※宮本弘暁教授は2024年2月29日付で退職しました。
経済学を軸とし、グローバルな視点で国内外を展望する宮本弘暁ゼミナール。IMF(国際通貨基金)での勤務をはじめ豊富な海外経験を持つ宮本弘暁教授とゼミに所属する学生たちは、どのような考えを持ち、どのような活動をしているのでしょうか。経済経営学部 宮本弘暁ゼミナールの取り組みを紹介します。
世界の最先端を意識して知見を広げる。キーワードは「Update Ourselves to the World」
2020年4月に都立大に誕生したばかりの宮本弘暁ゼミ。授業の特徴や大切にしていることについて、宮本先生はこのように話します。
「朝、目が覚めたら、世界が自分を見ていることを思い起こし、世界にインパクトを与えることを考えてほしい」。これは私が学生時代に恩師から聞いた金言です。
グローバル化が進み、人生100年時代となった今、私たちに必要なのは、この「世界が自分を見ている」感覚、つまり、日本と世界が抱える課題の全体像を掴み、世の中がどのような方向に進んでいくのかを見通すことです。
そこで、宮本ゼミでは世界情勢や日本が抱える課題を常に意識し、「Update Ourselves to the World」という言葉をキーワードに活動をしています。
ゼミでは、毎週、Financial TimesやEconomist誌など世界中のメディアから様々なテーマの記事を事前にピックアップして学生と共有しています。学生はそれぞれのテーマについて調べてきて、学んだこと、感じたことをプレゼンテーションしたり、疑問点をディスカッションしたりします。
ゼミの時間以外にも学生が自発的にサブゼミを実施し、「経済」「国際政治・安全保障」「リベラルアーツ・教養」の3つのテーマで研究活動を行っています。ゼミの時間で、サブゼミの活動内容を発表・議論するので、学生たちは自分たちの所属するサブゼミで扱うテーマ以外についても深く学ぶことが可能です。つまり、学生は、物事を建設的に捉えるクリエイターにも、知らない情報を受け取るユーザーにもなることができます。この活動は学生の知見の幅を広げる上で非常に有効に働いていると思います。
最も大事にしているのは、ゼミを「考える力を養う場」にすることです。今、社会で求められているのは、豊かな発想力を持ち、問題を発見、思考し、解決する能力を持ち、なおかつ他者と協同できる人材です。世界の最新の状況を知り、広く深い教養を身につけることに加えて、ディスカッション、経験・体験、問題解決演習などを通して、単に知識を注入するのではなく、自ら考え、問題を解決する態度を学生には身につけてもらいたいと思っています。
私は海外での仕事に携わる中で、日本人はポテンシャルが非常に高いにもかかわらず、それを活かすことができていないと常々感じていました。学生たちは無限の可能性を持っていて、もっと世界を舞台に活躍することができる。指導する立場になった今、このゼミがその無限の道を拓くベースになることができればと考えています。
学生たちのディスカッションで、多様な視点と価値観に触れる
宮本ゼミの授業は、前期は日本語、後期は英語で行われます。この日は英語での授業。「米国バイデン政権誕生から1年」「世界に広がるオミクロン株」「世界的なインフレの危機」「2022年のトレンド予測」*などの英語のニュースが議題に挙がりました。最初に学生一人ひとりが取り上げた記事について英語で見解を発表し、その後、宮本先生とともにディスカッションを交えながらニュースの捉え方や理解を深めていきました。
*2021年12月現在
続いてはグループに分かれてのディスカッションです。
「バイデン政権」については現状分析と米国や国際社会での評価、さらにはこれからの経済状況や迫り来る中間選挙、中国をはじめとする対外政策など、多様な観点から議論が展開。「世界的なインフレの危機」のグループでは、日用品の価格といった自らの経験に基づく分析から統計的な視点からの予測まで、様々な意見が交わされました。
宮本先生は「多角的な視点から世界の問題を捉え、日本の現状を内側からだけでなく外側からも見られるようになってほしい」と話します。
宮本ゼミで学ぶ3名の学生に、宮本ゼミを選んだ理由や魅力を聞きました。
学生たちが語るゼミの魅力。自分の可能性に自分で気づく
――宮本ゼミを選んだ理由は?
