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経済経営学部 経済経営学科
経済学コース・経営学コース
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バブルが再び起こるかも? 金融危機について学ぼう!
「バブル」とは何か?
1980年代後半の日本で「バブル景気」と呼ばれた時代は、土地や株価がどんどんつり上がり、好景気の中で人々はぜいたくな暮らしをしていました。しかし、この土地や株価の値上がりは、実態に見合わないものだったので、ある時期を境に今度は下落に転じました。「バブルがはじけた」あと、日本経済は深刻な金融危機に見舞われ、長期停滞を余儀なくされました。
「バブル」はどこの国でも起こる
バブル現象は、いつの時代でも、どこの国でも起こる可能性があります。最近では2007~2009年頃アメリカで住宅バブルが崩壊し、「サブプライム住宅ローン危機」が起きました。このときは投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が破たんし、「リーマン・ショック」とも呼ばれる金融危機は世界各地に広がりました。世界中でたくさんの会社が倒産し、失業者が街にあふれました。各国の政府の財政状況も悪化しました。日本のバブル崩壊にともなう長期停滞に似た状況が、今や世界各地で現実のものとなっています。
金融危機にどう立ち向かうかが問題
金融危機について学ぶのは「どこの国でも起こりうる」「生活に深刻な影響をもたらす」「驚くほど共通した特徴がある」からです。対策や起きたあとの対処法をどうするか、といった課題もあり、政府や中央銀行がどのように介入するのかは難しいところです。例えば「too big to fail(大きすぎてつぶせない)問題」と言われるものがあります。大規模な金融機関は倒産すると社会に与える影響が大きいことから、政府は何らかの手助けをします。しかし、いざというときに政府が助けてくれる、という気持ちがあれば、金融機関は適切な経営を怠る危険があります。
このように社会の安定のために整えられた体制のおかげで、かえって規律が失われる状態を「モラル・ハザード」と呼びます。モラル・ハザードが原因で過剰な貸し出しが行われれば、再びバブルが起こる恐れもあるのです。
うわさ話やデマから金融危機が起きる! あなたの預金は大丈夫?
あなたは銀行にお金を預けていますか?
ほとんどの人はお金を銀行に預けます。その中で「普通預金」として預けるお金は、いつでも必要なときに引き出せるので「流動性が高い」形の資産です。一般的には、これは「要求払預金」と呼ばれ、銀行は預金者からの要求があったときには、いつでもお金を払い戻さなければなりません。預金者はいつでも引き出せる自由度を確保しつつ、利子を受け取れるメリットがあります。
銀行システムの脆弱性とは
一方、銀行は、たくさんの人々から集めたお金を、個人や企業に貸し出しています。預金者が毎日、どれぐらいの現金を引き出すのかは、確率論における「大数の法則」などから予想され、銀行は残りのお金の中から貸し付けを行います。しかし、このメカニズムでは、もし預金者の多くが信用不安などで預金を一気に引き出そうとすれば、銀行はお金が足りなくなり、最悪の場合、経営破綻にまで陥ってしまいます。この状態を「取り付け」と呼び、銀行システムの大きな脆弱(ぜいじゃく)性を示しています。
ある銀行の騒動が国全体に飛び火することも
過去には日本でも、ちょっとした会話の勘違いや、うわさ話で経営が危ないと広まってしまったり、近いうちに倒産するというデマが流されたりして、銀行の取り付け騒ぎになったことがありました。一方で「火のない所に煙は立たない」と言われるように、普段から何かしら経営不安を感じさせる状況が見られた銀行では、何らかのきっかけで取り付け騒ぎに発展するケースもあります。1つの銀行から始まった騒動が、ほかの銀行にも飛び火し、さらには国全体の金融システムを脅かす事態になることもありえます。
このような金融危機は世界中で起きていて、繰り返されています。しかし、いったい何が金融危機を引き起こすのか、どうして金融危機は波及するのか、政府はどのような対策を取ればよいか、といったことに対する答えは明確には出ていません。このような疑問に挑むのも、経済学者のひとつの大きな使命です。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
大学で勉強する意義は、物事を客観視できる広い視野を持てるようにすることです。経済学は経済に参加している個々の経済主体のインセンティブを考え、世の中の経済現象の解明や良い社会のあり方を追求する学問です。私は学問的な視点から、金融危機の原因や規制のあり方などを研究しています。
将来、何をやりたいかわからない人は、誰かの伝記を読んだり、映画を見たりしてイメージをふくらませるといいでしょう。いろいろな人の歩みを知ると、どこかに共感する部分が見つかって将来のモデルになるはずです。
夢ナビ編集部監修