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大学での学びを活かし、世界のエネルギー問題を解決する

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都市教養学部 都市教養学科 理工学系 物理学コース(現 理学部 物理学科)2013年度卒業
理工学研究科 物理学専攻 博士後期課程2018年度修了

都市教養学部 都市教養学科 理工学系 物理学コース卒業、理工学研究科 物理学専攻 博士後期課程2018年度修了。幼少期に化石や宇宙に興味を持ち、大学では物理学を追究。大学院博士前期課程・博士後期課程の5年間の学びを経て、現在はパナソニックホールディングス株式会社本社直轄の研究部門であるテクノロジー本部で、新素材の開発を手がける。

学部と大学院の9年に及ぶ充実の学び

――子どものころはどのようなことに興味を持っていましたか?

幼稚園のときに化石に興味を持ち、両親に発掘に連れて行ってもらいました。小学2年生のときには宇宙に関する本をもらい、繰り返し読むうちに宇宙のスケールの大きさに惹かれ、天文学を学びたいと考えるようになりました。自宅で天体観測をするだけでは満足できず、電波望遠鏡のある施設や、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の施設にも見学のため足を運んでいました。

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――東京都立大学を志した理由とは?

高校生になると、宇宙で起こる現象の理論的背景を追求する物理学に興味を持つようになりました。大学進学を考え始めたころから大学院進学も視野に入れ学びを深めたいと考えていたため、総合大学でありながら教員一人あたりの学生数が少なく、専門性の高い教授陣による指導を受けることができる都立大への進学を決めました。入学してみると、まさに期待どおりで、やる気があればどんどん学びを深めることができる理想的な環境でしたね。

――大学ではどのような日々を過ごしましたか?

中学から始めたバドミントンを大学でも続けたいと思い、体育会のバドミントン部に入部しました。3年次にはキャプテンを務め、同部活を10年ぶりに上位リーグへ昇格させることができました。また物理学科ながら、合成生物学の世界大会「iGEM(アイジェム)」に有志団体を組んで参加し、大腸菌の遺伝子組換え技術を競い、アジア大会でチームとして銅メダルを獲得しました。学業と同時に貴重な経験を積むことができましたね。

――大学院ではどのような研究を?

ずっと宇宙物理に興味があったため、漠然と進路はその方向に進もうと考えていましたが、学部3年生の時に大きな転機がありました。統計物理学とその物質科学への応用の授業を受けて非常に感銘を受けたのです。この統計物理学を活用し、目の前にある物質が「なぜそういった性質を持つのか?」ということを追究し、その原理を解明したいと強く思いました。それらをより深ぼりするため、大学院では物性理論(物質の理論物理学)を専攻しました。

企業の研究者として、社会の課題解決につながる材料を開発する

――現在はどのような仕事をしているのですか?

パナソニックホールディングス株式会社の研究部門であるテクノロジー本部に勤務し、「技術革新による新事業の創出」をテーマに、新しい材料の開発に日々取り組んでいます。都立大に在籍した9年間で鍛えた課題解決能力を、今後は企業で発揮したいと考え、この道を選択しました。

仕事内容は、物理の知識を応用し、エネルギー問題を解決する候補材料の一つである熱電変換材料の研究開発を行っています。まだ研究段階のため商品化には至っていませんが、将来の社会課題の解決につながる種を育てています。

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――研究開発のやりがいは?

研究開発という分野においては、日々の取り組みが必ずしも成果に直結する訳ではありません。失敗で終わる日も多くあります。そんな中でも良い結果や予想もできない効果が得られた瞬間は、大きな喜びを感じます。

――東京都立大学での学びは現在の仕事に活かされますか?

新しい材料を開発して実際にカタチにするというプロセスの中で、理論物理学に基づいた材料設計を行っています。物理学や数学、プログラミングなど、都立大で学んだことの全てが、日々の研究に活かされていますね。

仕事では、都立大時代に先生から教えていただいた言葉をとても大切にしています。それは「自然現象というものはものすごく複雑であるが、決して気まぐれではない。必ずその背景には美しい原理が潜んでいる」というもの。開発の仕事は、失敗と検証の積み重ねです。しかし、この言葉を強く自分に言い聞かせることで、諦めず仕事に取り組むことができています。

――最後に、山村さんにとって東京都立大学とは?

飛躍の場です。知識を深めたり仲間の輪が広がったりと、以前の自分では難しかったであろうことが次々にできるようになり、世界が広がりました。その経験があったからこそ、現在の仕事に前向きに取り組むことができています。

今後の目標としては、いつか自分の開発した熱電変換材料が実用化され、社会で広く活用されることを目指しています。企業の研究者として一人前になると同時に、熱電変換材料の第一人者になっていきたいですね。

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  • 登場する人物の在籍年次や所属、活動内容等は、取材時(2021年)のものです。