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ただの地図好きだった自分を、プロフェッショナルに育ててくれた

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都市環境学部 都市環境学科 地理環境コース(現 都市環境学部 地理環境学科)2018年度卒業 
都市環境科学研究科 都市環境科学専攻 地理環境学域 2020年度修了

都市環境学部 都市環境学科 地理環境コース卒業、都市環境科学研究科 都市環境科学専攻 地理環境学域修了。物心がついたころから地図を眺めることが好きで、学生時代には学業に加え、サークル活動や旅を通して、多様な人や場所との交流を図り自らの世界を広げた。現在は株式会社帝国書院にて、地図帳を制作する仕事に携わる。

暗記ではなく、幅広いアプローチで地理を学ぶことができた

――子どもの頃はどのようなことに興味を持っていましたか?

幼い頃から地図を見ることが大好きでした。小学校低学年の時、両親にねだって壁掛けの大きな日本地図と世界地図を買ってもらい、地図に描かれたいろいろな地名や地形を飽きずに眺めていたのを覚えています。いまでも、実家に飾ってあるんですよ。

高校生になっても地図が大好きで、地図帳をいつも見ていました。しかし、理数科目のほうが得意だったため文理選択の際に理系を選びました。その結果、一般的には文系の学部に設置される地理学への道を諦め、将来は建築や都市工学の道に進むのかな……と漠然と思っていたのですが、進学にあたりいろいろと調べていくうちに、東京都立大学(当時の名称は首都大学東京)と出会いました。

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――東京都立大学を志した理由とは?

私が都立大を志望したのは、都立大が全国でも数少ない、理系として地理学を学べる大学であったからです。高校の頃のエピソードで述べたように、一般的に地理学は文系の学部に設置されることがほとんどですが、都立大の地理環境学科は、気候や地形、植生などといった自然地理から文化や経済などに関連した人文地理、さらには地理情報学までの、幅広い分野をサイエンスとして学ぶことができます。このことを知り、一度は諦めた地理学を学べるよりよい環境であると強く感じ、都立大への進学を志望しました。

――入学してみてどのような感想を持ちましたか?

私が進学した地理環境学科は、一学年の学生数が30人ほどで、先生との距離も近く、仲間と切磋琢磨しながら地理学を学べる環境だと思ったのが第一印象です。また、高校までの地理は、どちらかというと暗記が主体でしたが、大学での地理学は、論理的に土地の理(ことわり)を考察していく、まさに「科学」であるということを改めて感じました。

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――大学ではどのような日々を過ごしましたか?

大学で4年、大学院で2年の合計6年間を南大沢キャンパスで過ごしました。

地理環境学科では、気候や地形などの地球科学から、都市地理学のような人文科学まで、地理という学問を広い観点から学びました。特に、「巡検」と呼ばれる実地学習や、情報端末を使ったGIS(地理情報システム)での解析など、実習形式の講義が多く、手を動かす機会が多いのが特徴でした。

また、都立大は総合大学なので自身の専門以外の多様な学びに触れる機会にも恵まれていました。他学部の講義でも基本的に受講が可能なので、都市計画や社会学など地理学と隣接した分野の講義を積極的に受講し、専門である地理学の知識の裾野を広げることができました。

さらに、所属していた「環境サークル」では、文理様々な専門性を持つメンバーと共に、地域のフィールドワークや議論などを通して、自分にはないまったく別の視点に触れることができ、視野が大きく広がりました。

――大学生活で思い出に残っていることは?

大学生活の6年間では、学業のほかに数多くの旅をしました。学生の間に47都道府県すべてを制覇したことは自慢です。旅はその土地の風土に触れることができるだけでなく、旅先で暮らす人々や宿泊先のゲストハウスで出会う旅人など、普段の生活では関わることのない人と交流することができる貴重な機会でした。その経験は自分の人生にとって大きな財産となっています。

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大学で学んだから、地図のプロフェッショナルになれた

――就職活動ではどのような仕事を志したのですか?

地図や地理に関わる仕事は、測量会社やカーナビなどのデジタル地図会社、ガイドブックの出版社など様々です。その中でも特に、地図を作るだけでなく、「地図をどう見せるか」に重点を置いた会社を志望しました。

大学と大学院の6年間では、講義や実習の中で様々な地図表現に触れる機会がありましたが、なかでも印象的だったものに、プロのグラフィックデザイナーによる講義があります。そこでは、わかりにくく散乱した情報であっても、デザインによって整理することで、誰にとっても見やすく理解できるものになることを学びました。そのような経験から、地図を使って情報をわかりやすく人に伝える仕事がしたいと思い、塾講師のアルバイトで教育に興味があったことと合わせて、伝統的に社会科教科書・地図帳を発行している株式会社帝国書院に入社しました。

――株式会社帝国書院ではどのような仕事をしているのですか?

編集部地図編集室に所属して、学校で使用される地図帳や、先生が使う指導書の制作に携わっています。地図帳の制作は、ただ地図を製図するだけではなく、付随するデジタルコンテンツの作成や、ユニバーサルデザインへの配慮など業務は多岐にわたります。実際に学校現場を訪れて、先生からご意見をうかがうことも欠かせません。学校で使う教科書として細部にまで間違いが許されない、責任のある大変な仕事ですが、大好きな地図と向き合う日々はとても充実しています。

地図とは、世の中の縮図です。地図に描かれたまちには、実際に住んでいる人々がいて、社会があり、いろいろな物語がある。創造力豊かに地図を見ると「世の中」が見えてくることが地図の醍醐味です。自分が手がけた地図帳で、より多くの子どもたちが地理に興味を持ってくれたら嬉しいです。

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――最後に、野間さんにとって都立大とは?

自分の人生の大きな転機となった場です。

もともとは地図や地理を趣味として好きだった私ですが、いまではそれをプロフェッショナルとして仕事に活かしています。「地図をつくる」という夢を実現することができたのは、なにより都立大での6年間の学びのおかげです。

都立大では、専門的な知識を少人数教育でより深く学ぶことができただけでなく、文系理系の垣根を越えた多種多様な仲間との交流もあり、自分自身の世界が広がって人間的に成長することができました。これからもその経験を活かして、固定観念に縛られない広い視野を大切に、地理や地図の魅力を伝えていきたいと思います。

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  • 登場する人物の在籍年次や所属、活動内容等は、取材時(2021年)のものです。