクロ経済学」に分けられます。「ミクロ経済学」は1つの市場について考える学問です。例えばリンゴの値段はどうやって決まるのか、どれくらいの量が取引されるか、リンゴに税金がかかると何が起こるのかなどを分析します。
それに対し、「マクロ経済学」は国全体といった大きな枠組みで経済を考えます。人が生活するには商品の市場だけでなく、さまざまな市場が必要です。賃金を得るための労働の市場も、お金の貸し借りをする市場もあります。基本的にそれらは全部つながっているため、1つの市場で何か起きると、ほかの市場にも影響を与えます。そういった動きが国全体の経済を決めるのです。

キャッチアップが経済成長を促す

 日本の場合、高度経済成長期から経済成長のスピードは徐々に遅くなってきています。例えば、海外ではキャッシュレス化が急速に進んでいますが、まだ日本ではあまり普及していません。また、ペーパーレスなどの仕事の効率化も遅れていると言われています。途上国が先進国の持っている技術を使い急速な経済成長を果たすことをキャッチアップと呼びますが、日本もこうした部でキャッチアップは必要であり、そうすることで、日本の経済によい刺激を与え、経済成長が促されると考えられます。

2つの分野を融合して経済を分析

「経済成長論」は国の豊かさを分析するマクロ経済学の一分野です。経済成長は大きな時間の流れの中で経済の動きを見るものです。経済は景気の循環により小刻みにも動きます。景気の激しい上下はよくないと考えられていますが、景気の循環自体は避けられないことでもあります。経済状態が悪いときに、景気が悪いのか、経済成長が止まっているのかの判断は困難です。
これまでは経済成長と景気の循環は分けて分析されてきました。しかし、最近では、それぞれの分野で研究してきたことを組み合わせて分析できる枠組みをつくり、経済全体を考えるとどうなるかという研究も始まっています。

高校生・受験生の皆さんへのメッセージ

経済学を学ぶ上で数学は大切です。数学は単に計算の道具であるだけではなく、コミュニケーションツールとも言えます。数学を理解している者同士なら、数式により効率的に意思を伝えることができます。あなたもそう思って数学を勉強したらきっと楽しいでしょう。
また、さまざまなところに経済学のヒントがあるので、遊ぶことも大切です。おこづかいを1カ月どうやりくりするか、遊園地に行くといくらかかるのか、経済を肌で感じておくことも重要です。経済学はとても面白い学問です、大学に来て私と一緒に勉強しましょう。


夢ナビ編集部監修