Profile
経済経営学部 経済経営学科 経営学コース 2021年度卒業
(公社)東京都都市づくり公社 第二防災まちづくり事務所 用地課用地係
経済経営学部 経済経営学科 経営学コース卒業生。鉄道業界の経営や経済政策に関心を持ち、東京都立大学経済経営学部へ入学。加えて、都市環境学部 観光科学科が提供する観光マネジメント副専攻コースを履修。4年間の学びから「まちづくりに関わる仕事をしたい」という思いを抱き、東京都都市づくり公社へ入社。
鉄道を軸に様々な分野へ興味が広がった
――大学入学前はどのようなことに興味を持っていましたか?
幼い頃から、電車に乗るのが大好きで家族や友達とよく旅行に出かけていました。特に、ローカル線に乗りながら雄大な山々や田園風景を眺めることがお気に入りだったんです。
高校生になると、鉄道だけでなく訪問先の地域にも興味を持つようになりました。例えば、北陸旅行で訪れた富山県では、公共交通機関である路面電車を軸にまちづくりをしていました。住まいと生活機能を近接させた効率的な街を目指すコンパクトシティーの概念に触れたのもこの時期でした。
鉄道をどのようにしてまちづくりに活かしていくのか、ローカルな鉄道会社をどのように経営していけばよいのか、思いを馳せるようになっていきました。
――東京都立大学を志した理由とは?
都内唯一の公立大学であることや学費が安い等、様々な理由があります。学問分野でいうと、鉄道事業をどうやって地域社会に活かしていくかという視点に興味があったのですが、進学先を考える段階では、経済学部、経営学部、商学部のどこでそうした学びを深められるのか、判然としませんでした。また、観光学部も検討しましたが、政策的な側面や鉄道会社の経営という視座には触れられないのではないか、と感じていました。
都立大の経済経営学部では、それらの私の関心領域を全て網羅し学ぶことができると考えて志望しました。また、主専攻として経済経営学部を選択し、副専攻で観光科学科の授業を履修できる点も魅力に感じました。
経済経営学部と都市環境学部観光科学科を行き来することで見えた学び
――主専攻である経済経営学部で印象的だった学びを教えてください。
経済経営学部では、経済学と経営学のどちらの授業も履修することができ、学びを広げていくことができました。
『東京都立大学 経済経営学部 学修のガイド』という履修ガイドブックに履修のモデルケースが掲載されているので、1~2年次では「経営戦略を学びたい」という自身の関心に合わせて授業を組んでいきました。なかでも、渡辺隆裕先生の「入門ミクロ経済学」の授業がおもしろく、印象に残っています。経済学は理論や概念を学ぶことが中心になりがちだと思いますが、渡辺先生の授業は、学生を巻き込んで実践的に考える時間が多く、経済学を身近に感じることができました。
――観光マネジメント副専攻で印象的だった学びを教えてください。
観光学の中でも入門的な科目を選択し、まずは基礎を学ぼうと考えていました。印象的だった学びは、観光分野には経済や経営的な知見が必要であるという視点です。観光需要の中ではどうしても繁忙期と閑散期ができてしまいます。それを平準化していくためには、経済学や経営学の視点が欠かせないというのです。
しかしその一方で、観光学の領域ではそうした知見を持った人は多くないことも知りました。こうした講義から、経済経営学と観光学の両面に興味を持つことができました。学問領域を横断しながら学ぶ機会を得られたことは大きな意義があったと思います。
また、都立大の観光科学科は理系なので、観光が環境に与える影響といった視点を学べたことも有意義でした。日本では、観光に不可欠な運輸部門が排出するCO2の量が全体の約2割を占めるそうです。観光に関わる運輸が全てのCO2を排出しているわけではありませんが、観光というプラスのイメージが強い業界における、マイナスの側面に気づいたことも大きな学びでした。
――主専攻・副専攻の学びを最終的にどのような研究につなげていきましたか?
「地方鉄道の新たな収入源」をテーマに卒業論文を書きました。概要を説明すると、地方鉄道が収入を得る方法として、主に3つあります。1つ目は、銚子電鉄が有名ですが、鉄道事業の他に副業を持って収入を得ることです。2つ目は、自治体が運営する観光施設事業を受託して、地方自治体との関係性のもと新たな事業を展開する方法です。こちらは山口県の錦川鉄道を例に挙げました。3つ目は、まちづくりの視点から補助金を増やして鉄道を維持、増便していく方法です。
特に、3つ目の補助金については所属していたゼミの高橋勅徳先生のアドバイスを得て、県議会の議事録の比較をし、新たな気づきを得ることができました。具体的にいうと、鉄道を生活路線として捉えているのか、あるいは観光路線として捉えているのかで補助金の出し方が異なるということを突き止めたのです。
鉄道経営を考える際は、つい「観光客をどう集めるか」という議論になりがちですが、ローカル線の生き残りを考えていくためには生活路線として「住民の足である」ことは欠かせない視点なのだと気づきました。
――大学生活で思い出に残っている出来事を教えてください。
鉄道研究会に入り、仲間とたくさん旅に出かけました。特に、首都大学東京から東京都立大学への名称変更を記念して、長野電鉄で貸切列車を走らせようと企画したことは忘れがたい思い出です。「どう参加者を楽しませるか」を考えるのはもちろんのこと、「安心安全な計画にするためにはどうしたら良いか」などを検討する中で実務的な力を付けることができました。
視野を広げ、「まちづくりに関わる仕事がしたい」と気づくことができた
――就職活動ではどのような仕事を志しましたか?
鉄道会社とまちづくりに関わる仕事のどちらが自分に合っているか悩みました。1年次に大学の「現場体験型インターンシップ」というプログラムに申し込み、実際に鉄道会社での仕事を体験しました。大好きな鉄道に触れられる仕事なので楽しかったのですが、「本当に自分がやりたい仕事なのか」と迷いも出てきました。
一方で、卒論での研究を含む大学4年間での学びの中で、公共交通を中心としたまちづくりへの関心はどんどん高まっていきました。また、住民の声をどのようにまちづくりに反映していくかといった仕事にも興味を持つようになりました。そこで、現在の東京都都市づくり公社に就職を決めたのです。
――東京都都市づくり公社ではどのような仕事をしていますか?
東京都や都内の各自治体と連携して区画整理事業を進めています。都市政策や建築、インフラ、観光など、あらゆる側面からまちづくりを考えていく組織なので、とてもやりがいがあり、都立大の先輩方も多く働いています。
現在僕が担当しているのは、都道の拡幅や埼京線の高架化に向けたまちづくりの実務です。歩行者主体のまちづくりをしていきたいと考えており、安心して歩いたり自転車に乗ったりできるよう、道路の整備を担い、用地の買収などを行っています。こうした業務は、僕がまちづくりに興味を持つきっかけになったコンパクトシティーの構想にもつながっており、これまでの学びが活きていると実感しています。
――最後に、幸田さんにとって都立大とは?
先生方の専門性の高さや、所属する学生の多様さなどに触れて、視野が広がった4年間でした。主専攻と副専攻の両面から、自分の関心がある分野を幅広く学ぶことができました。こうした経験から、都立大は自分が手を伸ばせば、たくさんの学びが得られる大学だと感じています。
「まちづくりの仕事に関わりたい」という思いに至ったのも、都立大の4年間があってこそ。将来の志望が定まっている人はそれを軸に視野を広げられますし、まだ決まっていない人も多様な刺激や学びから未来への道を見出していくことができる。都立大はそんな場だと思っています。
- 登場する人物の在籍年次や所属、活動内容等は、取材時(2022年)のものです。