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運動すると気分がすっきりするのはなぜ?

ストレスは悪者ではない!?
脳には行動を制御する役割がある一方、行動が脳に影響を及ぼすこともわかってきました。行動が刺激となって神経細胞が活性化し、脳の機能や構造に変化を与えるのです。こうした刺激を一般的にストレスと呼びますが、ストレスがまったくない状態では神経細胞が活性化せず、脳が衰えてしまいます。悪者に思われがちですが、適度なストレスは脳に必要な刺激だと言えます。
ただ震災時のような不安や衝撃は、脳にとって過剰なストレスとなり、心身に悪影響を与えます。1995年に起こった阪神淡路大震災の際は、PTSD(心的外傷後ストレス障がい)が問題になりました。このように深刻な場合は、脳の回路をブロックする薬が処方されることもありますが、それほど深刻でなければ、薬を用いなくても別の刺激を与えることでストレスを軽減させることもできます。その代表的なものが「運動」です。
運動でセロトニンを活性化
実験室のネズミを掃除の時などに、いつものケージから別のケージに移し、再び元のケージに戻した際、回し車を走る回数が増えたことがありました。これは環境が変わったストレスを無意識のうちに運動で解消しているのです。うつ病に関係すると言われる脳の伝達物質セロトニンは、神経活動が高まると分泌されるのですが、運動をすることでセロトニンの分泌が増え、不安行動やうつ症状が軽減されることがわかっています。
運動による予防と治療
こうした運動は、自発的か強制的かで効果に違いがあります。自分のペースで自発的に運動した方が、強制的に運動させられた時よりもセロトニンの数値が高いという結果が出ています。しかし、強制的な運動に効果がまったくないわけではなく、日常的に運動を続けていれば強制的な運動でもセロトニンの数値は高まり、抗うつ効果が見られます。
運動はうつ病などの予防対策としてだけでなく、治療にも使われます。薬物療法と比べると効果自体は同じでも、運動療法の方が再発率が低いというデータもあり、今後のさらなる研究が期待されています。
環境によってストレスをコントロール

部屋の色によってストレス度が変わる
ストレスの感じ方は環境によって異なります。例えば、ネズミを使った動物実験で、黒、白、グレーでできた3種類の箱を用意し、もともと同じ環境にいたネズミをそれぞれの箱に移します。夜行性のネズミは、暗い所を好むので、黒い箱のネズミはストレスがなく、白い箱のネズミはストレスを感じ、グレーはその中間でした。その後、さらに音などの刺激を与えたところ、黒い箱と白い箱のネズミはストレスを強く感じましたが、グレーの箱のネズミはそれほどストレスを感じないという結果が出たのです。グレーという適度にストレスを感じる環境が、ネズミのストレス耐性を高めていたと言えるでしょう。
脳の伝達物質セロトニンとストレスの関係
ストレスと非常に密接な関係にある脳の伝達物質がセロトニンです。ストレスが高い状態が続くとセロトニンの放出が低くなり、また、うつ病の人の脳ではセロトニンの濃度が低いことが知られています。そのため抗うつ剤として、セロトニンの放出量を高める物質を含んだものが開発されています。しかし、通常は薬に頼らなくても運動などを利用すれば、適度な刺激が脳に与えられセロトニンの濃度が上がり、ストレス解消につながります。
ダイエットにもセロトニンの影響が?
太ってしまう原因にも環境によるストレスとの相関関係が認められています。動物実験で、自由に運動できる環境にいる個体と、単独でいる個体を比べると、後者の方が食べる量が多いというデータがあるのです。また集団で仲良く暮らしている個体と単独でいる個体を比べても、後者の食べる量の方が多くなります。つまりストレスが溜まると摂食量が増える傾向にあるのです。これにもセロトニンの放出量が影響しています。セロトニンが出ると満足感を得られるので、少し食べるだけでも満足できるのです。
このように脳の伝達物質の働きを理解し、意図的に刺激をコントロールすれば、将来ダイエットにも役立つかもしれません。
高校生・受験生の皆さんへのメッセージ
大学で勉強していくには、自分の専門についてはもちろんのこと、いろいろな分野について話せる知識を身につけておくことをお勧めします。ひとつの分野の専門家になっても、違う分野の専門家と話せないのはもったいないことです。専門を1とすれば、0.5程度のほかの分野の知識があると望ましいです。物事をさまざまな角度から見られるようになり、分野を超えたコミュニケーションも容易になるでしょう。専門外の分野でも、気になることがあれば自分で調べ、積極的に勉強してみることです。
夢ナビ編集部監修