社会に対して何かしたいという漠然とした思いがあり、宮本ゼミならいろいろな可能性を探ることができると考えて選びました。期待通りゼミでの活動を通して将来やりたいことが具体的になり、金融業界に就職が決まりました。社会に出て日本の成長に貢献できる可能性を得て、期待に胸が膨らみます。
いろいろなゼミの募集要項を見て検討していた時、宮本ゼミの要項に「ゲームチェンジャーになりたい人」という言葉を見付け、とても共感しました。また、私は女性の社会進出に興味があったため、宮本ゼミではテーマを絞らず幅広い知識を得ることができると知り、必ず自身のキャリア形成に役立つと考え迷わず志望しました。
僕は体育会系の部活で部長を務め、その活動に注力していたため、ゼミを選択する時は「そろそろ学業を頑張らなくては…」という状況でした。宮本ゼミは、経済を広い視野でグローバルに捉え、様々なニュースを多角的な視点で深く掘り下げて議論していることを知り、ここなら物事に対する自分の視野を広げることができると思い宮本ゼミを選びました。
――宮本ゼミの魅力とは?
自分の基本的な考え方そのものをグローバルスタンダードに合わせる、その基礎を築いたのが宮本ゼミでの日々です。宮本先生が大切にしている言葉に「朝起きたら、世界中が君を見ていると思って生きているか?」というものがあります。私はその言葉を聞いて、一人の人間として自分が何をしているのかを真剣に考えるようになりました。自分の考え方に変化が生まれる、このことこそ宮本ゼミの魅力だと思います。
宮本ゼミは学生同士の結束力が強いことも魅力ですが、やはり宮本先生の存在が大きいと思います。IMFなど実際に様々な海外の現場で仕事をしていた経験から、私たちには思いもよらない視点や意見、そして考えるきっかけをもらうことができていると実感します。学びながら日々感謝の気持ちが沸いてきます。
都立大自体が、誰かの新しいチャレンジを応援してくれる環境だと思いますが、宮本ゼミはその中でも新たな可能性を広げてくれる場です。僕はもともと英語に苦手意識を持っていたのですが、宮本ゼミでは「できないこと」は恥ずかしいことではありません。自分なりに「トライ」を続けて英語に対する苦手意識を克服することができました。
また、宮本ゼミに入る前は、狭い視点からしかニュースを見ることができていませんでしたが、今では相手の立場、文化や歴史などの様々な背景を考慮して一つのニュースを捉えるようになりました。これから社会に出て行く上で大切なことを学ぶことができたと実感しています。
――宮本ゼミで学んだことを将来どのように活かしたいですか?
現在、日本や世界で何が問題になっていて、どうしたら解決していけるのかを常に考えるようになりました。これまでにゼミで取り組み身に付けた知識や考え方をさらに進化させ、日本経済を成長させる一助になりたいと考えています。
将来は、広報やPRの仕事に就きたいと思っています。宮本ゼミでは、「世界にインパクトを与える」という信念のもと、議論をたくさん重ねました。私は世界に数ある大学の中の、この小さなゼミでこんなに素晴らしい議論が行われていることをもっと多くの方に知ってもらいたいと考え、経済経営学部ゼミブログで発信し続けました。このように、世の中に存在しているが、あまり知られていない素晴らしいものの価値を、広く発信していくような職業に就きたいと考えています。
僕は、宮本ゼミのおかげで英語に対する苦手意識を克服できたこともあり、卒業後は海運会社で海外との貿易の仕事に就くことが決まっています。人々の暮らしを支える仕事ではありますが、ゼミで培った多様なものの見方を活かして、輸送における環境への負担を考慮し、洋上風力発電や電力で動く船など、新しい技術への取り組みも積極的に行っていきたいです。
学生たちと一緒に切磋琢磨していきたい
2022年3月に1期生の卒業を迎えた宮本ゼミ。ゼミ選択においては、新4年生が新3年生の面接を行うというユニークな手法を採用しています。宮本先生はその理由について、「学生に面接する側を体験してもらうことで、将来自分が面接される側になった場合の注意点に気付くことができる」、また、「採用は学生の人生に影響するので、人の人生に責任を持つことの重さを感じることができる」と話します。
これから、大学進学を考える高校生やゼミ選択を考える在学生に向けて、メッセージをいただきました。
宮本ゼミに迎え入れるキーワードは、「モチベーションが高いこと」。自分にいろいろな可能性があることに気付いていない学生が多いので、過去よりも自身のこれからを変えたいと思っている人を歓迎します。宮本ゼミでは、常に自分の道を切り拓き、世の中に貢献していくことを考え続けます。先輩たちと一緒に切磋琢磨していきましょう。