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関心を追求した日々が、「より良いインターネット」をつくる仕事へとつながった

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首都大学東京 システムデザイン学部 システムデザイン学科 情報通信システムコース(現 東京都立大学 システムデザイン学部 情報科学科) 2017年度卒業
首都大学東京 システムデザイン研究科 システムデザイン専攻 情報科学域(現 東京都立大学 システムデザイン研究科 システムデザイン専攻 情報科学域) 博士前期課程 2019年度修了
ヤフー株式会社 メディア統括本部およびデータ統括本部

システムデザイン学部 情報通信システムコース卒業、システムデザイン研究科 システムデザイン専攻 情報科学域 博士前期課程修了。東京都立産業技術高等専門学校で情報技術を活用した「人間の創造性の支援」をテーマに研究をしていたことから、都立大のシステムデザイン学部に興味を持ち、3年次編入で入学。大学と大学院では高間康史教授に師事し、人間が複雑なデータをより分析しやすくするための、データの可視化技術に関する研究を行う。大学院修了後はヤフー株式会社に入社。メディア事業を支えるエンジニアとして、コンテンツの品質担保やデータ活用に関連するシステムの開発・運用を担当している。

研究、サークル、国際学会への参加。関心のあることを突き詰めた日々

――子どものころはどのようなことに興味を持っていましたか?

小学生のときは、「自分で情報を集め、再構築すること」が好きな少年でした。両親と美術館や博物館によく訪れていたこともあり、天体や恐竜などに関心を持ち、図書館で図鑑を借りて隅々まで調べては、その内容を自分専用にまとめていました。あとは「ヘルツシュプルング・ラッセル図」を用いると、星の特徴をグラフで把握できることが面白いと感じ、自分で星のデータを集めては模造紙に図を書き起こしていました。今思うと、幼少期から「データの見せ方の面白さ」ということに関心があったようで、都立大で学んだ専門領域や現在の仕事につながっているなと感じます。

また、当時からインターネットも大好きでした。小学1年生のころに両親からMacintoshのノートパソコンをもらい、気になったことをよくYahoo!検索で調べていました。まだ牧歌的だった当時のインターネットの世界で、個人がつくったホームページを眺めているのが大好きでしたね。2002年ごろの「Web 2.0」の黎明期からSNSが台頭する現在まで、その変化を体感してきたことは、今のヤフーでの仕事にも大いに役立っていると思います。

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――都立大を志した理由を教えてください。

私は東京都立産業技術高等専門学校(以下、高専)の出身で、都立大(当時は首都大学東京)には編入試験を受け、3年次編入という形で入学しました。

様々な選択肢の中でも都立大を進学先に選んだのは、高専で研究してきたテーマをさらに突き詰めて学び、研究できると感じたからです。高専では、デジタルツールを使ってイラストを描く際の「創造性支援」をテーマに、必要なシステムの構築について学んでいました。デジタルツールで絵を描く際、紙とペンで描くのとは異なり、アイデアがまとまりづらいという課題があります。その課題に対して、システム側で過去の描画履歴の管理やアイデアの切り替えを支援することで、描き手の発想を広げるサポートができないかということを考え、研究していたのです。

そんな中で都立大のオープンキャンパスを訪れ、「ここには人の心理や考え方とコンピューターとの関係性に着目した研究を行える環境がある」と感じました。また、都立大は総合大学ですから、文系学部の学生も含めて多様な人がいます。そうした人々との出会いの中で学べることも多いのではないか。そう思ったことも、都立大を志望する決め手になりました。

――大学と大学院では、どのような日々を過ごしましたか?

大学と大学院で過ごした4年間は、関心のあることを突き詰めた日々だったように思います。勉強に勤しんだのはもちろんのこと、ゲーム制作サークルに所属して、プログラミングの技術を磨いていました。合宿で集中してゲーム作品を仕上げ、それを大学祭で展示したのはとても良い思い出です。また、就職活動を見据え、学科や研究室の仲間とともにプログラミングコンテストに応募したこともありました。

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さらに、大学院時代に所属していた高間康史教授の研究室では、南米のチリ共和国で開催された国際学会に参加し、「情報可視化」の研究について発表を行いました。人生初の海外だったこともあり、出国から帰国まで、全てが刺激になったとともに、つたないながらも通じた英語でのコミュニケーションに、さらなる勉強意欲を掻き立てられました。

AI時代が来ているからこそ、大学での学びを大切にしてほしい

――現在はどのような仕事をしているのですか?

