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理学研究科 高津飛鳥准教授が日本応用数理学会ベストオーサー賞(論文部門)を受賞しました!

理学研究科数理科学専攻 高津飛鳥准教授が日本応用数理学会ベストオーサー賞(論文部門)を受賞しました!

受賞情報
■論文

「輸送計画,輸送写像,輸送経路 ―有限集合と ℝ2 の最適輸送理論の違い―」 (応用数理32巻2号(2022), pp. 69-79.
論文はこちら(J-STAGEホームページにリンクします。)

■受賞理由

最適輸送理論は,大まかに言えば輸送に伴う費用を最小化する輸送方法を対象とした理論であり,数学的には,ある確率測度から別の確率測度への最適な変換を研究する理論である.この理論は源流をたどると18世紀末のG.Mongeの研究にまで遡る一方で,19世紀半ばのKantorovichによる一般化を経て近年もリッチ曲率を用いた幾何解析等で発展しており,また機械学習等での応用においても目覚しい成果が生まれている.本論文では,Monge-Kantorovichの問題について,有限集合と2次元実数空間の場合に限定して丁寧かつ平易な説明を行っている.2次元実数空間の場合,ある確率測度から別の確率測度に変換する写像である輸送写像のうち,最小費用を実現する写像が最適輸送写像であると定義し, Benamou-Brenierによる輸送経路のエネルギー最小化問題の解としての最適輸送写像の定式化が可能であることを説明している.一方,有限集合の場合は輸送経路の定義に問題が生じるが, J.Maasにより導入された既約かつ可逆なMarkov核を備えた有限集合上の確率測度がなす空間に対する距離関数を用いた最適な輸送経路の定式化が可能であることを説明し,派生する課題を紹介している.最後に,著者自身の研究も含めて近年の動向を説明しながら,今後の展望についてまとめている.本論文は,応用数理に関わる者に対して最適輸送理論のエッセンスをわかりやすく伝え,多大な貢献を行っている.以上により,ベストオーサー賞選考委員会は,本論文が日本応用数理学会ベストオーサー賞(論文部門)に相応しいものと判断した.

日本応用数理学会「論文賞・ベストオーサー賞 2023年度」ページ より抜粋)

受賞にあたってのコメント

この度は栄誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。
最適輸送理論は、名前のとおり「物を運ぶ最適な方法」を考える理論です。
単純な動機の裏には複雑な理論があり、豊富な応用に満ちています。
その研究を進めるべく、そして受賞に恥じぬよう、今後も精進して参ります。

 (理学研究科数理科学専攻 高津飛鳥准教授)

日本応用数理学会ベストオーサー賞とは

ベストオーサー賞は、学会誌「応用数理」に掲載された論文およびインダストリアルマテリアルズを対象とします。「論文部門」は、大方の会員にとって理解しやすく興味を与える特に優秀なものを選び、その著者に贈呈します。

日本応用数理学会「論文賞・ベストオーサー賞」ページ より抜粋)

■関連リンク

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