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理学研究科-精密有機合成を実現可能とする高性能分子触媒の開発触媒の特徴を活かした新規高機能材料の創製

幅広い科学の視点から触媒研究に凝縮する

合成化学、触媒化学、有機金属化学が、私の研究分野です。複数の分野が並ぶのは、これまでのキャリアが関係しています。学部時代の卒業研究は有機化学、大学院の博士前期課程は物理化学、米国留学時には無機化学の研究室に所属し、企業在籍時は応用化学の研究に携わりました。それでも研究の核は有機金属化学・分子触媒化学で、関連した幅広い研究テーマに取り組んでいます。

金属-炭素結合を有する有機金属化合物は、炭素-炭素結合の形成を仲介する触媒反応の中間体で、触媒のデザインや機能の解明に有用な役割を担います。今までにない独創的な着想で高性能分子触媒をデザインし、化学・物理の分野横断型の基礎研究を通じて、広い視野で触媒反応を緻密にデザインすることで、今まで実現できなかった新しい合成反応の開拓や特徴を活かした新規材料の創製を達成してきたのが、この研究室の特徴です。

豊かな次世代社会の構築を指向した高性能分子触媒の開発

環境低負荷型の効率合成反応や新しい機能物質の開発には、高性能分子触媒の創製が重要な役割を果たします。この目的の実現には、独創的な着想と関連の化学反応の基礎理解が重要で、今までに多くの成果を達成しています。例えば大学院時代の有機金属光触媒によるアルカンのC-H結合活性化を経由する液相脱水素反応は、今でも専門書で頻繁に紹介される成果です。企業在籍時には、独自の触媒設計指針に基づく、グリーンケミストリーを指向した効率合成反応により、工業化に成功し、学会賞を2件受賞しています。最近学会賞を受賞した高性能オレフィン重合・二量化触媒の設計・創製に関する研究も、独創的な触媒設計指針に基づき、新しい効率合成反応や材料合成に展開した成果で、教科書や専門書で広く紹介されています。この目的の達成により、環境負荷の低減化や省エネルギーに大きく貢献し、新しい機能物質の開発による豊かな次世代社会の実現に大きく貢献できるようになると期待しています。

触媒化学は、ノーベル化学賞受賞者も複数輩出する、日本が世界に秀でる分野です。この研究室は海外の大学や企業との共同研究も盛んで、日本人学生の多くが研究室配属後に海外留学を経験しています。国際競争の激しいこの分野で、世界の研究動向や社会のニーズを捉える広い視野を持って、化学を通じた社会貢献への意識を高めることができるのがこの研究室の特徴です。

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Profile

理学研究科化学専攻
野村琴広教授
東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。企業在籍中に大阪大学で博士号取得。2010年から現職。