現在はヤフー株式会社にて、二つの領域の仕事に携わっています。一つ目が、Yahoo!ニュースなどのメディアコンテンツの品質を担保するためにシステム面で支援すること。二つ目が、メディアサービスを利用いただく過程で発生するデータの活用です。

昨今のインターネットやSNSでは、センセーショナルな情報が増幅し、拡散されてしまう傾向があります。ヤフーはそうした環境の中でも「信頼性と品質」、「多様性の尊重」、「豊かな情報流通」の3つを重視してメディアサービスを運営しています。その方針を実現するためには、コンテンツの品質を維持するための業務支援システムの開発・運用が欠かせません。社会への影響力が大きい重要な仕事に携われることは、とても面白く、やりがいを感じています。

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――どのような軸で就職活動を行い、現在の仕事に就いたのですか。

大学と大学院では「ヒューマンコンピューターインタラクション」という、人とコンピューターの関わり合いや相互作用を研究する分野を専門としていました。その中でも特にビッグデータに関連した「情報可視化」という領域に関心を持ち、「複雑なデータをどのように処理し、どう見せることで、人間がより理解しやすいデータになるのか」ということを研究していました。

就職活動を行うにあたっては、そのような研究をさらに追求できるような研究職も視野に入れていました。ただ、そうしたアカデミックな環境で研究に注力することに魅力を感じていた一方、実在するサービスやプラットフォームの中で研究を応用してみたいという欲求もありました。そのため、複数エントリーした企業の中でも、私の専門分野について理解があり、より関連した仕事に携われると感じたヤフー株式会社に入社することを決意しました。多くのユーザーが利用するプラットフォームを持ち、膨大なデータを保有しているヤフーだからこそ、研究で培ったノウハウをすぐに活用できると感じたのです。

――仕事において、今後の夢や目標はありますか?

現在の職種でスキルを高めるだけでなく、学生時代や入社当初に抱いた野心を忘れないようにしながら、社内で新たなプロダクトを生み出せるような人材になりたいです。大好きなインターネットの世界がより良くなることに貢献できるよう、いずれはプロダクトやサービスを主導する立場に挑戦してみたいと思っています。

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――幼少期からインターネットに親しみ、コンピューターを専門的に勉強されてきましたが、近年はAIの発展なども目覚ましいですね。今、またはこれから都立大に通う学生たちがそうしたテクノロジーとうまく付き合うためにはどうしたらいいか、高見さんのご意見を伺えますか?

あくまで個人の意見なのですが、AIについていろいろと見聞きしていると、AIが一般の方も利用できる「システム」として活用できるようになった印象です。昨今話題のChatGPTにしても、私たちの方から問いかけ、言語で指示しなければ、回答は出てきません。その回答も利用者が入力した語彙に左右されます。ゆえに、AIは現在の社会が持っている常識の範囲内でしか答えを導き出せず、もしも常識の範囲外に「正解」があった場合、AIではその正解にたどり着くのは難しいと考えます。

そういう意味では、人間がこれまで培ってきた様々な知識はなくなることがないと思います。むしろAIが発展するこれからの時代は、自分自身がより豊かな知識を持ち、どのような言葉を使ってAIに指示を出せるかということが重要になってくると思います。そのため、大学での学びは、物事の調べ方を学ぶという意味でも非常に貴重な時間だと言えるのではないでしょうか。都立大生の皆さんも高校生の皆さんも、今できる学びを、ぜひ大切にしていただきたいです。

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――最後に、高見さんにとって都立大とは?

都立大は、自分の視野と可能性を広げることができた場所です。大学で多様なバックグラウンドを持つ人と交流し、つながりを持てたのは、私の人生の中でも大きな刺激になりました。特に厳しい受験を経て大学に入学した学生は、学びへのモチベーションが高い方が多く、仲間とともに切磋琢磨しながら学ぶことができたのは、本当に良い経験でした。都立大に入学しなければ、現在の仕事にたどり着くこともなかったように思います。これから都立大を目指すみなさんには、この大学で広がっていく自分の可能性をぜひ楽しみにしていただけたらと思います。

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  • 登場する人物の在籍年次や所属、活動内容等は、取材時(2023年)のものです。